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学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
崩壊と建国

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78話

 千人将たちとの謁見が終わると、レイはケイに残るように伝えた。侍女たちにも席を外すように指示した。侍女たちは、ただの身の回りの世話をする侍女ではない。皇后であるレイを護るための役割もあり、全員が武術と魔法の達人であった。


 「そのようなものと二人切りになってはなりませぬ」


 侍女たちの筆頭であるランカは言った。彼女の気配はただならず、これまで多くの戦を経験してきたケイですらたじろぐほどであった。


 「構いません。わたしは彼にモクランの話を聞きたいのです。あなたはわたしの言うことを聞かないのですか?」


 レイの強い口調にランカは、何かあったら呼ぶようにと言って引き下がった。


 二人切りになったケイとレイは抱きしめあった。レイはケイの体が一回り大きくなり、筋肉もつき逞しくなっていることに気がついた。


 「ケイ...頑張ってきたんだね...」


 「お前もな...レイ」


 ケイはレイを救い出す為にここに来ている。ケイは率直に抜け出して代に戻ろうと言った。ケイは懸命だった。ここに居てはヨウチョウに殺されてしまうのだ。だが、レイは首を振った。


 「あなたの気持ちはありがたいけど、わたしは皇后なのよ。それにわたしが逃げたらここの守りはどうなるの?」


 もはやレイは皇后であり、フトウの軍の支柱でもあるのだ。陳倉を捨てて逃げたならば、建て直し途中のフトウは崩壊するに違いなかった。


 「それでも、俺と代に行ってくれ!俺は代を再興する!お前には俺の妃になってほしいのだ!」


 ケイの悲痛な叫びにレイは目を伏せて言った。


 「わたしを攫ったりしたら、あなたの命があぶないわ....」


 ケイの叫びを聞いてランカが飛び込んできた。


 「無礼者!皇后様に何をするつもりだ!」


 ランカは剣をケイの喉元にあてる。ケイの首から一筋の血が流れた。


 「ランカ、わたしは大丈夫です。その者を離さない。ケイ、話はこれまでです。下がりなさい」


 そう言われたら引き下がるほかはなかった。ケイは憮然とした表情で幕舎に戻った。


 「皇后様は断ったようね...」


 ハクエンはケイの顔をみて説得が失敗に終わったと察した。本来、千人将など皇后に会える立場ではない。それが共に逃げるなど前代未聞のことなのだ。レイは聡明であるが、頑固のようにも見える。ハクエンは初めから簡単に説得には応じないであろうと思っていた。


 「それにフトウがヨウチョウに負けると決まったわけではないわ」


 ハクエンの言うことはもっともであった。フトウの元には忠義の厚い者たちが集まって来ている。一時の危機はとりあえずは去ったのだ。だが史実を知るケイは首を振り項垂れるだけであった。


 ーーー可哀想なケイ...


 サクはケイの苦しげな表情を見て心を痛めた。ここで変に慰めてしまったら、ケイはサクを遠ざけてしまうような気がした。サクは何も出来ないと思い首を振った。


 

 ヨウチョウは一旦は天水まで下がり、軍容を改めて整えた。涼から西域の傭兵1万を呼び寄せヨウコウの下につけた。そして新たにリョコウという5千人将を将軍へ引き上げた。ヨウアンが表に出ることは無い。後方で兵站を担っている。フトウに馳せ参じたトウ兄弟の実力の程はわからない。だが、あのトウキョウの子供なのだ。警戒するに越したことはない。ヨウチョウは慎重に再度の長安攻撃に向けて念入りに準備をした。


 中山に戻ったチュウはボヨウスイに対して劣勢であった。常に前線で戦い続けたボヨウスイ軍とでは、その軍の力は歴然であった。


 「このままではボヨウスイに滅ぼされてしまう...」


 チュウは考えを巡らし、東晋にボヨウスイの後を突いてくれと要請することにした。この辺りは父であるヒョウと思考が似ていた。だが、チュウはヒョウと違い出来もしない領土の割譲といった約束など提示しなかった。


 「謝礼に毎年金銀を払うこと。東晋を兄として敬うこと」を提示したのだ。


 チュウの使者の言うことにシャアンは考えた。燕の言うことは信用出来ない。だが、ボヨウスイがこれ以上大きくなることは東晋にとっても脅威であった。


 「では今年の分の金銀を先に受け取ったら援軍を出すとしよう....」


 シャアンは燕が約束を違えないように、先に謝礼を払えと伝えた。やがて、燕の船団が海沿いに東晋の国都である建康にやって来た。シャアンはそれを受け取り、自ら北府の軍を率い北上を開始した。


 「揚州を守備せよ」


 ボヨウスイはソンキンに命じた。ソンキンはかつてモクランの副将であったが、一悶着あったのかボヨウスイの監査役として送り込まれていた。淝水の戦い以降も、ソンキンはそのまま居続けたのだ。


 「よいので?ソンキンではシャアンには勝てないですよ」


 ボヨウスイはトクの疑問に答えた。


 「揚州は時間稼ぎだ。最悪取られてもよい。それより今は燕の人心を掌握することが先だ。速やかにチュウを討つ」


 ボヨウスイの攻撃は東晋に背後を突かれて、一層苛烈になった。ボヨウスイ軍の進撃は止まらなかった。かつての燕の支配地であった海沿いの徐州や青州をトクに侵攻させ支配していった。ボヨウスイ自身は鄴などの主要都市を飲み込んでいった。ボヨウスイはさらに北上を続けた。


 ボヨウスイを迎え入れる民の熱狂が巻き起こる。あの悪政を重ねたヒョウの子供であるチュウよりも、燕の英雄であるボヨウスイの方がはるかに人気が高かったのだ。


 だが、チュウを追い込んだと見えたが、ボヨウスイは退却せざるを得なかった。


 東晋のシャアンはボヨウスイの読みに反して、揚州には行かず、揚子江を西上して上陸し、洛陽を落としたのであった。

 

 さらに事態は悪化する。奉戴した燕王ボヨウイがトクによって殺され、トクが燕王を名乗ったのだ。

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