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青色はぐれ星  作者: Full moon
第1章
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第五話 邂逅と撤退




「ごめんね、今日もボランティアがあって行けないの」


数日が経過した後の放課後。如月さんの周りにはいつもと同じようなメンツ、つまりクラスの中でも中心人物が集まっていた。男女ともに仲のいい、典型的なはいきゃと言われるグループだ。

しかしそんな彼らが遊ぶ放課後にのみ、如月さんの姿はない。彼女はいつもボランティアと称した何処かに行っているのだ。彼らは何度か彼女の後をつけようとした人がいたらしいのだけれど、必ず見つかるか、見失ってしまうかしていた。


「なぁ、どうして彼女は見つからないのだと思う?」

昼休み。どうしてかわからないが解放している屋上で、僕と佐藤が話し合っていた。議論の中心はもちろん、如月さんだ。

「さぁ、僕にはわからないけど・・・」


「決まってるだろ!あれだけの美しい女性だ!日夜秘密の特訓をしているに違いない!」


・・・いやお前バカだろ。どこぞの少年漫画風の言い方で女性を括らないでくれよ。それもよりによって如月さんを。

「佐藤・・・お前って本当はバカなのか?」

本心がどうしても出てしまった。いつも漂わせている優等生で冷静でイケメンでかっこいい佐藤はどこへ行ったのだろうか。


「恋する男はみんなバカになるさ。それぐらい知ってるだろ」

なんという開き直りなんだろうか、とものすごくバカにしたくなるが、それ以前に僕自身こんなに真剣に恋をしたことがないのだから反論はできない。

経験したことがないのだから。もし僕が誰かに本気で恋をしたらどうなるのだろうか。


そう思った瞬間、目の前の男が熱弁する女性の姿が思い浮かんだので、急いで掻き消した。佐藤とまともに戦って勝てるわけはない。というか、佐藤に協力すると約束してしまったのだから今更それを裏切るわけにもいかないだろう。


「おそらくその美貌を磨くために、日々トレーニングを重ねているのだろう。ああ、だから彼女はそれほどまでに美しいのか」

おいどうしたイケメン、と言いたい。2回くらい言いたい。そんな言葉の応酬(一方的に話されただけ)を繰り返しているうちに大体は昼休みが終わる。そしていつもの通り、如月さんは早く帰り、僕はゆっくりと帰宅をする。





ついに如月さんと話すことがなくなってから二週間が経過した。あれから何も起こることがない。ただ同じ日常が繰り返されているだけだ。本当に怖いくらいに。



如月さんが学校を休んだ。 先生から伝えられた理由は風邪を引いたから、というもの。彼女のいない教室はなぜか物寂しく、静かな雰囲気を持っていた。彼女がこの教室に現れたのはつい一ヶ月前だというのに。


彼女が休んでから三日目。


その日の実技の授業は、剣型の武器のみを用いて戦闘を行うものだった。青い閃光が、蛍のように灯っては消える。

その日の成績は最下位に終わった。どうしても、相手の動きを読み切ることができない。狙撃をするときは敵の動きは手に取るようにわかるというのに、相手に近づかれた途端、思ったように体を動かすことができない。


「鈴支那!!お前はふざけているのかぁ!」

教官からの罵声が響き渡る。ちなみに実技を担当しているのは教師ではなく教官、すなわち軍人である。


「お前からは成長の見込みが全く感じ取れん!みな、こいつのようにだけはならないようにな!!」

みんなの前に立たされ、色々と言われる。最初の方はかなり辛くて、泣くようなことも多少はあったのだけれど、最近は慣れてきた。というか軍人だからか、語彙力がない。いつも同じ言葉で罵ってくるのでいい加減次の言葉がわかってくる。


成績中間層の一部の生徒は愉快そうにその光景を見つめている。下層の人は自分より下のやつがいるのだと安心している。佐藤をはじめとする上位層は心底どうでも良さそうな目線を向けている。何も思うところはない。


その日の放課後、佐藤といつものように放課後集まるように言われたのだが、僕はそれを無視した。もしかしたら思ったよりも傷ついていたのかもしれない。教官の言葉というよりも、ほかのやつの反応に。まぁつまりは、佐藤の反応に。あいつは僕と相談して、僕から見れば、いわゆる友達のような関係にあると思っていた。しかし、教官の怒号が飛び交う中での、無関心な瞳を見てしまい、どうしても耐えられなかった。


