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青色はぐれ星  作者: Full moon
第1章
12/21

第十話 デートと追憶





佐藤はかなり賢い。


成績はトップクラス。スポーツ万能。実技の授業でも、彼とチームを組めばほぼ2位は確定と言っても過言ではない。オールマイティに全ての武器を使いこなし、状況に応じて、種々の武器を使い分ける。ちなみに一位は矢部と堀田のコンビ。

だが、多分人間関係が苦手なようだ。僕みたいな内気なタイプの苦手ではない。積極的な性格をしていながら人間関係が苦手のようだ。


「それじゃあさよなら」

佐藤は手を振る。その笑顔を見ると男でさえ惚れると言われているのだ、クラスの女子にとっては、至福のひととき、ああ、このために学校に来ているんだなぁって顔の人も少なくない。


佐藤が出てからタイミングをずらして教室から出る。佐藤と一緒に出たら、なんだあいつ、あんなのいらなくね?と言われそうだったからだ。


「どこ行くの?」

しかし、ついてくるやつが一人。

「こっちの方向、小鳥の家じゃないよね?何しに行くの?」

背後から声をかけてくる如月さん。彼女の態度は、あの時からほとんど変わらなかった。

「別に何も」

足早にさりながら言う。

「ねぇちょっと無視しないでよ!」

たったったった!と走ってくる。スカートがひらめくが、男子生徒が渇望するようなことにはならない。彼女のスカートの丈はかなり長い。

「優一くん、最近冷たい」

頬を膨らませる。でも不満そうではあったが、楽しくないというわけではないようだった。


僕としては、多分そんなに変化はないと思う。

でも、彼女は聞くようになったのだ。僕のことを。

今までの彼女は、優一くんならそうするよね、優一くんならこうするに決まってる、とわかった様子で話していた。でも、今は違う。彼女なりに、僕のことを、鈴支那優一について知ろうとしてくれているのがわかる。それが嬉しくないといえば、真っ赤な嘘になる。でもそれを表に出すのもなんだか恥ずかしい。結局どっちもできずに、無視するという行動に走っている。


「佐藤と会うだけだから、別に如月さんが来なくてもいいですよ」

「いや、私も佐藤くんとは話したいし!」

絶対嘘だろ、と思ったけどそう正すこともできない。それが嘘なら、彼女の本当はなんなのか、という話になる。そしてそれはそれを自分で言うことは、ものすごく自惚れているような気がしてしょうがない。


道を歩いていると、紫外線注意!と言う看板が目に入った。古い看板だ。

今から何百年か前、オゾンホールが急速に拡大した。北緯、南緯、それぞれ30度付近まで、オゾン層がほぼゼロの領域が広がった。

その結果、夏に外出するというのは夢の世界になった。海で遊ぶというのも、汗をかきながら、外でボールを追いかけるという光景を見ることもなくなった。


政府ではオゾン層を復活させるためのプロジェクトが考えられた。オゾン層とは化学式O3すなわちそこらじゅうの酸素があれば生成できるのだ。もちろんかなりのエネルギーを加えなければならない。三員環の非常にエネルギー準位の高いオゾンは猛毒でもある。


政府は空に装置を打ち上げ、空中でオゾンを生産し始めた。


しかしそれは失敗した。オゾン層を破壊したのはフロンと総称される物質。フロンはClを含み、一つの分子が数百万個のオゾン分子を破壊する。そして大気にはすでに高濃度のフロンが満ちていたのだ。いくらオゾンを生産しても、その側から破壊されて行く。


科学者はしっかりと試算していたのだ。フロンを人間が作った装置なんかで生産しても、フロンの破壊速度には追いつけないと。しかしそんなこと御構い無しに、政府は多大な資金を援助して、作らせた。


政府が威信をかけて作り上げたオゾン層再生計画。今更、無理でした、ということを言えるはずもなく、今も莫大な資金を使って、オゾン層は作られては破壊されている。



「おっす、優一、それに・・・・・・き、ききききききききききききききききき如月さん!!!」

佐藤は背筋がピシッとのびた。直立不動で、ガタガタで、今にも崩れ落ちてしまいそう。如月さんは彼女で、目をパチクリさせてから、

「本当に佐藤くんと会うんだ。なんかこう・・・風俗みたいなところに行くんかなと思ってた」

「・・・いける度胸があると思う?」

「ない」

即答されるあたりでもちょっとがっくりくる。

「きききききききききききき如月さんは!何処へお出かけなのでしょうか」

学校とは全然違う口調。教室なら彼女の前でもかなり平然と喋れていたはずだ。

そんな姿を見た如月さんは、さらに瞬きを数回し、

「えーっと、本当に佐藤くん?」

上目遣いで近づいてくる。顔を真っ赤にした佐藤は腕で目を隠してたじたじと後ずさる。見ていて微笑ましい光景だ。佐藤はかっこいい。そして如月さんは可愛らしい。多分こういうのをお似合いなカップルというのだろうな、と思った。

