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潜入

お互いが見えないから、透明な何かに乗ってるのなんだか違和感。

城内は迷路のようになっていた。地下だからなのか、牢屋が沢山あった。被害者の苦痛の声や腐った肉のような悪臭、気が滅入る程の恐怖心が四方八方から感じた。お兄ちゃんもこんな扱いを受けていると思うと吐き気がする。お願い、生きてて。

一つ一つ牢屋の中を確認した。正直、見てられない酷い有様だった。何度も何度も吐き気がし、目眩がした。ここにいる人たち全員を助けられない自分に苛立ったし、悔しかった。心を無にして、お兄ちゃんに集中しなければ。それにしても……ここ、見覚えがある気がする……この既視感はなに?

ねぇ、ステラとグレイヴが合流したって。

分かった。

正面のエリアに入ると、そこは牢屋では無く、武器庫だった。牢屋以上に見張りがいたため、慎重に武器庫内に入った。

ここにはいないよ?

え、えぇ。でもあれって、ステラ姉の武器じゃない?

ステラ姉のお父さんの形見と同じ、鉄っぽい筒のような物。中心には龍の意匠が彫られているから、きっとあれだ。音をたてないよう慎重に武器を手に取った。その途端、警報が鳴り響いた。

『な、なんだぁ?』

『誰だ!誰かいるのか!?』

『誰もいなくね?』

『おかしい!どうなってやがる!』

うちらは音を立てないよう、そして見張りの体に触れないよう慎重に武器庫を出た。

ふー、危ないところだった。

再びいくつものエリアを漁って、一つ一つ牢屋を確認する。牢屋の数が多すぎる。一体どれだけの人を捕らえてきたのよ。

と、また別のエリアに入ろうとしたところで、グランツの姿が見え始めているのが見えた。まずい効果が切れる。すぐにまた使わないと。

「おい、ライダーだ!ライダーがいるぞ!」

「あはは……どうも。」

グランツ、光。

グランツの尻尾先が閃光を放った。一瞬の隙に小さい隙間に潜り込んで隠れた。結晶を取り出し、さっそく使おうとすると、さっき見つかったエリアから強い黒魔術の気配を感じ、恐る恐る覗き込む。そこにいたのは他の奴らよりも派手な服装をし、奇妙な杖を持った女がいた。多分あれがルーシー。

『ふーん。生き残りのライダーと言ったら、あの女ぐらいしか思いつかないけど、最近新しいガキがライダーになったんでしょ?』

『はい。突然閃光を放ってどこかへ消えてしまいました。』

『にしても、まさか侵入されるとはねぇ〜。何しに来たのかしら?』

まずい。でもステラ姉は姿を消してる。

『ガーパスにこの階層全域に魔消の術をかけるよう言いなさい。見つけ次第確実に始末して、首を持ってくるのよ。』

『御意。』

魔消の術……それが魔法の効果を打ち消す黒魔術ってことね。これはかなりまずいかもしれない。

しばらくして、緑色に光る波紋が広がった。でも、少し頭がビリビリするだけで何も感じなかった。すると、パキッと音がした。見ると、結晶にヒビが入り始めていた。

ねぇアデラ、頭が痛いよ。グレイヴとも意思疎通できなくなっちゃった。

えぇ?うちは平気なんだけどな。

『ルーシー様!北の方にライダーが!フロル様とガーパス様が既に戦闘中ですが、手に負えません!』

『ちっ、武器を取り上げたってのに、どうせガーパスは動いてないんでしょ。私も行くわ。』

ルーシーは煙と共に消滅した。行ったみたいだ。いつの間にか緑の波紋はもう来ていなかった。まずい。すごくまずい。

アデラ、グレイヴがね、ステラがめちゃくちゃ怒ってるって。

今そっちの状況は!?