そんなことを考えながら、あの佐藤は僕に裏切られたのだと感じているのだろうか、と心の片隅で思う。

もしかしたら友達解消になるかもしれないな。


帰り道、いったい何かをするわけでもなく、テキトーに歩く。何かで躓くこともなく歩き続ける。


公園。子供たちの遊ぶ声。薄汚れた服。小さな体。細い腕。多少なりと裕福な家庭で育った子供は、こんなそこらにある公園で遊ばない。治安の悪化とともに、街の声は小さくなっていった。


その小さな声の一つが、貧困層の声。この辺りは半ばスラムとかしている。

この辺りにはあまりきたことがない。近づかないことが多い。だから目新しいものも多い。


建物が入り組み、狭い道が多くなってきた時、青白い光が見えた。


普通の人からすれば、それはなんでもないもの。でも、学校で散々と使わされている武器。その色ならば話は別だ。

誰かが R.I.Rデバイスを使用している。


本来、こんな街中で使用するのは禁止だ。ルシアニウムが突然侵入したり現れたりする場合があるので武器の携帯は認められているが、勝手に使用すればかなりのペナルティが待っているので誰も使っているとことを見たことがない。


そして人は、僕は、そういうものがあれば、惹きつけられてしまうものだ。


建物の間を縫うように、狭い道がある。そこを進んでいく。ゴミなんかが散乱していて、異臭を放っている。

進んでいくと、やがてそれも減って行き、開けた場所に出る。


そこは河川敷だった。お世辞にも綺麗とは言えない小さな川。そこに小さな堤防と、砂利と雑草でできた狭い土地。


そこには僕のよく知る人物がいた。


僕の背丈から考えれば、低い背丈。それが身の丈以上の大剣を振り回している。

声をかけることもできなかった。彼女の顔を見ればわかる。必死さを通り越して、死ぬ気の形相だ。

振り回すにいる敵は・・・なんだ、あれは。如月さんが振り回した先で、何か、一瞬だけ空間の歪みのようなものがある。陽炎のような感じだ。

如月さんではなくもっとこの場を広い視野で見た。川が流れている。その河川敷。地面は砂利。膝ほどの雑草。

そして見つけた。そこにいたのは、人型のルシアニウムだった。ニュースなどでルシアニウムについて語られるのは珍しいことではない。そこに映し出されるルシアニウムはどれも異形の形だった。


しかしそこにいるルシアニウムは完全に人の形だ。それこそのっぺらぼうの顔でさえ、表情の乏しい人間と言われても遜色ないだろう。


如月さんが大剣をルシアニウムに当てようと振るう。しかし、それが当たることはない。ルシアニウムに大剣が触れようとした瞬間、ルシアニウムの姿が消える。


「この、クソがっ!」

如月さんは消える度に目で周囲を確認する。そして見つけられれば再び接近する。その繰り返しだ。あれでは体力がいつかは尽きる。


しかしそうしないといけない理由があるのだろう。憶測に過ぎないが、如月さんが攻撃を中断した瞬間、あのルシアニウムは攻撃を重ねてくる。現れた一瞬しか確認できないが、鋭い刃のついた刀剣を両手に持っている。

如月さんの背後を取るために狙っているのだろう。それをさせないために牽制し続けている。


だが、やはり体力の限界なのか、大剣を握る手が弱まっている。どうしてそれより軽い武器を使わないのだろう、と疑問に思った。

だがそれはすぐに解決される。使いたくてもできないのだ。河川敷にはいくつか武器の破片が散らばっている。多分如月さんが持つ武器はあの大剣以外全て潰されてしまっていたのだろう。


僕は食い入るようにその様子を見つめていた。助けに入るべきなのだろうか、躊躇していた。僕が今持っているのは、狙撃用でもなんでもない、小型銃一丁だけ。これだけで何ができるのだろう。小型銃は取り回しが効き、軽い。しかし威力はほとんどない。それこそほぼゼロ距離で打たなければ意味がないほどに。それなら剣型を使用したほうがいい。そういう理由でほとんど使われることもない。


