女子
なんとか機嫌が収まった後、林冲になにが起こっているかを伝えた。
「なるほどな。そんなことになっていたのか」
「そうだ。だから、助けてくれないか?お前の槍が加われば、俺たちは更に強くなれる。曹操、こいつは騎馬隊を指揮させたらいいと思う」
「わかったわ」
「ふむ。そういう話なら仕方ないな。分かった。案内してくれ」
「頼りにしてるぞ、林冲。王進先生とお前以上の槍使いを、俺は見たことがない」
「ふん。任せろ」
勝利は、林冲に騎馬兵を任せようとしていた。連れて行こうとした時、待ったがかかった。
「…待ってください、勝利殿」
「どうした?趙雲」
「私とこいつで、一騎打ちをさせてくださいませんか?賊徒を相手にしていただけでは、腕が鈍っているかもしれません」
様子がおかしかった。そのようなこと、普段なら言い出さないはずだ。
「お?ひょっとしておぬし、嫉妬しておるのか?」
「姉上。いくら事実だからと言って、直球でそのようなことを言うのは怒らせるだけだと思うぞ」
趙雲の肩がぷるぷる震えて来た。
「違う!断じてそんなことはない!」
真っ赤になって否定している。
林冲の目がフッと厳しくなった。
「…勝利。お前、また女の子を誑かしているらしいな。昔から、お前は…!女子の気持ちをなにも考えず!」
「なんで俺が怒られてるんだ!?」
「そうか、勝利の癖は昔からだったのか…」
「夏侯淵!?何を言ってるんだ!?」
「これは女の戦い…!負けられない」
林冲が、本物の槍を構えようとしたので、慌てて勝利は武器庫から稽古用の槍を持って来た。
「負けない…」
趙雲も稽古用の槍を構える。対峙が始まった。
「おいおいお前ら、これから仲間になるんだから、あんまり本気でやりすぎて、怪我させるなよ?」
「勝利殿。黙っててください」
「勝利。黙ってて」
「…はい」
趙雲が打ち込む。槍を軽々と扱い、無数の突きを繰り出した。
林冲は防御に徹し、うまく避けている。
徐々に、林冲が踏み込んで来た。趙雲もうまく間合いを測り、踏み込んできたぶん後ろに下がる。
槍の反対を地面にぶつけ、石飛礫が林冲に襲いかかった。不意をつかれた林冲は、後ろに跳び退り、石を払いのける。しかし、その頃には、趙雲は目の前に来ていた。
「もらった…!」
槍を突き出した。林冲は槍から手を離し、趙雲の槍が届く瞬間、体を捻り趙雲の槍を横から掴んだ。
「ばかな…!」
すぐに林冲が趙雲に掴みかかろうとする。趙雲は槍を捨て、なんとか後ろに下がった。
林冲は槍を拾い、趙雲に迫った。突き出した瞬間、趙雲は突き出された槍の上に飛び乗り、林冲の肩を踏み台に後方に飛んで、槍を拾った。お互いの槍が入れ替わった形だった。
「そこまで!」
曹操が、判定を下す。両社は、まだ槍の構えを解かない。
「互角だった。それでいいじゃない」
「曹操殿…!これは、女子の勝負なのです!」
「言っていることは分かるんだけどね…。相手は勝利よ?そんな勝負に意味はないわ。それよりも、みんなで協力して、女子を誑かす癖を矯正するしかないと思うの」
言った瞬間、二人が槍を手放した。
「それだ…!」
「え?どういうことだ?」
勝利は話についていけてない。
「趙雲。無礼を詫びよう。これからは仲良く、協力していこうじゃないか」
「林冲殿。こちらこそ、申し訳なかった。お互い協力して、馬を手なづけようではないか」
「馬…?騎馬隊ではなく、馬…?言い間違えか?」
「ねえ林冲。勝利が過去に誑かした話、今度聞かせてもらっていいかしら?」
「その話は、私も気になるぞ…!」
「ふむ。それは、私も気になるな」
「構いません。今度女子だけで、一緒に話しましょう。私が知ってる話だけでも、1日で語れるものではないですが…」
女子がワイワイと盛り上がっている。女子会とはこういうものなのか、と置いてけぼりにされた勝利は思った。




