第十四幕 トロッコ騒動
鉱山へ続く道を歩き続け、坑道の入口に辿り着いた俺達一行は、そこでヘルメットを被った鉱夫のおじさん達と鉢合わせた。
その、おじさん達は坑道の入り口付近で屯している。
とりあえず現場の状況を把握するためにおじさん達に話し掛けてみた。
「すみません、ギルドへ依頼された方達ですか?」
俺に声を掛けられ、一斉に振り向く鉱夫達。
「あぁ、そうだべ。あんたらかオークの奴等追っ払ってくれるっちゅー連中は」
鉱夫達によると、どうやらこの先に物資を運ぶトロッコがオークに占領されたらしく、鉱山内部はやりたい放題荒らされているらしい。
「まぁ、後はあんたらに任せるべよ。おら達は此処で待機してるべ」
「んでよー、おらの娘が最近なぁ...」
一通り状況を説明し終えた鉱夫達は、この問題を俺達に一任して別の話題で盛り上がり始めた。
すると、アスタリアが「とりあえず、中へ入ってみましょうか」
と、何故か先導し始め、坑道へ侵入する俺達。
鉱山へ入ると、内部は松明が壁の至るところに取り付けられてるお陰で割りと明るいようだ。とは言え、足場が悪い事に変わりはない。
少し慎重に行くか...
と、思っていた矢先ーーー
「おっと、あぶねっ!」
早速何かが足に当たって躓きそうになる。
「ん?何だこれ...線路か?」
足元を見てみると、そこにはレールが敷かれていた。
どうやら、レール端の鉄の部分に足を取られたようだ。
するとまた突然アスタリアが、
「ありました、これですよこれ!えーっと...トロッコは何処にあるんでしょうか...?」
と、何故かトロッコを探し始めるアスタリア。
一体何がしたいんだろうか...?
「おい、急にトロッコなんて探してどうしたんだ」
「だって、坑道ですよ!トロッコですよ!うひゃああぁぁぁってやりたいじゃないですか!」
そう答えるアスタリアの瞳はキラキラしていた。
何を言っているのか、いまいち伝わらないが何となく想像は付く。
恐らくトロッコに乗って滑走してみたいって事なんだろう。
アスタリアが先導した理由も多分そういう事なのだろうと思う。
「あのな、そう言うのは危ないからーーー」
「あんたねぇ...子供じゃないんだから...」
言い掛けた途端、俺の代わりに突っ込みを入れてくれた暁美。
律儀な奴だけあって、そう言った常識もある。こいつが居てくれればアスタリアの暴走も抑えられるだろう。
「何よ、うひゃああぁぁぁって...トロッコに乗って滑走したい!とか分かりやすく言いなさいよ!一緒にトロッコ探すわよ!」
(あ、コイツも駄目だった...)
「トロッコ...走るの楽しそう」
「クフフ...我がドライブテクニックに酔いしれるが良い!!」
(これ俺以外全員乗る気満々だ)
だが、彼女らは一つ大事な事を忘れている。
その事実を叩きつけてこの流れを断ち切ってやる事にした。
「残念だったなお前ら。さっき鉱夫の人達が言ってただろ?トロッコはオークに占領されているって」
すると、シスがある方向を指差して言った。
「そうでもない...」
その方向に目を向けると、トロッコがレールに置かれたまま放置されている。
「ちょっと待て、一旦落ち着こう。まさか本気であれに乗る訳じゃないよな?」
そんな俺の心配を余所に、彼女達はトロッコの状態の確認しに向かう。
だがーーー
「うーん...何かちょっと錆びてない?」
「タイヤがボロボロ...」
「うぅ...これじゃ走れそうにありませんね...」
それを聞いた俺は心底安心した。
と言うか、よくよく考えてみればオーク達がトロッコを占領したと言っているのに、使えるトロッコがこんな所に置いてある筈が無いのだ。
「なら仕方ないよな。よし、歩いていこう!」
また彼女達が暴走しない内に歩いていくよう促した。
でなければ、あの手この手でトロッコに乗り込もうとしそうだしそんなものに俺も乗せられると思うとゾッとする。
そして彼女達も諦めが付いたようで、渋々歩いていく事に承諾したようだ。
とりあえず命は助かった。
あのトロッコが錆びていた事に感謝しながら俺達は坑道の最奥へ目指して歩いていった。