勝てるわけがない。そう確信していた。僕なんかが言ったところで話にならない。如月さんは僕よりもずっと強い、だから・・・


如月さんが大剣を地面につけた。それを狙っていたかのように、背後にあのルシアニウムが現れる。刃を振り上げる。背中をまっすぐ捉える。


それを見た瞬間、体が動いていた。頭から否定していたことが、体は、心は、反射的に動いた。


ああ、なんだろうこれ。僕は冷静な判断ができていないのだろうか。いつもコソコソと逃げ回っていた人間が、一体何を。


右手に握った小型銃。銃口をまともにルシアニウムに向けても、その甲殻を貫くことはできない。だからこの武器は牽制用にしか使われない。だが、


正確に、ルシアニウムが握る刀剣に当てる。青白色の弾丸は、ルシアニウムの武器を捉え、弾いた。それに驚いたのか、空間が歪んだ。ルシアニウムの姿が消える。


「・・・・・・君、なんで」


僕はそれを無視した。戦闘に集中しなくちゃならないというのもあるのだけど、というか彼女に目を合わせる勇気がなかった。一体何を話せばいいのだろうか。だって・・・・・・?なんで僕は彼女に対して後ろめたい感情を持っているんだ?


目の端で、空間が歪んだ。そこにすかさず銃撃をする。当たらない。歪みは消えている。背後で水の音がした。振り向きざまに銃撃をする。これも外れる。目で捉えられていない。いや捉えられるはずがない。如月さんが攻撃を当てられないのだから、僕が当てられるわけがない。


なら、やることは一つしかない。銃弾をばらまくように乱射する。装填速度は、使用者が送り込む一種のエネルギー体の密度に比例する。エネルギー体の密度は、個人に固有の一定の値。だから、その割合をどこに割くかという話。装填速度に割り振れば、弾速と威力が破壊力が落ちる。どうせこの銃撃に威力なんていらないものだ。だから全力で装填速度と弾速に重点を当てる。


歪みが起こった周囲に、やたらと乱射する。当たってもダメージなどほとんどない。だが、あのルシアニウムは当たらない。よくわからないけど、というか理解不能なのだが、空間を飛んでいると考えたほうがいい。なら、当たらない攻撃の威力など、分かるわけがない。


そして最初の刀身を弾いた攻撃はほとんど威力に重点を置いた攻撃だ。多分あれでも敵の甲殻を削れるか不安でしかないが、それでも敵はあれに当たってはいけない、という認識を持ってくれたはず。


「如月さん、下がろう」


足をついて荒く息をする如月さんに声をかける。彼女が落とした大剣を拾う。ズシリと手にのしかかる。こんなものまともに振り回せるものじゃない。


大剣を引きずり、乱射を繰り返しながら、少しずつ下がる。如月さんからの返事がない。かろうじて僕についてきているような状態だ。


人の目は前にしかついていない。それは当たり前のことだ。だがそれはとてつもなく大きなハンデとなる。特に撤退するとき。敵を見つつ、撤退方向を見ることができれば一体どれほど嬉しいことか。


加えてここは河川敷。砂利のような石が転がり、雑草の背丈も高い。いつ転倒するかもわからない。


建物の近くまで来た。背後にあのルシアニウムが現れる気配はない。ずっと目の前で、歪みを作り現れては消え、現れては消えを繰り返している。意味がわからない。倒したいのならすぐさま後ろに現れて首を書ききればいいものを。反撃されるのを警戒しているのか。それともそうできない理由でもあるのか。


もしかしたら、あの移動ができる範囲はあらかじめ限られているとか。可能性を挙げだしたらきりがない。それに答え合わせの時間も余裕もない。

逃げるしかない。建物の中に隠れるんだ。だがそれだけなら、すぐに追撃される。


大剣に自分の体に残存するエネルギー体を集合させる。大剣が青白く光り始めた。戦いによってつけられた割れ目から、パキパキと、内部が壊れて行く音が漏れる。限界ギリギリまで、大剣にエネルギーを加えて行く。銃の乱射をやめる。そして青白色の輝きが一層強い大剣を、ルシアニウムがいるであろう場所へ投げた。


R.I.Rデバイスの武器とは、エネルギー体そのもの。その青白い光から分かる通り、とんでもないエネルギーを内蔵している。そしてエネルギー準位が高いということは、それだけ不安定であるということ。限界まで内部エネルギーを高められた大剣は、ほんのちょっとの衝撃だけで、


大剣に向かって、銃を撃つ。その瞬間、太陽と同じくらいまばゆい光が発せられ、周囲を吹き飛ばした。


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