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学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
洛陽争奪編

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49話

 ソンキンは、燕王とヒョウの軍を追った。

 ほどなく追いつき、背後から襲いかかる。


 ヒョウの軍は新兵ばかりで、行軍が遅かった。それだけでなく、ソンキンの攻撃によってズタボロにされた。


「弱すぎる……これが王を守る軍なのか……」


 ソンキンは、わずかに哀れみを覚えたが、容赦はしなかった。

 次々と燕軍を討ち倒していく。


 その中で、中央にひときわきらびやかな集団が目に入った。


「あれは……王か。ものども! 囲め!」


 燕王を守る兵たちは、次々と討たれていく。

 そしてついに、ソンキンは燕王を捕らえた。


「この程度で、王とは……」


 秦王フケンとは、まるで違う。

 そして、かつて裏切り、殺害した代王とも。


 燕王は恐怖に怯え、ソンキンに命乞いをするのであった。


 ヒョウは、燕王が捕らえられるのを尻目に、馬を追い立てて逃げた。


 ―――北部には血胤がいくらでもいる。王の代わりなど、誰でもよい。


 ヒョウに従う兵は、もはやわずかであった。


 ソンキンは王を縄で縛り上げ、馬に乗せると、モクランに「燕王を引き立てて戻る」と伝令を先行させた。


 その時、十騎ほどの騎馬が目に留まった。


「あれは?」


 ソンキンはそれに気づくと、ニヤリと笑い、自ら五百騎を率いて、その十騎を取り囲んだ。


 ―――


 モクランとカクの戦いは、決定打に欠け、お互いを削り合う展開となっていた。


 カクは焦る。

 モクランの本隊に、隙を見出すことができない。


 何度も頭の中で、どのようにモクランを討つかを考えたが、どれも上手くいきそうにない。


 ―――モクランさえ討てば、何とかなる。


 カクは、あえて隙を作り、モクランを誘った。

 カクの前に、わずかだが道が開く。


 モクランは罠だと察したが、あえてその誘いに乗った。


「各自の判断で動いてよい」


 モクランはジュンカンとケイにそう告げると、麾下の二千騎を率いて、カクに向かって駆けた。


 ジュンカンとケイも、モクランに続く。


「ジュンカン! カクは必ず罠を張っているはずだ! モクラン様を護るぞ!」


 ケイが呼びかける。

 ジュンカンは、ケイがそんなことを言うようになったかと内心で喜びつつ、分かっていると返した。


 案の定、道の左右には魔道具兵が潜んでいた。サクはケイより索敵能力に長けている。魔道具兵が潜む場所を的確に指さす。


 ケイはモクランの前に出て、サクの指し示す方向に、右へ左へと火の矢を立て続けに放つ。

 矢は魔道具に命中し、爆発していく。


 ジュンカンも前に出て、左右へ礫を放ち、魔道具兵を撃ち抜いた。


「やはり、あの二人が邪魔をするか……」


 カクは、予想通りの秦軍の動きに苛立ちながらも、道の左右に水の壁を展開した。


 それはケイとジュンカンを遮断し、中央を走るモクランだけを通す形だった。


 カクは、魔道具兵を囮にすれば、ジュンカンとケイが食いついてくると読んでいたのだ。


 モクランと引き離され、ケイとジュンカンは焦る。


 ケイは水の壁を破壊しようと火の矢を放つが、水の壁に吸い込まれ、鎮火する。

 ジュンカンも礫を放つが、同じく水の壁に取り込まれ、撃ち抜くことができなかった。


 モクランは剣を抜く。

 先の戦いでは、カクとの一騎打ちで魔力が枯渇し、遅れを取った。


 だが、今回は違う。


 ケイとジュンカンのおかげで、魔力を温存したまま戦うことができる。

 一方のカクは、すでに水の壁を展開している。


 しかも、連日の洛陽防衛戦で、遠目にも疲労が見て取れた。


 カクも剣を抜いた。

 長引けば負ける。一撃で決めると、馬腹を蹴った。


 カクが水流剣を振り下ろす。

 だが、その渾身の一撃は、モクランの水流剣に受け止められた。


 ―――以前より、強くなっている……。


 モクランはカクの剣を弾き、立て続けに水流剣を突き込む。

 カクは、それを防ぐのに必死だった。


 ―――やはり、強い……。


 モクランもまた、カクの異様な粘りに、改めてその力を思い知る。


 カクは防御を続けながら、時折、鋭い剣をモクランへ繰り出してくる。


 モクランの髪が、はらりと落ちた。

 間一髪で、カクの剣をかわす。


 モクランが振り下ろす剣を、カクは必死の形相で受け止める。

 その瞬間、カクは血を吐いた。


 魔力は、すでに枯渇しているのだろう。

 それでもカクは、気力だけでモクランと斬り結び続けた。


 戦いは、何十合、何百合にも及んだ。

 モクランが押しているが、カクに致命傷を与えることができない。


 やがて、ケイとジュンカンは水の壁を突破する。

 カクの魔力が尽き、水の壁を維持できなくなったのだ。


 モクランの助けに入ろうとするケイを、ジュンカンが止める。


「将軍同士の一騎打ちだ。水を差すな……」


「し……しかし……」


 ケイの動きを手で制し、ジュンカンは首を振った。


「モクラン様を信じて、見守るしかない」


 やがて日が暮れ、周囲に篝火が焚かれる。

 モクランにも疲労の色が濃くなっていた。


 隙を見せた方が、斬られる。

 すでに水流剣は消え、魔法を用いない、剣だけの撃ち合いとなっていた。


 ―――あと数合で決着がつく。


 そんな空気が、戦場を包む。

 見守る秦軍も燕軍も、武器を握り直した。


 だが、その時。


 モクランとカクの戦いに割って入るかのように、大音声が戦場に響き渡った。


「見よ! 燕のものどもよ!」


 ソンキンであった。


 彼が指さす先には、縄で縛られた燕王の姿。

 そして――衣服がぼろぼろに裂かれた、ハクエンの姿があった。

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