第十九幕 ダンジョン : ベルベット鉱山『帰還』
「ちょっと耳貸してくれ」
俺は彼女たちを集めてヒソヒソと小声且つ手短にその内容を伝えた。
「....はい」
「....ふむふむ」
「....なるほど」
内容を伝えると再びオーク達がいる方へ向き直りーーー
「じゃあ、手はず通りに」
俺の言葉に、シスが頷き煙幕の一つを俺に手渡す。
その後、シスが俺に渡した以外の幾つかの煙幕を手に取ってその全てをオークの集団へ投げ付けた。
ーーーボフンッ...
煙が一気に広がり、壁穴から見下ろした眼下は白一色に染まっていく。
「ギャッ!?」
「グギャギャ!?」
突然の煙幕によってオークの集団が驚きと焦燥で錯乱状態となり、その隙に元々素早さの高いシスとスキル【ヘイスト】によって速いスピードの出せる俺が壁を伝うように飛び降り、そのまま煙幕の中に突っ込んだ。
煙に包まれた真っ白な視界の中、俺とシスは目の前のオークを薙ぎ倒しながら左右二手に分かれて移動し、オークの集団を大きく二つのグループに分けていく。
その後から露乃、暁美、アスタリアの三人が降りてきて暁美は俺が分けたオークの集団へ、アスタリアはシスが分けた集団に着いて二つに分けたグループをそれぞれ前方と後方で囲むように配置についた。
その二つのグループを左右に分け、取り囲む事によって真ん中ががら空き状態となる。
つまり、これは露乃が一直線にオーガを狙えるようにする陽動作戦なのだ。
分けたついでに俺達はオークを殲滅していく。
そして露乃は煙幕の、ど真ん中を突っ切ってオーガの元へ走っていきーーー
「うおおおぉぉぉ!!オーガめ、覚悟!!」
露乃が叫び、その剣の切っ先をオーガの喉元に定めーーー
「『突撃』【スティンガー】!」
露乃が握る剣からはオレンジ色のオーラが火花を散らすように弾け、衝撃波を生みながら更に加速する。
そして、その剣はオーガの喉を穿ち、発生した衝撃波によって吹っ飛ばされたオーガは壁に激突して絶命した。
オーガが吹っ飛ばされた衝撃によって宝玉が手から滑り落ち、宙を舞う。
それを露乃がキャッチしたのを確認した俺は、シスから予め受け取っていた煙幕を天井目掛けて思い切りぶん投げた。
天井で拡がっていく煙。
それを確認したシス、暁美、アスタリアはすぐさまその場から退避する。
そして一人残った俺は前方のオーク集団に向けてあの特大スキルを放った。
「『凍結世界』【アイシクルエデン】」
その瞬間、鉱山の最奥部分は白銀の世界へと変わり、そこにいたオークは全滅した。
「ふぅ、一件落着か...」
そう呟いて座り込む。
何だか色々あって疲れた...。
帰ったら宿でも探して寝るか。
そう考えていた時だ。
突如として頭の中に声が響く。
またしてもあの機械的な無機質の声だ。
〔レベルアップしました。ステータスをご確認下さい〕
〔また、レベルが一定値を越えた為【アンノウン】専用スキルを解放しました〕
俺は一瞬聞き捨てならない言葉を耳にした。
(何だって?アンノウン専用スキル!?)
〔スキル【一閃・氷華翠月】を獲得しました〕
〔スキル【連刃・漣】を獲得しました〕
〔スキル【電光石火】を獲得しました〕
〔また、スキル獲得に伴い新武器種『刀』を付与します〕
その声が告げたと同時、俺の手に刀が現れ、その手にズシリと重みを含んだ刀は確かに実体化しているようだ。
それを見ていたアスタリアが声を掛けてきた。
「帝斗さん、それ刀でしょうか」
「あ、あぁ...刀、みたいだな」
「でも、どうしてそれを?」
「わからねぇ...俺も何が何だか...」
俺はアスタリアに今あった出来事を端的に説明すると、驚きを隠せない顔で叫びに近い声で言った。
「ちょ、ちょっと待ってください!そんなスキル、存在しませんよ!?」
「ってことはお前も知らないスキルって事か」
「えぇ、そんなの知りません。今初めて聞きましたよ」
その騒ぎを聞き付けて他の三人も集まってきたので、俺は三人にも同様に説明すると返ってきた反応は大方アスタリアと同じようなリアクションだった。
挙げ句このままでは収集つかなくなりそうな雰囲気まで出始めたので、最後に俺が取り仕切る事に。
「ま、まぁ...とりあえず得る分には良いんじゃないか?兎に角一旦帰ろうぜ。腹へったし眠いしな」
そして、俺達はベルベット鉱山を脱出してブルースタリエへ帰還するのだった。