ちょっと待って…………ガーパスは動いてなくて、フロルと多数の厭世部隊と戦闘中。あと、ルーシーが合流してまずいって。

分かった。グランツ、ステラ姉たちのところに向かって!

うーん、場所を聞いてみたけど、来るなって。

じゃあ探すわよ!

うちは再び結晶を使って姿を消した。すると、結晶は割れて消滅した。最後の1回まで減らされたのか。

通りかかる牢屋を確認しながら北へ向かった。すると、大きな音が聞こえてきた。音を頼りに向かうと、広場のようなところに出た。そこはどうやら全ての通路に繋がっているようだ。そこでステラ姉たちは戦っていた。

「ガーパス!あんたいい加減動きなさいよ!城はあんたが管理してるんだから!」

「すぐ終わったらつまらないじゃないか。もう少しだけ見せてよ。邪龍は放ってるからさ。」

邪龍の数を減らすべく、レトーラから貰った矢を撃った。邪龍の体にある緑色の紋が薄くなり、小さくなった。次々と撃ち込んでいく。

「うん?邪龍が変だな。誰かいる?」

「あぁいるぜ。」

そう言うとフロルがうち目掛けて武器を投げ飛ばした。間一髪で避けられたが、フロルはまっすぐうちに向かってきた。すると、突然狼の姿に変わって、猛スピードで走ってきた。

グランツ避けて!

グランツがさっと飛び退き、尻尾先をフロルに打った。

「ちっ、くそが。ガーパスてめぇいい加減にしろ!」

「は!君が見えないものに噛み付いてるのめちゃくちゃ面白いからそのままでいいよ!それに、ルーシーもこの力使えるだろ?」

「幹部じゃなかったらおもちゃにしているところだわ。」

ルーシーが強く杖を叩きつけた。また緑の波紋が広がる。うちとグランツの体が見えてくる。ステラ姉は頭を抑えて膝をついていた。左目の黒い筋が侵入した時よりもさらに広がり、もう顔の半分はそれで覆い尽くされていた。その隙を奴らの部下は見逃さず、ステラ姉に向かっていく。そこをグレイヴが阻止しようと翼や前足、尻尾で攻撃するが、さらにそれを邪龍が攻撃していた。うちらはステラ姉に近づき、ナイフも駆使して一緒に戦った。

「グレイヴ!……思いっきり地面に炎を吐け!」

「待って!お兄ちゃんが!」

「お前たちが行った方向以外は全部確認した!」

「でも、捕まってる人たちはどうなるの?」

「……助けられない。」

「待ってよ!まだいい方法が!」

「救出できてもすぐに死ぬ。ここにいる被害者は黒魔術で無理矢理生かされてる。黒魔術の供給が絶たれれば即死だ。」

確かに、牢屋の中にいる人のほとんどが、体が真っ二つにされていたり、頭が無かったり、皮が全部剥がされていたりと、もう死んでもおかしくない人だらけだった。でも生きていた。

「……グレイヴ。」

グレイヴが立ち上がり、全身の鱗の隙間がが青紫色に発光すると、地面に思いっきり青紫色の炎を吐き出した。炎はまるで滝のように流れ、周りに一気に広がっていく。地上にいる幹部やその部下たちは退避を余儀なくされ、グレイヴが翼を定期的に羽ばたくと炎が上まで広まり、宙にいる邪龍が徐々に弱まって主の中へと消えていく。ライダーであるがゆえに炎の熱さを感じず、炎の海にさらされているのは、なんだか変な気分だった。

「アデラ、ドラゴンに乗ったらグランツで閃光を放ってくれ。そしたら私に着いてこい。」

「了解。」

ステラ姉がグレイヴに乗り、うちもグランツに飛び乗ると、閃光を放った。と同時にグレイヴが炎を噴くのを辞め、駆け出す。うちも後を追う。走りながら周りの牢屋を見た。捕まっていた人たちに繋がれていた鎖は溶け、皆焼け死んでいた。

