第十五幕 ダンジョン : ベルベット鉱山『上層』
あの錆びていたトロッコが本来ならば走っていたであろうレールを辿り、最奥を目指す。
そこが最奥に続いているかどうかは今のところわからないが、とりあえずの指標にはなるからだ。
壁の松明を頼りに狭い通路となっている道を歩き続けると、道が二手に分かれていた。
「何か分かれてるな...どっち行くよ」
するとアスタリアが足元に転がっている石を拾い上げ、目の前の分岐点の壁に投げつける。
ーーーカンッ
そして跳ね返ってきた石は若干右側にずれて戻って来た。
「じゃあ右側に行きましょうか」
何だその決め方は...。
とは言え、どっちへ行けば良いのか検討もつかない以上右側へ行くことに誰も意義を唱えない。
そのまま右側の道へ線路沿いにしばらく歩くと開けた空間に出た。
そこには木造の橋が掛けられており、その橋に沿ってレールが敷かれている。
その場所の天井は広く高く鍾乳洞のように岩のつららが垂れ下がっていた。
下を覗けば木造の橋が横に、斜めに、幾つか掛けられており、それ以降は暗闇がぽっかりと口を開けているだけだ。
途方もない程深い。
正直、あまりリスクは負いたくないが右の道を行ってからそれなりに歩いているので、戻るのも億劫。
更に橋自体は狭い訳ではなく、むしろ横幅はそれなりに広い。
なので向かい側を目指す事に。
「思っていた以上に長くなりそうだぞこれ...」
「そうだね...足元気を付けて。落ちたらマジで洒落にならないから」
ーーージャリ...
すると、まるでこのタイミングを狙っていたかのように対岸の岩影から緑色の肌に小さな体躯をした魔物が大量に沸いてきた。
すかさず、シスがトゥルーサーチを使う。
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【ゴブリン】
LV.25
HP : 233
MP : 15
STR : 36
INT : 3
LUK : 5
DEX : 10
AGI : 15
討伐推奨 : 一次職以上
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「ゴブリンだって?オークじゃないのか」
「この鉱山はダンジョン化してしまっているからな。オークだけじゃないさ、他の魔物も住み着いている」
俺と暁美とは違い、露乃はそれなりにダンジョンへ潜った経験があるのだろう。
レベルもそうだが、この状況を冷静に分析した辺りその貫禄がある。
しかし、問題はそこじゃない。
俺達は今、広いとは言え橋の上にいるのであって、そこに大量のゴブリンが攻めてきている状況なのだ。
この数を相手にしていると、場合によってはジリ貧になって端まで追いやられて落下と言うこともある。
ましてやこんな所で大魔法とか使うわけにもいかない。
何よりアスタリアと暁美以外は俺の能力を知らないのだ。
どうする...?一旦引き返すか...?
「私が行くから、そこで待ってろ...」
「いや、折角だ。私も行かせて貰おう」
その状況にシスと露乃が前へ出た。
(なら仕方ねぇ...フローズンマジシャンの魔法だけ使っていればいいか)
そう思い俺も前へ出る。
(それに此処で俺が見てるだけじゃ流石に格好つかないだろ)
「わ、私だって、戦えるんだから!」
「じゃあ私は皆さんをバックアップしますね」
アスタリアが両手を合わせて詠唱を始める。
「【闘士の鼓舞】」
すると彼女と俺達全員の周りに赤いオーラを纏わせた。
アスタリアのスキルにより、俺達の気持ちが昂る。
俺は例外として、暁美はレベルが追い付いていないのでこのスキルは非常に有意義なものだった。
今なら、一次職の下級魔法のみでゴブリン共を蹴散らせそうだ。
結局俺達全員でゴブリンを迎え撃つ事となったーーー
「じゃ...左行くから他任せた」
「ならば私は中央を突破して通路を確保しようか」
まず、シスが煙幕をゴブリンの群れ目掛けて投げつけ、着弾させると煙が一気に広がりゴブリン達の目眩ましをした。
その煙の中にシスと露乃が突入するーーー
「ギャア!」
「グギャァ!?」
直後、煙の中からゴブリンの断末魔が聞こえ始め、その数は次第に大きくなっていった。
そして二人の後を追うように俺と暁美も突入する。
煙の中は先までは見えないが、自分の周囲ならば認識できる程度のものだ。
だが、ゴブリン達は突然の煙幕に混乱しきっていて右往左往しているのが足音から分かる。
その足音がする方向へ俺は魔法をぶっぱなした。
「『サンダーボルト』」
煙の中を蒼白い電流が迸り、煙の向こうに居るであろうゴブリンに直撃した。
その電流がゴブリンを纏うと地面にバタバタと倒れていった。
そのすぐ隣からはーーー
「『ファイアアロー』」
暁美がスキルを放ち、炎の矢はゴブリン達を焼き尽くす。
その戦いがしばらく続き、煙が晴れる頃には全てのゴブリンを倒していた。




