表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
征西編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/134

51話

 洛陽を得て、フケンは秦国内の軍の配置を見直した。

 トウキョウを引き続き襄陽に置き、洛陽までの一帯の防衛を任せる。ジョセイはトウキョウの補佐につけた。

 秦に降ったボヨウタクは中山へ移し、旧燕北部一帯を監督させた。長安から役人を派遣し、秦の制度と法律を浸透させていく。


 そしてボヨウスイには、もともとの領地である揚州を任せた。ただし、副将のヨウチョウは長安へ異動させ、トクは北部の治安維持に当たらせた。

 ボヨウスイを重用することに、オウモウは強硬に反対していた。


「ボヨウスイは燕の象徴のような人物です。人望も厚く、秦に乱れがあれば、必ず独立します」


 オウモウの弁は続く。


「秦の民と燕の民は、旧来の敵対関係にあります。長年の戦と騙し合いで、互いの反発は深い溝となっています。絶対に彼らに心を許してはなりません!」


 フケンは溜息をついた。


「だからこそ、ボヨウスイを重用するのだ。彼こそが、我が統治の象徴となる」


 オウモウは、ならばその力を削ぐべきだと主張した。

 フケンはオウモウがあまりに言い募るため、ボヨウスイの副将であったトクを北へ、ヨウチョウを西へ動かした。エイゲツはすでにモクランの元へ戻っていた。


 ソンキンは燕王を捕らえていた。

 フケンは燕王を庇護し、長安に住まわせた。敵国の王族にも寛容である姿勢を示すことで、徳の王としての名声を得るためである。


 ソンキンはモクランの元から引き離された。

 フケンはカクとモクランの最後の戦いの顛末を聞いていた。このまま近くに置けば、いずれ抜き差しならぬ事態になりかねない。

 オウモウの進言により、ソンキンはボヨウスイの監視役として揚州に派遣された。


 秦にとって、敵は氐、涼、そして東晋を残すのみとなった。

 氐は秦と同族であるが、フケンが王となったことを良しとしない者たちが建てた国である。フケンはクーデターによって前王を滅ぼして王位に就いており、本来、王位継承順位は高くなかった。


 涼は騎馬民族の国ではない。

 かつてこの世界が三国で争っていた頃に制圧され、中央の民が移住したことに端を発する。世の乱れによって中央の統治が西域の端まで及ばなくなり、やがて独立政権が成立したのだ。


「最近、氐はますます王を正統ではないと喧伝しているとのことです。燕の次は氐を討ち、王が名実ともに秦の王であることを世に示すべきかと」


 オウモウの進言に、フケンはうなずいた。


「モクランに出撃を命じよ」


 カクとの戦いの傷も癒えぬまま、モクランは再び戦場へ赴くことになった。


 ⸻


 モクランはハクエンに屋敷を与え、監視と世話のために侍女をつけた。

 ハクエンは無気力そのもので、いつ自刃してもおかしくない状態であった。


「ケイ……ハクエンに声をかけてやってくれないか」


 モクランは、ケイにそう頼んだ。


 ―――なんて無茶振りだ……


「なぜ、わたしなのですか?」


 ケイは内心、とんでもない頼みだと思いながら尋ねる。


「お前は若いのに、なぜか大人びて落ち着きがある。それに、女性の心がわかるようだ……」


 モクランの頼みを断るわけにはいかなかった。

 外見は若者だが、中身は六十歳近い。転生前には離婚も経験している。この世界に来てからも、多くの女性と深く関わってきた。


 だが、果たして自分に何ができるのか。


 モクランの幕舎を出ると、エイゲツと鉢合わせした。


「よう、色男。次は、あのお綺麗なお嬢さんを慰めてやるんだって?」


「な……なんで知ってるんだ……しかも慰めるって……」


 ケイが狼狽すると、エイゲツはニヤリと笑った。


「わたしがモクランに、お前を推挙したんだよ」


「!?」


「ふふ……お前はまだ、自分の魅力に気づいていないのかい? しっかり優しく包み込んでやることだね」


 そう言い残し、エイゲツは手を振って去っていった。


 ―――いったい、どうしたらいいのだ……


 思い悩んだケイは、ジュンカンの幕舎を訪れた。

 余計な誤解を招かぬよう、すべてを説明する必要があった。


 モクランからの命令であること、エイゲツの進言によるものだということを、包み隠さず話す。サクにも同じ説明をする必要があるだろう。


 ジュンカンは複雑な表情を浮かべた。

 ハクエンは不幸だ。辱めを受け、最愛の人を目の前で失った。その直接の引き金が、ケイの火の矢であったことも事実だ。


「……わたしも一緒に行こうか」


 それは嫉妬ではなく、純粋な心配だった。


「ありがとう。でも、これは越えなければならない壁のような気がする。ひとりで行ってみるよ」


「……気をつけてね」


 そう言って、ジュンカンはケイの肩に腕を回し、そっと口づけた。

 戦続きで久しく触れ合っていなかったこともあり、その夜、二人は情熱的な時間を過ごした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