「は、はははははははははひいいいいいいいいい」

こいつこんなポンコツだったっけ。好きな人の前では緊張してしまう気持ちはよくわかる。しかし、いくらオフモードのこいつを見ているからと言って、この豹変ぶりはちょっとドン引きした。


「・・・あはっ、面白いね」

くすくすと笑う如月さん。佐藤は、あれ?と言った感じで腕を下ろす。顔はまだまだ真っ赤だ。

「佐藤くんってちょっとムカつくやつなのかなぁって教室では思ってたんだけど、そんなことないのね。とっても可愛い」

「か、可愛い?」

佐藤の間の抜けた声。可愛いと言われて喜ぶ男子はあまりいない。しかし女子にとって可愛いは褒め言葉。こういうところに男女のギャップがあるんだなと思う。

「そ、私可愛いものが好きだから。それで、二人は何しに来たの?」

「え、そ、それは・・・」

僕の方を見る佐藤。こっちに助け舟を求められても何もできない。僕が目をそらすと、佐藤は観念したように息を吐いた。

「そ、相談です。優一に聞きたいことがあって・・・」

結局僕に振るのかよ、と言ったツッコミは心の中に押さえ込んだ。

「ふーん。どんな内容?」

「え〜と、それは・・・」

言えるわけがないだろう。当の本人の目の前で、あなたを攻略するための話をしていたのです、なんて。そして、佐藤曰く、如月さんが好きなのは僕らしい。その僕に相談しているのもどういう神経かわからないが、そんなライバルの前で言える発言でもない。


だが、佐藤は予想の斜め上を行った。

「・・・如月未来さん・・・と、付き合えるにはどうすればいいのかなって・・・・」

いやいやいやいやいや待てって!と彼の顔をガン見した。彼は真剣そのものの表情で、まっすぐに如月さんを見て、言い切った。

ものすごい度胸だと思った。本人からすれば、告白されたも同然のような感じなのに。

すると、如月さんはちょっと困ったような笑顔になった。


「あ〜、そのね、嬉しいんだよ?でも、その・・・私の方もそこにいる優一くんに対して同じようなこと言ってるんだ。つまり、えーと、ごめんなさい?」

こっちをチラッとだけ見た。好きだとか、そういうものをストレートに伝える瞳ではない。気にかける瞳だ。後ろめたい気持ちがある時の瞳。そんな気がする。


「そうか・・・いや、それなら、これからも友達でいてくれると助かるかな・・・って」

「うん、もちろん。ま、あなたと友達になった覚えはないんだけど、これからなら全然大丈夫!」

その発言は結構佐藤の胸をえぐったようだが、それに如月さんが気づく様子もない。二人はお互いに握手した。佐藤は泣きそうだった。如月さんは、申し訳なさでいっぱいの顔だった。


如月さんは惰性で僕のことを好きだと言っている、そんな気がしてならなかった。彼女は僕の、僕の背後にいる何かに対して恋愛感情を持っていた。でもそれはもう表に出ていなくて、僕は僕自身である、と彼女が認識してから、多分その感情は消えてしまっている。それでも、彼女としては、好きだと言ってしまった手前、それをすぐさま撤回することなどできずに、悩んでいる。実際佐藤の方と先に出会っていたら佐藤のことを好きなっていたと思う。

罪悪感があるのは僕の方だ。


「佐藤、せっかく如月さんと一緒に来たんだから、市街地にでも行かないか?確か今日バザーがあったはず。そこでも行こう」

それの償いに少しでもなれるように、僕は提案した。

「でも・・・」

それを遠慮しようとしたのは如月さんだった。彼女の強引な性格ばかり見て来たせいか、こう言った感じの彼女はかなり新鮮に見える。

「お、おういいな!如月さん!もし予定が空いていればご一緒にどうですか?」

佐藤も如月さんに問う。押せばついて来てくれそう。その見解の一致は正しかった。







かつてドイツという国があった。ヨーロッパの中核を担い。圧倒的な工業力を持っていた。そこに持ち込まれたのはORBと呼ばれたトランク。紫煙を撒き散らす科学者は言う。


これは世界の鍵だ。と


ORBからはUSBが伸びていた。それをパソコンに繋げ、と科学者は命令した。

繋ぐ。インストールが開始される。Start. open file.


革命を起こした。それは地下世界でのみ起こり、そして滅びた技術力。圧倒的で世界を変革させる技術を開発しながらも、科学者は日の目を見ることはなかった。それの価値を、ドイツの人間は理解しなかった。

だからドイツは滅んだ。もしそのファイルを使っていれば、おそらく、世界をドイツが支配することなど容易いはずなのに。


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