人質
防御の陣。数ではるかに上回る袁紹軍が、その陣形を敷いてきた以上、戦は硬直状態となっていた。
曹操軍が1万足らず。たいして、袁紹は10万を超える兵を擁していた。
「さすがに大軍すぎる。迂闊に攻め込むことはできないな」
「このままだと、じわりじわりと追い詰められていくわ。何か方法はないかしら…」
「大軍の弱点は、兵糧。どこに蓄えているかさえわかれば、そこを奇襲にかけれるんだが…」
勝利は兵糧がどこにあるのか調べさせていたが、敵も相当気をつかっているらしく、いまだに見つけられていなかった。
更に、最悪な情報が舞い込んできた。
「劉備が監禁された!?」
敵の将軍、張郃が軍勢を率いて、劉備の居城へ攻め込み、劉備と張飛を捕縛したという情報だった。
劉備と張飛は、袁紹軍の中で囚われているらしい。
「そん…な…」
関羽が崩れ落ちる。
そして、袁紹から使者が。
「私は、袁紹軍の軍師、郭図と申します。こちらが袁紹様の書状です」
勝利は目を通した。
「劉備がこちらの手に渡った今、抵抗しても勝ち目はない。降伏せよ」
勝利は怒って、ビリビリに引き裂いた。
「決裂だ。俺たちは降伏しない。絶対にな」
「そうですか。後悔することになるでしょう。ではまた、戦場で」
帰っていく。
「関羽。お前、袁紹軍の劉備のところへいけ」
「そんな!何を言われます!」
「今のお前がいると、邪魔だ。恐らく本気で戦えないのは分かっているだろう。あるいは、劉備のことで脅されて裏切る可能性もある。いいから、いけ」
正論だった。
「…もし、姉上を救い出せたら、この戦が終わったら、また、仲良くしてもよろしいでしょうか」
「ああ。大丈夫だ。場所が離れても、心が繋がっていれば、俺たちは仲間だ。…それから、こないだの約束だ」
口を近づける。関羽の唇に、優しく自分の唇を重ねた。
「ありがとう、ございます。絶対に戻ってきます。それまで、どうかご無事で…」
馬に乗って、消えていった。
「恐らく、袁紹は張飛と関羽を使ってこちらに攻撃してくるでしょうね…。将の質が唯一の勝ち目だったのに、この戦、厳しくなりそうね…」
「ああ。だが、自分の軍に劉備達を抱えることは、袁紹にとっても喉元に刃を突きつけられるのと同じことにもなる。暫くは、硬直状態で力を削られていくだろうが、ここは我慢の時だな…」
時がくるのを、勝利は焦らずに待つことにした。




