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悪役令嬢は病弱令嬢 王子様は悪役令嬢を囲いたい  作者: 白まゆら


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レオドラン視点 4

「レオン様!」

「リリ!」

 トテトテトテトテ。


 フェード学園、文化祭二日目。

 一日目を無事に終えた翌日、予定通りリリが来訪するので、待ち合わせに指定していた学園の裏門、普段は学園に出入りする業者が使う、小さな門。

 ひっそりとしたその場所は、リリが到着した途端、明るい日差しが照りだした。

 俺は両腕を広げてリリを待つ。

 トテトテトテトテ。

 ポスッ。

 やっと俺の腕の中に顔を埋めたリリは、ハァハァと呼吸を整えながら顔を上げ、花が綻ぶような笑顔を向けた。

 今のリリは淡いピンクのワンピースドレス。襟ぐりは白のレースであしらわれており、腰のリボンは赤と白のレースの二重になっている。シンプルなのに華やかさがあり、ああ、俺の天使は今日も可愛い。

「お待たせして申し訳ありません」

「時間通りだ。気にする事はない。それよりも走って大丈夫だったのか? 辛くはないか?」

「フフ、レオン様のお蔭で私は元気ですよ。ただ体力がなくて。少し鍛えないといけませんね」

「普通の令嬢は、体力なくて当たり前だよ」

「……でもレオン様のおそばにいるには、ご公務もいっぱいしないといけないし、やっぱり体力は必要です」

「公務の事は何も気にしなくていいけれど、俺のそばにいる為に頑張ってくれるの?」

「はい、レオン様のおそばにいたいから」

 そう言って再び胸に顔を埋めてくる殺人的可愛さ。もう俺をどうしたいんだろう。

「あ、あ~、ゴホン」

 出た! いつものお邪魔虫ルー。

 俺はしぶしぶリリから少し離れて(でも腰に回した手はどけない)ルーを見た。

「分かってるよ。時間がないって言いたいんだろう。すぐに回ろう。リリ、行ける?」

「はい、楽しみです」

 俺とリリ、ルーとミリアル嬢、リリの侍女一人と護衛騎士三人を引き連れて、俺達は校舎内に入っていった。

 一気にざわつく校内。

 まあ、予想はついていたので、ここは通常運転、スルーで。ただ、リリはこんな雰囲気は始めただろうから、エスコートしながら注意深く探る。

 チラリと見ると、好奇心いっぱいに目を輝かせたリリの姿が目に映る。高位貴族らしくすましてはいるが、薔薇色の頬は隠せない。

 その姿が何とも微笑ましくて、そして校内の雰囲気を軽くスルー出来ている姿に、俺は安堵の息を吐く。思わず笑顔になると、隣でルーとミリアル嬢がこそこそと囁き合ったいる。

『最近分かったんだけれど、リリって意外と天然なんだよね』

『今のこれもスルーしているというよりは、本当にこの状況に気付いていないと……』

『正解』

『……可愛いですね』

『……うん、可愛いよね』

 そうか、気付いていないのか。こんなにも注目を浴びているのに……。

「レオン様、レオン様。あの、あれは何ですか?」

 やや興奮した状態で、俺の服の袖を掴むリリ。

「うん、気になる? 行ってみるかい?」

「はい!」

 良い子の返事をするリリ。うん、可愛い。この顔が曇らないなら何だっていいか。

 リリが気になると言った店に近づくと、店員係の男子生徒が五名固まった。

 顔を真っ赤にした彼らにリリがたずねる。

「これは何ですか?」

 くるり!

 上目遣いのリリに、一人が慌てて後ろを向く。

 ……どうやら鼻血を出したようだ。貴族子息としては、絶対に見られたくない姿だろう。彼は慌ててその場を去って行く。その学生の一通りの行動に、唖然としたリリが他の者にたずねる。

「あの……」

「はひっ!」

 声が上擦る。

「い・いら・いら……いらっしゃいぃぃぃぃぃ」

 プルプル震える男子生徒に見かねて、俺が声をかける。

「ご苦労様。売れ行きはどうだ?」

「わわっ! で・殿下、いえ、生徒会長。ま・まずまずですぅ」

 どうやらリリの美少女ぶりに目を奪われて、俺の存在まで気付いていなかったようだ。

 リリに見惚れるのはむかつくが、これは中々新鮮だな。

「ところで、これは何だ?」

「は・はい。こ・こ・これはお香です。ま・魔道具で作ってあります。はぁはぁ……良い匂い」

「て・天使……天使がいる……本物の天使だ」

 ……駄目だ、こいつら……。

 どうにか俺と会話しながらも、リリが気になってまともな思考が出来ていない。

 俺は後ろに控えている女子生徒に声をかけた。

「これは君達が作ったのかい?」

「は・はいぃ。そ・そうです。い・いえ、違います」

「……どっちなんだ……」

 今度は女子生徒が、顔を真っ赤にして固まった。

 他の店もこの調子でいかれると、ちょっと疲れるな。そう思っていると、隣でリリが興味深そうに商品の一つに指を指す。

「手に取ってみてもいいですか?」

「「「「はい、どうぞ!」」」」

 男子生徒が一斉に、品物をリリに差し出す。

 目を真ん丸にするリリに、俺は一つを手に取りリリの目前に持っていく。

「これなんか奇麗な意匠だね。香りはどう?」

 リリは俺の手の中の商品に、鼻を近づける。男子生徒はガッカリした表情で商品を下げた。

 そっと俺の腕を引いて顔を下げさせると、耳元で囁くリリ。

「確かに器は綺麗ではあるのですが……香りは、レオン様のくださる花の香りの方が好きです」

「!」

「レオン様の香りが一番好きです」

 はにかみながら、俺を見つめるリリは最高に可愛くて、場所も忘れて抱きつきたくなったが、後ろで「ごほん、ごほん」と咳払いするルーに、我に返された。危ない、危ない。

「……ありがとう。他も見て回るから、失礼するよ」

 俺はリリを連れて店を後にする。

 ぱたっ、ぱたっ、ぱたっ!

 後方で何人かが倒れたか? 店の方が騒がしい気がする。

 まあ、俺達が戻っても騒ぎが広がるだけだからな。

 その後も行く先々で顔を真っ赤にして固まったり、倒れたりする人々が続出。

 保健室、大丈夫かな? 一応この状態も念頭に入れた対応をしておいたから、問題はないと思うが。

 その間に生徒会メンバーが、婚約者を連れて代る代るについてきてくれる。その時に報告も受けているが、今のところは問題なさそうだ。

 リリも女性陣に会えて、満面の笑顔で話している。楽しんでくれている。良かった。いい思い出になりそうで。俺は心底安堵した。

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