黒幕
「そんな、左慈様が…」
遠くで見ていた陳宮が、悲鳴をあげてむかってくる。
「やっぱりお前か。みんなの幻術を解け。そうすれば、命は助けてやる」
「…時間がたてば、元に戻っていく。左慈様に強化された力で、操っていただけじゃ。しかし、まさかこんなことが…」
「お前らの目的はなんなんだ?」
「…さあ。左慈様に従っていただけにすぎない」
「なら、こいつに聞くしかないか」
気絶している左慈に、水をかぶせた。
「ぐ…」
「目を覚ましたか。目的はなんだ。俺はなぜここにいる?それを、答えてもらおう」
「…俺は、覇王の命令に従っていただけだ。…覇王は、この世界に飽きていた。もっと苛烈な、退屈しない世界を求めていた。…覇王は、異世界から人を呼び、自分と命をかけた戦いをできる相手を探していた。俺は、それを選別する一員だったにすぎない」
「何を言っている?覇王とは誰だ?」
「…運命。星は、それを教えてくれる。そして、その運命に支配された人間しかこの世にはいなかった。…覇王を除いて。運命に立ち向かえる、変えることのできる人間を、覇王は求めていた。…それがお前だ、勝利。覇王は、異世界から人間を何人も呼び出した。お前は、その一員にすぎない。…お前は、覇王と対等に戦えることができるかもしれない。…そろそろ覇王は現れる。…心しておくんだな」
左慈と陳宮の体が揺らいできた。
「俺は、覇王の下へいく。また、戦う時もあるだろう。…その時は、負けない。お前の師匠が誰かは知らないが、探せばいるんじゃないか?各世界で傑出した人間なら、きっとここに集まっているはずだ」
「覇王、か…。そいつの暇つぶしに、俺たちが付き合わされてるってわけだな」
「そういうことだ」
「…そいつの、名前は?」
「覇王・項羽」
言い終わったのと同時に、体が消えた。
「勝利殿…!その、どういうことかはわかりませんが…とりあえず、元に戻ったみんなと会いに行きましょう」
「…ああ、そうだな」
曹操のいるところへ向かった。
「…勝利。ありがとう」
もう操られてはいないのか、疲れたような感じで声をかけてくる。
「大丈夫だったか」
「ええ。なんとかね…。…勝利。これから、どうすれば良いと思う?」
「どうすればって?」
「理由はどうであれ、私たちは呉の兵士を殺したわ。この戦を終結させるには、私の首を差し出すしかないと思うわ」
言って、首を突き出してくる。
それを見た勝利は、自分の唇を曹操の唇と重ねた。
「…!?何をしてるのよ、バカっ!」
頭を殴られる。
「顔を突き出してきたからな。考えても見ろ。お前を殺したところで、利益がなにもない。そんなことはしない」
「…じゃあ、どうするの?」
顔を真っ赤にして聞いてくる。
「どうするもなにも、これから三国でおさめていくしかないだろ?全員が対等の立場で、天下を三分する。それが一番だ」
「…分かったわ。よろしく、お願いするわ」
「それよりも、新しい敵が出てきた。協力して立ち向かう為にも、それが最善だ」
勝利は、左慈との出来事を曹操に伝えた。
「そんなことが。分かったわ。軍を鍛えておくわ。」
「よろしく頼む。俺は、他の世界から来た人間を少し探してみる」
項羽が現れるまで、もうすぐ。悠長にしている時間はなかった。




