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学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
決戦

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69話

 秦のジョセイと、江夏を守る東晋のシュジョとの戦いが始まった。

 フケン本隊はまだ集結の途上にあり、洛陽周辺に滞陣している。


 ジョセイの軍勢は当初三万であったが、フケンは集結した軍を順次、ジョセイのもとへ送り込んでいた。


 一方、シュジョは二万の軍を率いて江夏を守っている。

 江夏の城は揚子江の水際に築かれており、背後は大河である。攻め手は川に面していない北側と西側の門に限られていた。


 門前には深い塹壕が掘られ、橋を上げられれば断崖絶壁のようになり、城壁の上から攻め手を狙い撃ちにできる構造であった。


 さらに川の上には東晋の戦艦が並び、陸上の秦軍に向けて矢や巨大な弩を撃ち込んでくる。

 かつてモクランが東晋のカンオンと戦った際、風魔法を使った遠距離射撃や戦車の弩に苦戦を強いられたが、その技術は戦艦にも受け継がれていた。


 秦軍は川上からの射撃に手も足も出なかった。

 城を攻めようにも、城壁から矢が降り注ぎ、近づくことすらできない。


「くそ! 陸に上がって来い! 卑怯だぞ!」


 ジョセイは怒鳴り散らしたが、東晋がそんな挑発に乗るはずもなかった。

 やむなくジョセイは射程圏外まで軍を下げる。


 洛陽からの補充は二万を超え、ジョセイ軍は五万にまで膨れ上がっていた。


「数を頼みに押し切るか……」


 ジョセイは梯子を並べ、一気に攻め立てた。

 だが東晋の射撃は精度が高く、秦兵は次々と倒れていく。ジョセイはいたずらに兵を死なせるだけであった。


 急ぎ、ジョセイは投石車を呼び寄せた。

 江夏の城がどのような地形と防備を持つか、調査不足であったことが露呈していた。


 ジョセイはトウキョウの元部下であり、その用兵を最も色濃く受け継いでいると思われていた。

 だが実際には敵を侮る癖が抜けず、隙も多かった。


 かつてボヨウスイにこっぴどくやられた頃は慎重さも見せていたが、トウキョウの死後、彼を諫める者はいなくなり、傲慢な一面が表に出ていた。


 江夏攻めが始まってから、すでに二週間が経過していた。

 ようやく投石車が完成し、ジョセイは再び攻撃を開始する。


 迫り来る投石車を見て、シュジョは火矢を撃たせた。

 だが投石車は水を含ませてあり、燃えなかった。


「残念だったな! これでも喰らえ!」


 投石車の射程は、川上の戦艦の弩よりも長い。

 人の頭ほどの石が無数に城内へ降り注いだ。


 シュジョは即座に兵に盾を構えて隠れろと命じる。

 だが石はジョセイの土魔法で次々と作り出され、城内では盾が割れ、被害が拡大していった。


 シュジョは戦艦に指示を出し、無理やり揚陸させる。

 投石車は弩の射程に入った。


「まずい! 投石車を下げよ!」


 だが後退する前に、投石車はすべて弩で粉砕された。

 ジョセイは悔しさのあまり、指揮棒をへし折り、地に投げ捨てた。


 戦艦は再び川へ戻っていく。

 しかし無理な揚陸で船体は傷つき、沈みはしないものの、動きは鈍くなっていた。


 南船北馬とは言うが、秦に船がないわけではない。

 ジョセイは兵を船に乗せ、浸水した東晋の戦艦に止めを刺そうと川へ送り出した。


 秦の船は中型船三十艘。

 一艘につき二百人が乗っている。

 対する東晋は戦艦を守る小型船百艘。一艘に二十人ほどだが、小回りが利いた。


 秦軍は上流から流れに乗って進軍した。


 だが川中には罠が張られていた。

 鉄の柵が鎖で繋がれ、水中に仕掛けられていたのだ。


 東晋の船がそれを引くと、秦の船団の船底に次々と突き刺さった。


 沈みゆく秦の船を、東晋の船が攻撃する。

 水面に浮かび上がろうとする兵は、槍や矢で討たれていった。


 この攻防で秦は半数の船を失い、約三千人が犠牲となった。


 ジョセイは歯噛みし、指揮棒を地面に叩きつけた。

 軍は膨張し続けているが、やることなすことすべてシュジョに打ち破られ、遠巻きに江夏を眺めるしかなかった。


 やがてフケンから督戦の勅命が届く。

 攻めぬなら斬首せよ、という内容であった。


「くそ……寄せ集めの軍ばかりなのに、無理を言う!」


 ジョセイはやむなく、連日強引に攻城を続けた。


 投石車も失い、有効な攻撃手段のないまま梯子を掛けて登らせる。


 シュジョは冷静に、梯子を一箇所ずつ潰していく。

 外された梯子から秦兵が落下し、次々と命を落とした。


 矢の雨が降り注ぎ、戦艦の弩も撃ち続けられる。


「近づきすぎだ! 離れろ!」


 ジョセイは命じたが、命令は通らない。

 各地から集められた指揮官たちは弩の餌食となった。


 一ヶ月に及ぶ攻城戦で、ジョセイは二万を失っていた。

 軍はなお四万残っていたが、士気は崩壊し、勝手に引き上げる部隊も出始めていた。


 ジョセイはついにフケンに呼び出され、責め立てられる。


 寄せ集めの軍で、指揮官が言うことを聞かなかったのだ――

 そう言い訳した瞬間、フケンは激怒した。


「おのれは朕の軍を愚弄するつもりか!」


 フケンは指揮棒でジョセイを殴りつけた。

 ジョセイの頬から血が流れる。


「鞭打ち百回の後、放逐せよ!」


 こうしてジョセイは罷免され、追放された。

 江夏は重要拠点である。


 フケンはモクランに、ジョセイの尻拭いを命じた。


 モクラン軍四万が江夏へ向かう。

 ケイは、ついに始まったと、緊張の面持ちで行軍していた。

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