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学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
北魏編

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131話

 建康。

 リュウユウは揚子江を眺めていた。魏が南燕に大勝し、50万の信者を討ったのだという。だが、南燕は滅ぼさず邯鄲へ引き上げていった。


 北府の軍の将軍であった。北府ではリュウロウシに次ぐ地位にある。


「魏は甘い。南燕に止めを刺さず引き上げるとは」


「信者を殺しすぎて怖くなったのだろうな」


 リュウロウシはリュウユウにそう返した。咳込む。かつて淝水の戦いで活躍したが、高齢になり病がちであった。


「ユウよ。ワシは長くない。北府の軍はお前に託すぞ」


 北府の軍はシャアンとシャゲンが作った東晋最強の軍であった。シャアンもシャゲンも淝水の戦いの後、すぐに病死し、リュウロウシに受け継がれた。そして今、リュウユウに受け継がれようとしている。


「カンゲンには気をつけよ。あの男には北府の軍は渡すでないぞ」


 リュウユウは頷いた。東晋の実質的な権限はカンゲンが握っている。秦や燕と戦ったカンオンの息子である。


「南燕討伐を進言する」


 リュウユウはそう言うと、カンゲンのいる宰相府に向かった。


 リュウユウの進言はすんなり通った。カンゲンも弱体化した南燕を討つことに賛成であった。せっかく魏が取りこぼしてくれたのである。頂かない手はなかった。


 リュウユウは南燕に向けて進軍を開始した。その数5万。北府の軍の精鋭であった。


「連環馬軍だと.....」


 リュウユウは南燕そのものよりも、魏王ケイが使ったという戦法の方に興味を持った。そのような戦法は聞いたことが無かったからだ。いや戦法よりもケイに興味を持った。自分とどこか同じ匂いがすると感じ取った。


「魏を刺激するなよ」


 カンゲンには釘を刺されている。だが、リュウユウの目は南燕よりも、その先の魏に向いていた。


 南燕はあっけなく陥落した。魏に破れ、トクが死んだことで軍の指揮系統が機能していなかった。リュウユウの進軍が電撃的な速さであったこともあるが、南燕軍は迎撃の準備も不十分なまま戦い敗北した。


 南燕王チョウが捕縛されてくる。まだ幼かったが、南燕を滅ぼした証として処刑した。


 次に太平道の教祖ビャクレンが連れて来られた。まるで無気力な感じで表情が無かった。


「何か言うことはあるか?」


「......」


 リュウユウの問いにビャクレンは何も答えなかった。美しい女性だ。透き通るような肌。年齢はいくつのなのか全く想像がつかなかった。若くも見えるし、もっと年増にも見える。リュウユウはその美しさに息を飲んだ。


 ビャクレンは処刑しなかった。広固で大量の信者を失ったとはいえ、中華全土には信者がいる。東晋にも太平道の信者はいるのだ。教祖を処刑したら反乱が起きかねない。それは面倒であった。リュウユウはビャクレンを逃がした。表向きは死んだことになっている。だが、信者の一部は何かを感じ取りビャクレンの跡を辿っていった。信仰の象徴として遠くに行ってもらえればよい。


 南燕を併合したことで、東晋は魏と国境を接することになった。


「はたしてケイはどうでるか......」


 リュウユウは北府へ帰還する。このまま魏まで攻撃することは東晋に取って得策ではない。東晋は東西に長い国だ。戦力が東の端に偏ると、後秦や夏が南下する余地を与えてしまうからだ。


 カンゲンはリュウユウを警戒した。


「あいつだけは調子に乗らせてはならない」


 南燕を滅ぼしたことでリュウユウの地位が上がることを恐れた。北府の軍という、いわば軍閥のような組織があることも目障りであった。


 カンゲンはリュウユウを始末しようと考えた。褒賞を与えるという名目で建康に召喚した。東晋の王はお飾りである。実権はカンゲンが握っているのだ。建康の中にはカンゲンに反対する者はおらず、リュウユウを始末したところで、誰も何も言わないのは予測できた。


「これは危険だな......」


 リュウユウはカンゲンが何か企んでいると感じ取った。リュウユウは特に頭が切れるとかの類ではない。だが、なぜか勘が鋭かった。


 いつまでも召喚に応じないリュウユウに対して、カンゲンは「反逆の意思あり」として、諮問の使者を送ってきた。リュウユウの部下たちは口々に決起を訴えた。


「俺は勝てる戦しかしねえのだ」

 

 そう言ってリュウユウは訴えを退けた。ここで北府の軍を率いて反旗を翻しても、王を擁するカンゲンに勝てる見込みは無いのだ。リュウユウは反乱の意思はないと将軍の職を返上した。


「いつかカンゲンは失敗する。その時まで待て」


 根拠は無い。だがリュウユウの勘がそう告げている。リュウユウは北府の軍を離れ、揚子江の河口に位置する京口で隠遁生活を始めた。リュウユウに従うのはわずかに27人であった。


 ケイは間者の報告で、南燕があっさり東晋に滅ぼされたことを聞いた。南燕を滅ぼさなかったのはケイが躊躇したからに他ならない。その隙を東晋は鮮やかについてきた。


「リュウユウか......」


 ついにその名が出てきたかと思った。今はカンゲンに睨まれ蟄居しているという。史実ではケイはこの時期、息子に殺されている。だが、この世界では息子はいない。ケイも生き続ける。そうなると史実では直接ケイが戦っていない敵が立ちはだかることになる。


 それが東晋のリュウユウだ。ケイはリュウユウを探る間者の数を増やした。そしてもしリュウユウが決起する状況になれば、暗殺せよとも命じた。


「どうしました?怖い顔をして」


 ヨウカはこのところ、ますますレイに雰囲気が似てきている。最初に正室にした頃は、意図的に遠ざけていた。だが、2度目に正室に迎え入れてからは、ヨウカが側にいると安らぎを覚えることに気づき、しばしば寝室に通うようになっていた。


 王になって感じるのは孤独であった。それは王になって初めて分かったことである。以前は癒しをジュンカンやエイゲツに求めてきた。だが、ジュンカンは遠くにいるし、エイゲツは戦で命を落としてしまった。今のケイに癒しを与えてくれる存在。それがヨウカであった。


 ヨウカの温もりに包まれて、ケイは眠りにつくのであった。








 

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