覇道
袁紹陣へ逃げ帰る。
「ぐ…!なんなんだあいつは!」
「趙雲。勝利殿と戦ったのか。まあ、仕方あるまい。あの呂布より強いのだから」
「…呂布より、だと…?」
「ああ…しかし、これは暫く停滞が続きそうだな…」
膠着状態に陥っていた。袁紹軍も守りの隊形を敷いているし、寡兵の曹操軍では攻め込めない。
「…張飛、趙雲。こちらの兵糧が、どこに貯められているかわかるか…?」
「関羽、お前…」
趙雲は察したらしい。
「三つくらい候補の場所は教えられてるけど…警戒されてて、本命はどこなのかにゃ?」
耳をピーンと張ってるみたいになっている。
「まて!劉備殿の覇道の為にも、ここで曹操軍を破っておくべきではないのか?袁紹軍との方が、はるかにやりやすい」
「…姉上は、そのような覇道、望まないであろう」
「わかっておる。だからこそ、我らが手を汚すべきではないのか?」
意見が対立する。
「すまん、趙雲。お前が言っていることは分かるが、私はやはりそのようには動けない」
「な…!」
趙雲は槍を構えた。
「裏切るのか!!」
「違う。裏切りではない。姉上を裏切るなんてこと、ありえない。…ただ、同時に、勝利殿も、裏切りたくないのだ…!」
「な…、お主、惚れておるのか」
「だから、すまない…!邪魔すると言うのなら、お前と戦ってでも、私は…!」
青龍刀を構える。
「まって!関羽お姉ちゃんと趙雲が戦っても、誰も何も喜ばない!」
「すまない、張飛…」
睨み合う。お互い迂闊には踏み込めない。
同時に、踏み込もうとする。その時…
「ちょっと待って!!」
ピタリ。二人の動きが止まった。
「り、劉備お姉ちゃん…」
「姉上!」
「劉備殿!」
劉備が息を切らして走ってくる。
「兵糧のありかがわかったわ…!烏巣よ!」
「な…!」
「姉上!?姉上も、探していたのですか…!?」
「ええ。なんとか、曹操ちゃんの力になれることはないかと思って…。だから、無益な争いはやめなさい。良い?関羽ちゃん。勝手に争うのはダメ。それから、趙雲も。私の意思がどこにあるのか、本当に私がどう思ってるのか、勝手に決めつけないで」
「…すみませぬ」
「私は、曹操ちゃんを助ける。たとえ覇道の邪魔になろうとも。わかった?」
「…はい」
劉備の言葉には、不思議な魅力がある。二人とも、逆らう気になれなかった。




