表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
崩壊と建国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/134

83話

 長安(ちょうあん)対峙(たいじ)を続けるリョコウの元に、ヨウチョウが負傷(ふしょう)し、しばらく動けないという知らせが届いた。


「まったく、何をしてんだ。油断しすぎだろ」


 リョコウは(どく)づく。前方のジュンカン軍に目をやる。


「まあいい。兵も休んだことだし、そろそろあのお嬢ちゃんを血祭りにあげるとしますか」


 リョコウは休憩を取っている間、ジュンカンの陣の前にある迷路のような土壁を観察(かんさつ)していた。どこを通るとどうなるか、何通りも想定(そうてい)を繰り返し、軍を五千ずつ、四つに分けた。それぞれの指揮官(しきかん)指示(しじ)を細かく伝える。


 ジュンカンはリョコウが動くのを見て、千人将たちに指示を送る。


「来るぞ。手筈通り対応(たいおう)せよ」


 リョコウ軍は四つに分かれて進んでくる。その中の一つをリョコウが自ら指揮(しき)していた。迷路に分かれて入っていく。


 ジュンカンは土魔法の壁の位置(いち)を変えた。


「なに!?」


 ジュンカンの想定では、リョコウは壁に(さえぎ)られ行き止まりになるはずであったが、リョコウはそれを読み、するすると抜けていく。逆に行き止まりで待ち構えていた弓隊が背後を取られ、全滅(ぜんめつ)した。


「考えたつもりだが、そんな(あさ)はかな策が通じると思うのか」


 ジュンカンはリョコウを止めるため、土魔法の壁を変化(へんか)させすぎ、もはやどうなっているのか分からなくなった。落とし穴に自部隊が落ちたり、行き止まりで身動きできなくなり敵に()たれたりした。ジュンカンは焦った。


「ははは! どうやらおつむの方は足りないようだな!」


 リョコウは腹を抱えて笑いながら進んでいった。


「くっ……こうなったらヤケクソだ!」


 ジュンカンは石の迷路の壁を一気に崩壊(ほうかい)させた。巻き込まれた味方もいたが、それはジュンカンの麾下(きか)ではない。躊躇(ちゅうちょ)なく壁を崩した。圧倒的(あっとうてき)に敵の被害の方が大きかった。リョコウは咄嗟(とっさ)に砂嵐で崩壊する土壁を巻き上げた。


「やってくれる! 引き上げだ!」


 ジュンカンは迷路を変えたり、壁を崩壊させたりするために魔力(まりょく)を使いすぎ、疲労(ひろう)で膝をついた。リョコウは瓦礫(がれき)の下から兵を救出し、引き上げていった。


「はぁ……はぁ……何とかなったのか」


 ジュンカンは立ち上がり、円陣を組み直す。リョコウが殿(しんがり)にいたため、追撃(ついげき)することはできなかった。


 エイゲツの軍が破れ、エイゲツ本人は行方不明(ゆくえふめい)になっていた。ジュンカンにとっては魔法を承継(しょうけい)させてくれた師匠のような人物だ。もともとは敵で、ケイにも屈辱的(くつじょくてき)なことをした女だ。許せない思いもあるが、共に戦ってきたことで仲間意識(なかまいしき)が芽生え、純粋にエイゲツのことが心配であった。どうやらヨウチョウの軍にも被害があったのであろう。その進軍(しんぐん)は止まっていた。


「ヨウチョウが来るまでに、片をつけなくては……」


 だが、ここで異変(いへん)が起きた。チュウが二万の兵を長安(ちょうあん)侵攻(しんこう)させてきたのである。(えん)の地は混沌(こんとん)としており、三すくみで動けない状況(じょうきょう)になっている。チュウは再び長安に活路(かつろ)を求めて侵攻してきたのだ。二万は単独で長安を落とすには足りないが、関中(かんちゅう)を荒らすには十分で厄介(やっかい)な数であった。


 リョコウもまた、チュウの軍が現れたことに苛立(いらだ)っていた。変にジュンカンを攻めて、横槍(よこやり)を入れられると面倒だと感じた。


「あーん? なんだあれは?」


 リョコウが遠くを眺めていると、数百の黒い集団を千人隊が追っている。ジュンカンもそれに気づいた。


「千人隊が裏切った! あれを追い払ってくれ!」


 黒い集団は近衛兵(このえへい)であった。ジュンカンに、追いかけてくる千人隊を追い払えと言ってきた。だが、ジュンカンは近衛兵が(おり)を引いていることに気づいた。それを見て、怒りが湧き上がる。檻の中にいたのはケイとサクだったのだ。


 そして追ってくる千人隊がケイの部隊であることにも気づいた。先頭にハクエンの姿が見えた。


「貴様! ケイに何をしているのだ!」


 ジュンカンの怒りに、近衛兵たちは困惑(こんわく)した。彼らはジュンカンとケイの関係を知らない。ただならぬ雰囲気(ふんいき)を察して逃げ出そうとした。


「ケイを救い出せ!」


 ジュンカンの指示のもと、兵たちは近衛兵に襲いかかる。近衛兵は応戦(おうせん)することもできず捕縛(ほばく)された。檻を破ってケイとサクを救い出した。


「ケイ……いったい何があったんだ!」


 ジュンカンは焦燥(しょうそう)したケイを抱きしめた。


「そいつは皇后に姦通(かんつう)した犯罪者(はんざいしゃ)だ! 勅命(ちょくめい)で捕縛したのだぞ! このようなことをして、ただで済むと思うのか!?」


 近衛兵が叫ぶように抗議した。


「姦通だと!? そんな馬鹿な話あるか!」


 ジュンカンは近衛兵を蹴り飛ばした。そこへハクエンがやってくる。


「ジュンカン、よかった。ケイは無事なのね」


「ハクエン……すぐに戻ろう……」


 ケイは護送(ごそう)中、何も食べ物を与えられていなかったようでフラフラしていた。サクも力なく項垂(うなだ)れている。


「ケイ……よく聞いて……あなたはもう秦にとって反逆者(はんぎゃくしゃ)なのよ。王の軍があなたを討ちに来るわ」


「でもレイが……レイが死んでしまう……」


 ケイは疲労と空腹で考えることができなかった。


「このまま(だい)へ向かうわ。ジュンカン、すぐに準備して」


 ジュンカンは頷いた。すでに長安の中が騒然(そうぜん)としているのが伝わってくる。王の軍がケイを討つべく出てくるはずだ。


 ジュンカンはケイとサクを即席(そくせき)の馬車の荷台(にだい)に乗せた。ケイはなおも戻ってくれと言っているが、声に力がなかった。


 代の方向にはチュウの軍がいる。ハクエンを先頭に突破(とっぱ)することにした。ジュンカンは土魔法の壁を立てていく。リョコウが追撃(ついげき)してくるのを防ぐためだ。


「なんだ。何が起きてるのだ」


 リョコウはジュンカンの陣が騒然としているのを見ていた。やがて、先程の千人隊を先頭にして北へ向かっていく。ジュンカンの軍もそれに続き、陣を引き払っていった。リョコウは何かの(わな)かと警戒し、追わなかった。


 ハクエンがチュウの軍を水流剣で引き裂いていく。そこをジュンカンの軍が駆け抜けていく。チュウの軍は突如(とつじょ)の攻撃に混乱し、割れていった。


 馬車に揺られながら、ケイは天に向かって手を伸ばす。レイの名前を叫ぶが、それは声にならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