モダンルートだったら……(三)
「モダンがどうしたの?」
「ユウリが言った通り、焼き菓子に毒が仕込まれていたみたいだ」
その言葉に、絶句する。忠告したのに、食べてしまったのか。
「モダンが食べないと知って、無理やり口に詰め込んだらしい。飲み込みはしなかったが毒の成分で身体がしびれている。もしかしたら後遺症も――」
ソフィをモダンの元に向かわせなければ。こんなこと言う資格はないけど、
「シュリス、ソフィにモダンを治療させてほしい」
「だが……、君を傷つけた人だよ」
シュリスは、俺のことを思って言ってくれている。それはわかるけど、今は一刻を争う事態だ。
「傷ついたのは俺のせいでもある。だから、モダンを助けたい」
「……っ」
彼は少し考えた後、ソフィをモダンの元へと送らせた。
俺は、ベッドの上で祈ることしかできない無力さに駆られる。
「僕は、許してないからね――」
シュリスは、俺の耳元で囁いた。
――わかってる。わかっているんだ。
「許さなくていい。ただ、人が危険な目に合っているのに、無視はできない」
「優しいな……」
「そんなことない」
否定したけど、彼は笑いかけてくれる。そのまま、頭を撫でる。
「ユウラ」
問いかける声が、切ない。
「なに?」
「僕のこと好きにならないの?」
彼の顔は、いつもより柔らかくはにかんでいた。言葉の意味を考える。
友人としてなのか。はたまた、恋人としてなのか。
「それは……」
聞こうとして、口を開いた。だが、すぐに閉じる。
「どうしたの?」
「な、なんでもない」
「そう? 返事はいつでもいいからね」
彼は、包帯を取りに向かった。
心臓が、ドクドク音を立てて、鼓動する。初めて見た表情、あの好きは恋愛の意味ではないのか?
「ん――――」
悩ましくて、声を上げるとマーシュが飛び込んできた。
「どうした、ユウラ。怪我が痛むのか?」
「……だっ、大丈夫です」
枕に顔を埋めて、羞恥で染まる頬を隠した。
「そうだ。モダン、大丈夫だってさ。後遺症として左手にしびれが残ったけど、生活に支障はない」
「……よかった」
ユウラは安心して、息を吐く。しびれが残ってしまったが、普通に過ごす分には平気なら、本当によかった。
「モダンが、ユウラに感謝してる」
「当たり前のことをしたまでですし、怪我を直したのはソフィなので、彼女にお礼を伝えてください」
「ああ、言っておくよ」
「交換しようか」
片手に包帯をもったシュリスが、部屋に入ってくる。傍で俺と話していたマーシュを睨みつけながら、椅子を運んでくる。
「マーシュ様、ちょっとどいてください」
「はぁ⁉ お前がどけよ」
「僕は、包帯を巻きに来たんですよ。貴方と違って」
「この野郎!」
喧嘩しそうな雰囲気になった二人を見て、仲裁に入る。
「喧嘩しないでください。二人がお見舞いに来てくださって嬉しいですよ」
素直な気持ちを伝えれば、仲良く照れていた。
「仕方ないな。ユウラのために、メロン買ってきたから、後で食べてくれ」
マーシュは、頭のサイズはありそうな果実を持ってきてくれていた。
「ありがとうございます」
「いいよ。これくらい」
「じゃあ、足をあげて」
一方、シュリスは足の怪我の具合を見てくれている。
大事に扱われる嬉しさで、泣けてくる。
「どうした? 痛かったのか」
「ごめん、強く巻きすぎた?」
不安そうに見つめてくる二人に、笑いかけて「何でもないよ」と呟く。
「そう言えば、犯人は捕まったの?」
「ああ、もちろん。アシュリーが捉えていたぞ」
「ええ⁉ ア、アシュリーが?」
「婚約者の危機だからな」
彼女の強さや、愛の大きさに感動する。
「そうだ。ユウラ様、体育祭が近いですね」
「そうなの?」
急に飛び出してきたシュリスの言葉に驚く。入学前に体育祭なんてあるんだ。
「上位になれば、色々と保証されますよ。内申点や学食なんかにも」
「へえー」
面白そうな話を聞き、すぐにケガを直したいと思った。
「チームとかあるの?」
「ああ、チームはみんな一緒だよ」




