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学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
洛陽争奪編

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47話

 突然の燕軍の攻撃に、カンオンは困惑した。


「まさか、騙されたのか……」


 カンオンには、燕の内情は分からない。

 ヒョウは、揚州を渡す代わりに、秦を共に討とうと言ってきた。

 燕軍と秦軍の交戦が始まったのを確認してから、前進したのだ。

 それがすべて、カンオンを欺き、ボヨウスイに背後を襲わせるための策であったのだと、カンオンは誤解した。


 ボヨウスイの火の龍が、東晋軍の戦車を焼き払う。

 東晋軍は完全に虚を突かれ、対処できなかった。


「余の呼びかけに応じてくれたか!」


 フケンは喜び、トウキョウに東晋軍への攻撃を指示した。

 ボヨウスイとトウキョウに挟撃されたカンオンは、大混乱の中、辛うじて戦場を離脱した。


「おのれ、燕め! この恨み、忘れんぞ!」


 東晋軍は壊滅し、散り散りとなって消滅した。


 カクはその光景を見て愕然とし、もはや秦軍への攻撃は不可能と判断して兵を引いた。

 洛陽から戦況を見ていたヒョウも、同様に愕然としていた。


「なんてことだ……まさかボヨウスイが裏切るとは……」


 だが、ボヨウスイが裏切るきっかけを作ったのは、すべてヒョウ自身であった。

 それでもヒョウは、ボヨウスイの燕への忠義は絶対だと信じ込んでいた。


 その時、洛陽の北門が開いた。

 王であるボヨウイが、逃げ出したのだ。


「なんて王だ……普段は優柔不断なくせに、こんな時だけ判断が早い……」


 ほとんどお飾りとはいえ、王は総大将でもある。

 その王が真っ先に逃げ出したことで、洛陽内は騒然となった。

 王が逃げた以上、戦う理由はないと、多くの者が武器を捨てた。


 とりわけ、徴兵され、無理矢理死兵として使われた新兵たちの一部は蜂起し、洛陽東門を占拠した。

 そして秦軍を迎え入れるべく、門を開放した。


「もはや戦うことはできません。王を追い、我らも洛陽を捨てましょう」


 帰還したカクが、ヒョウに告げる。

 ヒョウは、その言葉に従うしかなかった。


 こうして洛陽から燕軍は去り、秦軍が入城した。

 多くの将兵の犠牲の末、ついにフケンは洛陽を手中に収めたのであった。


 ―――


 フケンは、ボヨウスイと会談した。


「貴殿が来てくれたことで、余の悲願に向け、一歩前進した」


 フケンの悲願とは、多種多様な民族の共生であった。

 秦と燕はいずれも騎馬民族であり、国を成す以前から因縁のある間柄である。

 長年にわたる戦争と騙し合いによって、数え切れぬほどの血が流れてきた。


 フケンは、その負の歴史を清算するのだという。


 ―――果たして、この男にそれができるのか。

 もし出来ぬのなら、その時は……。


 ボヨウスイは野望を胸に秘め、フケンに頭を下げた。


 ―――


 一方、ヒョウとカクは王に追いつき、燕は北を目指して流れていく。

 遷都先であった中山は、すでに秦に喉元を突きつけられており、安全ではなかった。

 そこで彼らは、北東の地、遼東を目指した。

 そこには北部駐屯軍がいる。その兵を吸収すれば、一時的ではあるが、秦に対抗できる軍勢となる。


 しかし、燕の行く手には、鄴から東進してきたモクラン軍が立ちはだかった。

 さらに、洛陽からも秦軍が追撃しているという。


 何としても、モクラン軍を突破しなければならない。


 カクは二万の兵で、モクラン軍四万と対峙した。

 ヒョウは一万の兵を率い、王を連れて北西へと駆ける。

 モクラン軍からは、ソンキンの一万が切り離され、ヒョウを追った。


「ハクエン……お前は逃げよ……」


 ハクエンの背中の負傷は、まだ癒えていない。

 モクランを相手に戦える状態ではなかった。


「嫌です。わたしは最後まで、カク様と共に戦います」


 その覚悟に、カクは俯き、部下に合図を送った。

 部下たちはハクエンを無理矢理引き離し、馬に乗せて駆け出した。


「戻りなさい! カク様のもとへ戻るのです!」


 ハクエンは涙を流し、必死に叫ぶ。

 だが馬は走り続け、カクの姿は遠ざかっていく。

 ここで離れれば、二度と会えなくなるかもしれない。


「カク様! カク様――!」


 ハクエンの悲痛な声は、いつまでもカクの耳に残った。


 モクラン相手に負けるつもりはない。

 だが、何が起こるか分からぬ戦場に、手負いのハクエンを残すことはできなかった。

 たとえ自分が死んでも、ハクエンには生きていてほしかった。


 遠目に、モクランの姿が見える。

 だが、もはや心は揺らがなかった。


 その時、カクは悟った。

 ハクエンこそが、自身にとって最愛の女性であると。


 カクは、ゆっくりと前進を始めた。


 モクランは、カクの軍から十騎ほどが離脱するのを見た。

 ハクエンが何か叫んでいるのも見える。


「あれを追うのは、まかりならん」


 モクランは静かに言い、ゆっくりと前進してくるカクの軍へと視線を移す。


 ここで、カクとの決着をつける。


 モクランは剣を抜き、振り下ろした。

 それに呼応するように、秦軍も前進を開始する。


 モクランとカク。

 最後の戦いの火蓋が、ついに切って落とされた。

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