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趨勢

憧れだった。

軍師にも関わらず、いつも最前線に立ち、味方を鼓舞し、敵を次々と蹴散らしていく。

楽進にとって、勝利は、雲の上の存在であり、近づけることなんてないと思っていた。

その勝利が、楽進を含めた仲良し三人組と一緒に行動をしている。それも、危険を伴う行動である。

誇らしかった。話しかけることは、まだ出来ないが、しかし、遠くから見るよりも、間近でみたほうがかっこよかった。

「楽進。于禁。李典。お前らの働きに期待している。一緒に頑張ろう」

唐突に声をかけられた。楽進は緊張で返事ができないどころか、意識をしばらく失ってしまった。


「ちょっと!?楽進ちゃん!?」

友達の李典がだきおこす。一瞬で、目を覚ますことができた。

「すみません、勝利殿。楽進は勝利殿に憧れており、緊張して倒れてしまったみたいです」

「ちょっと!于禁ちゃん!言わないでー!」

嫌われたらどうしよう。でも、自分の気持ちを伝えられたのは、少し嬉しかった。

「はは…まあ、一瞬にやってく仲間だ。ただの軍師だし、そんなに、緊張しなくていいぞ」

「ただの軍師なんてそんな!勝利様がいなければ、我々はここまで来れてなかったと思います!」

叫んだ。少し声が上ずってしまった。

「ありがとう。いい奴だな、お前」

頭を撫でられる。楽進は再び気を失った。


叩き起こされた。

「もうすぐ、烏巣だ。気をぬくな」

勝利様は真剣な表情をしていた。

「あの、お願いがあります、勝利殿」

「なんだ?」

「我々が活躍したら、褒めてください」

于禁がとんでもないことを言う。

「わかったわかった。なんでもしてやるよ」

ザワッ…

なんでもしてくれる。約束した。

なんとしても、活躍するしかない。

「ここが、罠の可能性もある。罠だった場合、俺たちは逃げるしかない。そうなったら、なるべく努力はするが、全員は守れないかもしれない。なんとか、生き延びてくれ」

「「「はいっ!」」」

もともと戦場で、危険な任務だった。死ぬことは、覚悟できていた。


音を立てないように近づいた。蔵がたくさんある。いきなり、勝利が飛び出していき、敵の見張りを音もなく殺した。

蔵を見る。兵糧が蓄えられていた。

「全軍!当たりだ!燃やしつくせ!」

三人組も動いた。敵を抑える部隊、燃やす部隊に別れて行動する。

敵も出てきた。とにかく切る。褒めてもらうことしか、楽進は考えてなかった。

大軍の兵糧を蓄えているだけあって、蔵は多かった。燃やすのに、かなりの時間がかかる。敵もこちらの動きを見て、援軍を送っている途中に違いない。早く決着をつけなければならなかった。

敵将が出てくる。手柄を他の人に取られるわけにはいかない。

「我が名は楽進!一騎打ちをする勇気はあるか!」

敵将が突っ込んでくる。楽進は飛ぶ。敵の背後に降りた時には、敵将の首と胴体は離れていた。

「敵将!討ち取ったり!」

味方から歓声が上がる。

辺りを見回す。快進撃といってよかったが、勝利の姿が見えなかった。

「…!?」

まさか。殺されたのは絶対にない。呂布と互角にやりあった人間なのだ。

敵将を倒したとこで、大勢は決した。楽進は、勝利を探しにいった。


烏巣の陣を隈なく探しても、いなかった。死体もなかった。

敵に連れてかれた。その可能性が、楽進の頭を埋め尽くした。

「そん…な…」

「楽進!どうした!」

于禁、李典が近づいてくる。

「勝利様が!いないの!」

状況を説明した。于禁も、李典も、顔が真っ青になっていった。

絶望に押しつぶされそうになった時、いきなり声が聞こえてきた。

「どうした、お前ら。この戦、俺たちの勝ちだぞ!」

「え…」

顔をあげると、勝利がいた。傷ひとつない、いつも通りの勝利だった。

三人とも、見てすぐに抱きついた。

「ちょ、三人はきつい…」

倒れた。構わなかった。無事を確かめるように、三人は勝利の体に触れている。

「どこいっていたんですか!心配したんですよ!」

「どこって…敵に援軍が来ることは想像できたから、援軍を止めていたんだ」

そう。勝利は戦場を三人に任せて、援軍の対応に回っていた。

「張郃が来なかったのが運が良かった。数が少なくても、なんとかなった」

「一言!言ってください!心配するんですから!」

「は、はいっ!ごめんなさい!」

あまりの気圧され方に、つい謝ってしまった。

「まあでも、良くやってくれた。三人とも、何が欲しいんだ?」

三人とも、特にうちあわせをしたわけではなかった。しかし、頼んだことは同じだった。


「「「これからも、お側に置いてください!」」」

誤解されてもよかった。誤解じゃないのだから。


勝利は、これからも将軍としてうまく使ってくれ!という意味で受け取ったのか、二つ返事で了承した。


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