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学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
征西編

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60話

 ヨウアンは、エイゲツ軍に横から突かれては危ないと判断し、中央の軍を引き上げた。

 もはや魚鱗は保てず、方陣へと組み替える。中央突破の攻撃の陣から、防御の陣へと変わっていく。


「おい! ヨウアン! 押されているのか!?」


 フトは目まぐるしく変わる戦況に追いつけていなかった。


「意外に敵が強く、手こずりましたが、この方陣は強力です。決して破られません」


 ヨウアンはフトに安心しろと告げ、丘の上に陣取って観戦なされよと言った。


「そうか。頼んだぞ」


 フトはそう言うと、五千の兵を連れ、少し離れた丘の上へと上がった。


 モクランは、氐軍が方陣を組んだのを見て、鶴翼を収納する。円陣を組み、睨み合った。


 やがて日が暮れていく。双方、篝火を多めに焚き、戦場を明るく照らした。


「交代で休め」


 モクランは交代で見張りを立てさせ、兵を休ませた。

 モクラン自身も、昼間の魔力の放出で疲弊していた。


「休んでください……しっかり見張ります」


「ケイか……昼間は本当に助かったぞ……」


 そう言うと、モクランは椅子に座ったまま眠りに落ちた。よほど疲れていたのだろう。

 ケイはモクランの体に毛布をかけた。


 モクランの元を離れると、エイゲツがいた。


「ケイ……わたしの情けない姿は、すべて忘れろ……」


 エイゲツは顔を伏せて言った。ケイに弱い姿は見せたくなかったのだ。


「そんな……俺は気にしてないよ」


「馬鹿! わたしが気にしてるんだよ!」


 エイゲツは顔を赤らめ、そう吐き捨てると立ち去った。


 ケイは巡回を終え、自身の幕舎へ戻った。


 ――ヨウアンの、あの動き……明らかに俺を狙いに来ていた。


 ついに将軍にまで命を狙われる存在になったのだと実感し、身が引き締まる思いだった。


 翌日も、秦軍と氐軍は睨み合ったままだった。


 ――あの方陣には、隙がない……。


 ヨウアンの陣は一夜にして、土魔法による防壁で囲まれていた。正面からぶつかれば、被害は甚大になる。


 モクランは打つ手を見出せず、この日は探りを入れる攻撃に留めた。

 ヨウアンの側も動かない。方陣と土の防壁を築いた以上、徹底して守り、秦軍の退却を待つ構えだった。


 探り合いの戦いが、三日ほど続いた。


 モクランは諸将を集め、軍議を開いた。


「わたしの土魔法で壁に階段をかけ、一気に登りましょう」


 エイゲツが言った。だが、それは魔力の消耗が激しい。

 防壁を登った瞬間に崩される危険もある。


 ハクエンがそれを指摘すると、エイゲツは腕を組んで黙り込んだ。


「持久戦ですか?」


 ジュンカンが口を開くと、モクランは即座に否定した。


「目標は、この先の天水だ。天水には涼からの支援が続いている。先に干上がるのはこちらだ」


 補給はあるが、山越えのため安定しているとは言い難い。


「ヨウアンは用意周到だ。すでに地下道を作り、奇襲してくる可能性もある」


 エイゲツが言う。実際、一度地下からの伏兵で痛い目を見ている。


「どう対処する?」


 モクランの問いに、エイゲツは答えた。


「地下道があるなら、寸断する。陣の地下に防壁を埋め込む」


 モクランは頷き、対策を命じた。


 その夜、地面から不審な物音が聞こえた。

 やはり氐軍は地下道を使って侵入しようとしていたのだ。


「馬鹿な……行き止まりだと!?」


 大男たちを率いた氐軍の指揮官は、地下道が分厚い岩盤に遮られているのを見て狼狽した。


「ふふん。これで終わりと思うな」


 エイゲツが魔力を注ぐと、地下道は崩落した。

 地の底から、鈍い断末魔が響く。西域の言葉も混じっていた。


「ふん。あの忌々しい大男どもも始末できたか」


 ヨウアンは地下道を潰され、傭兵隊を失ったと知ると、采配を地面に叩きつけた。


「おのれ……ことごとく我が策を潰してくるか!」


 大男たちを失い、ヨウアンは防壁をさらに厚くし、完全に籠城の構えを取った。

 策は破れたが、秦軍はますます攻め手を欠くことになる。


 ケイの五百人隊は、氐軍の陣をぐるりと回って観察する。

 砦とは違い、この陣は鼠一匹の侵入も許さぬほど堅牢だった。


「あの丘の上の軍は?」


 ケイは少し離れた丘に、五千ほどの兵がいるのに気づく。

 サクによれば、氐王族――フトの軍だという。


 それを聞き、ケイは静かに言った。


「サク……俺たちは、少し勘違いをしていたかもしれないね……」

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