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絶望

通路を抜けると、そこは巨大な地下空間だった。そこには捕らえられた人々が大勢働かされていた。牢屋の全てを見てもお兄ちゃんがいなかったということは、ここにいる。

「うっ!っくそ!」

「ステラ姉!」

ステラ姉が左目を抑えて苦しんでいた。時間が無い。幹部、そしてその部下たちが次々とやってきた。ここにいる人たちを巻き込む訳には行かない。通路を出て少し先の崖に降り立ち、奴らを迎えた。

「もう追い詰めたわよ。このゴミクズども。」

「どっちがゴミクズよ!」

「アデラ、グレイヴ、援護射撃を頼む。」

そう言うとステラ姉はグレイヴから飛び降りてナイフを構えた。

「わかった。」

「ちょうどいいや、今腹ぺこなんだ。どっちも食い殺してやる。」

フロルが狼の姿になって走って襲ってきた。ステラ姉がその進行方向を水魔法で凍らせて勢いを殺した。しかし、今度はルーシーが緑色に光る楔を大量に飛ばした。ステラ姉はすかさずナイフで防御し、防ぎきれないものはグレイヴがブレスで守った。すると、フロルがうちら目掛けて飛びかかってきた。グランツはフロルに尻尾を叩きつけ、うちは邪龍に向けてレトーラの矢を何発も打ち込んだ。

「あんたたちが何しにここへ来たのかは知らないけど、いいのー?大事な国民を巻き込みかねないのに戦っちゃって。」

「舐めるな。巻き込まないように戦うのは慣れている。」

「ふーん?じゃあ、これはどうかしら?」

ルーシーは杖を掲げると、奴隷が大勢いるところに向けて、黒魔術の光線を発射した。

「まずい!」

「うちが行く!グランツ!突き飛ばして!」

そう言ってうちはグランツから飛び降りた。

ちょっ!

グランツは慌てて尻尾を振ってうちを打った。そして奴隷に当たるギリギリのところで、うちは光線に直撃した。

「アデラ!!」

ステラ姉の叫び声が聞こえた。うちは地面に倒れていた。見ると、奴隷にされている人たちは無事だった。

「……よかった。」

よく見ると奴隷にされている人たちの様子がおかしかった。うちらになんの反応も示さず、ただ黙々と働かされ、目の色は真っ黒で、肌にもステラ姉と同じような黒い模様が走っていた。

「ふーん?あの子面白いライダーねぇ。」

「ルーシー!何してんのさ!あいつらは牢屋にいるやつらと違うんだよ!?」

「あぁ、せっかくの昼飯を消し飛ばそうとするなんてな。」

「ふん、あんたたちが役たたずなのが悪いのよ。」

「テルスに怒られてもしらないよー?」

「あんなやつの言うことなんか聞きたくないわ。」

幹部はまた言い合いを始めた。すると、グランツとグレイヴがうちの前に降り立つと、ステラ姉が飛び降りてうちの体を起こしてくれた。

「バカ野郎!!」

「うっ、ご、ごめんなさい。」

「勇敢だが、無謀だ。はぁ、無事でよかった……いや、もろに食らったのになんで無事なんだ?」

「あれ?そういえば。」

直撃した時、痛みを感じたのは当たった衝撃と落下した時だけだ。黒魔術の光線自体に痛みは無かった。

幹部たちが降りてきた。

「今考えている暇はない。立てるな?」

「もちろん!」

なんとか立ち上がると、軽く辺りを見回した。ここだとどう動いても奴隷の人を巻き込んでしまう。しかしその心配をよそに、ルーシーが透明なシールドのようなものを張った。何を企んでいるの?いや、幹部たちの言い合いを考えると、おそらくここの人たちが死ぬのは奴らにとってまずいことらしい。ある意味好都合か。

「気をつけろよ。ガーパスがいない。」

「ほんとだ。」

「グレイヴ、邪龍の相手を頼む!」

グレイヴは空へ羽ばたくと、邪龍を誘い出して一気に炎ブレスを吐いた。しかし、邪龍は幹部から無限に出てくる、埒が明かない。

「アデラ、お前はグランツと共にお兄さんを探せ!」

「で、でも!」

「さっさと救い出さないと2人諸共死ぬぞ!」

「……了解。」

ステラ姉はナイフを逆手持ちにすると、先手を取った。フロルは再び狼の姿に変えてうちに突っ込んできた。うちはグランツに飛び乗ると、間一髪でフロルの攻撃を躱した。

ステラ姉はルーシーとフロルの相手を、グレイヴは邪龍の相手をしていた。ガーパスは……?

うちはこの広い地下空間を見渡した。暴行をされた痕、ボロボロな服、目は虚ろになって働かされている彼らを見て、許せなかった。きっとこの中には家族と再開せず亡くなった人もいる。

いた!グランツあそこ!

わかった!

グランツは急降下して降り立つと、虚ろになって働かされているお兄ちゃんを引っ張った。

「お兄ちゃん!目を覚まして!」

何も反応しなかった。

「お兄ちゃん!お兄ちゃんってば!」

何回か頬をひっぱたいても無反応だった。

「お兄ちゃん……。」

すると、奥の方で何かが一瞬だけ通ったのが見えた。

グランツ、ちょっと一旦飛んで。

どうしたの?

