岐路
黄蓋に、合図の狼煙があげられた。
黄蓋が、元黄蓋兵数人に声をかける。
「火を放て!」
火を燃やした木を、船に投げた。
黄蓋がそれをすると、他の船に配属されていた元黄蓋兵も、同様に火を放つ。
黄蓋は、海に飛び込んだ。
「うまくいったのじゃな…勝利、孔明!」
燃え始める船団を見ながら、黄蓋は巻き込まれないように具足を捨て懸命に泳いだ。
「左慈様!火が、各船に仕掛けられています!」
「狼狽えるな!黄蓋が裏切っただけのことに過ぎない。戦は、我らの勝ちに傾き始めている!燃え広がる前に消化をして、前へ進め!」
命令を出してから30分。火は勢いを弱めるどころか、本船に届きかねない動きだった。
「くそ、鎖を通して火が燃え移ってくる…!しかし、なぜこうもはやい!?」
左慈は船の外に出た。肌で、原因を感じ取った。
「風の方向が!?」
左慈は、星を読むことができる。この戦、確実に勝つことを星は教えていた。
「自然の法則を変えてしまうなんてこと…できるのか!?」
左慈ははじめて、自分の理解できない力を目の当たりにし、恐怖を感じていた。
「やったな!孔明!」
祈祷で疲れ果てた孔明の体を支え、頭を撫でる。
「これで、この戦、俺たちの勝ちだ!」
「あ、ありがとうございます…!しかし、今でもわかりません!何で私がこんなことができたのか!」
「よくやった。本当に。孫権!騎兵を1000、貸してくれ!曹操軍の追撃をしてくる!」
孫権は、涙を浮かべていた。
「まだ勝ったわけじゃない。泣くのははやいぞ!」
「違うの…!黄蓋を少しでも疑ってしまったことが、恥ずかしくて…!」
孫権は、祈祷が成功した後、黄蓋と周瑜の苦肉の策のことを勝利から聞いていた。
「…仕方ないさ。まだ、君主になったばっかりだ。ここから、成長していけばいい」
孫権の前に立ち寄って、抱きしめた。
「…ねぇ、勝利。あなた、この戦が終われば曹操の軍師に戻るの?」
「そのつもりだったが…?」
「これからも、私を側で支えてくれないかしら。なんでも…する、から」
孫権の頭を小突く。
「女の子が、そういうことをいうな。まあ、帰ってきてから考えよう」
勝利は馬に跨り、追撃に向かった。