「私だって……殺したくなかったさ。」

おそらくうちの感情を読みとったステラ姉が呟いた。

「……うん。」

幹部たちがすぐ後ろを追ってきていた。すると、前方に洞窟のような入口が見えた。

「こっちだ!」

「了解!」

洞窟に入ると、グレイヴが飛び立った。グランツも飛び立つ。入口からでは分からなかったが、その洞窟は円形で、幅はグレイヴの何倍もの広さだった。そして、洞窟というよりかは、通路だった。

しばらく飛び続けると、行き止まりに当たってしまった。

「くそっ!やられた!まずい。」

「道を間違えたの?」

「いや、ガーパスが城の作りを変えたんだ。」

「ご名答。」

サッと後ろを振り向くと、テルスを除く幹部3人と、大勢の部下たち、邪龍が立ち塞がった。

「すごくない!?100年前と比べてもっと複雑なことができるようになったんだよ!」

声色だけなら、優しそうで陽気な感じがする……が、その中に僅かに滲み出る狂気。

「あんたはとっとと働きなさい!」

「十分働いてるだろ?……ん?」

ガーパスがちらりとうちの方を見たかと思えば、興味津々でうちをじっと見つめた。奴から興奮が沸き起こってくるのを感じた。

「な、何よ。」

「きみ……歳はいくつ?」

「お前に話すことは何もない。」

ステラ姉が割って言った。

「今ぼくはステラに話してないよ。きみのデータはもう十分に取ったからね。もう用済み、あとは死んでもらうだけさ。」

「ちっ、くそったれのゲス外道が。」

ルーシーとフロルが攻撃しようとした。しかし、ガーパスが軽く指を曲げると、2人の幹部だけ突然消えた。

「でも、あと1つ取りたいデータができたかな。で、何歳なの?」

まるで他の幹部など気にしていないかのように言った。

「あんたなんかに教えるわけないでしょ!だいたい、歳を知ったところで何になるって言うのよ!」

「言わないと思った。15だろ?」

……なんで知っているの?

「その反応は、正解かな?……あぁやっぱり!気配からして間違いない!でも、ちゃんと研究しなきゃ、間違えていたら大変だし……」

となにか手帳を見ながらブツブツと言っていた。すると、ステラ姉がうちを見た。その意図を理解すると、弓を構えた。そしてステラ姉がサッとナイフを構えながらガーパスに突っ込んだ。しかし、突然ガーパスが消えた。

「なっ!」

「危ないじゃないか!」

今!現れたところを矢で射抜く。しかし、また消えて回避された。いや、消えたと言うよりかは、外した?だがそこにいる……そうか、空間が歪んでいるから、そこにいるように見えるのか。

「ぼくの仮説が正しければ、少女ライダーの方、きみの名前はイーレイのはずなんだよね。」

「……は?」

「ステラ姉?」

なんだ?ステラ姉から酷い動揺が。

「そんなはずは……」

なに?どういうこと?なんの話?イーレイって誰?うちのこと?うちは、アデラよ。物心着いた時からそう呼ばれて生きてきた。

『お前を絶対に守る……』

誰の声?掠れてて分からない……記憶?どこの?いつ?

「グレイヴ!!」

ステラ姉の大声にハッとした。グレイヴが思いっきり奴らに向かって炎を吹いた。

「あーもう!いいところだったのに!」

すると、行き止まりだったはずの場所は、道が開いていた。空間が元に戻ったのか。

「行くぞ!」

「わ、わかった!」

グランツもグレイヴも、素早く翼を羽ばたかせて一気に距離を話した。

「このくそガーパスが!さっさとトドメ刺さないから逃げられたでしょ!?」

「ごめんごめん。」

音がよく届くのかライダーだからなのか、奴らの言い合いが聞こえた。空間が戻った影響で他の2人も元に戻ってきたのか。少し進むと、前方に明かりが見えた。

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