何かいる……とても小さな生き物が、高速であちこちを行ったり来たりして、早すぎる。ライダーでも目で追うのが難しいなんて。

小さすぎるんだよ。

あれ……トビネズミ?なんで?いや、色がおかしい。あんなカーバンクルみたいな蛍光緑色のトビネズミは存在しないし、そもそも乾燥した地域に住む生き物よ。真逆の湿地林に来るなんてありえない。

うぅ……目が回りそう。

グランツ、あなたは目で追わないで。うちがどうにかするから。

多分、あいつはガーパス。フロルが狼の姿になった。なら、幹部は他の生き物に姿を変えることができるのね。多分それが、入る前に部下が言っていた転身術。一体奴は何をしているの?ガーパスなら、何をする?

すると、突然頭痛に襲われ、思わず頭を手で押えた。

アデラ、大丈夫?

え、えぇ……なにあれ。

トビネズミが走り回った後に、緑色のオーラのようなものが見えた。そのオーラはある地点毎に曲がり、角ばった輪のようなものを作り出していた。そしてその地点は、奴隷の人たちが何かを運んだ先の機械から出ていた。

グランツ、見える?

見えるって何が?

緑色のオーラよ。

そんなものないよ?

うそ、どういうこと?

突然トビネズミが立ち止まると、長い尻尾が一瞬うねった。すると、緑色のオーラが天井の中心に集まり、黒い槍が形成され、もの凄い速度で発射された。

「ステラ姉!!」

強い衝撃波で吹っ飛ばされ、何とか体勢を立て直す。

グランツ、大丈夫?

う、うん。

良かった……ステラ姉は?

砂埃が収まると、ステラ姉が立ち尽くしていた。いや、あの黒い槍が、肩から斜めに貫かれていた。すぐ降り立ち、ステラ姉のそばに立った。

「ステラ……姉。」

「……ふっ、うっ……く、そ。急に、槍が……どこから……。」

普通ならライダーでさえ死んでもおかしくない状態だった。発射口を見ると、斜めに角度が傾いていた。発射する瞬間に照準がステラ姉に向いたのか。早すぎて見えなかった。

「嘘でしょ?なんで生きてんのよ!フルパワーでやったんじゃないの!?」

トビネズミがガーパスの姿に戻った。

「これは想定外。普通なら即死なんだけどね?」

「まぁあとはトドメを刺すだけだろ。あのガキは雑魚だ、後回しにしてもすぐ終わる。」

まずい、逃げないと。でも……お兄ちゃん……いや、今はお兄ちゃんを助ける余裕がない。

「ステラ姉……。」

「……それ。」

「え?」

「武器……寄越せ……持っ、てるだろ。」

ハッとしてうちは鞄から見えていたステラ姉の武器と思わしき筒を取り出して渡した。すると、槍の下の方を掴んで、地面から引っこ抜いた。

「え、ちょっと、無茶はやめてよ!」

「……もう役に立たない体だ。時間を稼ぐ!逃げろ……お兄さんを連れて。」

ステラ姉は一息で喋ると、ふらつきながら武器を振るうと、筒からグレイヴのエネルギーが溢れ、長い武器になった。刀身はグレイヴの尻尾そのもののようだった。そして、グレイヴと目交わしすると、グレイヴはステラ姉の隣に降り立った。

「まずいわね……あんたたち!本気でかかるのよ!」

そして、目にも止まらぬ速さで幹部に突っ込んだ。

「なんでこんな動けるのよ!怪物め!」

こんなステラ姉を見るのは初めてだった。満身創痍だと言うのに、幹部を圧倒していた。うちはただ見ていることしかできなかった。

アデラ……。

ステラ姉を置いていくことなんてできない。無理にでも連れ帰らないと……でも早すぎて追えない。

ステラ姉がフロルの腹を石附で打ち、吹っ飛ばした。フロルが壁に当たった衝撃で岩が崩れて、行動不能にした。そして続いてルーシーも確実に追い詰めていた。ガーパスは一気に何十頭もの邪龍を生み出すが、グレイヴがそれを阻止する。お互いがお互いを守りながら戦っていた。そして気づけばルーシーを倒し、踏みつけるとトドメを刺そうと武器を振り下ろした。その時だった。

「ステラ姉?」

ステラ姉が固まった。助けるのは今しかない!そう思い、グランツに合図して駆け出した。その途端、グレイヴの尻尾が目の前を掠めた。

「グレイヴ?」

グレイヴがじっとうちを睨んでいた。その目は、緑色の目に変わっていた。

「馬鹿なヤツ。あんなに散々黒魔術を溜め込んでおいて、高出力の黒魔術に耐えられるわけないでしょ?」

ルーシーがステラ姉を蹴り飛ばした。ステラ姉がよろめくと、横顔が見えた。ステラ姉もグレイヴと同じ、緑色の目になっていた。

「あのガキを殺しなさい。」

ルーシーが持つ杖の石が光ると、ステラ姉が一瞬呻き声を出した。ルーシーはその杖をうちに向けると、ステラ姉もうちを見て、武器を構えて狙いを定めた。やばい。直感でそう思った。しかし、そう思った時には遅く、いつの間にかステラ姉が目の前に来ていた。

「ステラ姉待って!」

そんな声も届かず、ステラ姉はうちに武器を振り下ろした。

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