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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第五章 色を失くした眼
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第77話




 それからのことである。いつも通りという訳にはいかなかったが、ゲームの中の深刻な事態に対して、彼は向き合うことにした。本当は逃げたい気持ちでいっぱいで、もう一つの世界で直面している「もう一つの現実」を受け入れられないでいた。だがそんな時に、彼を支えようと必死になって行動を起こそうとしていた彼女の姿を見て、彼は自分の素となる部分を彼女に話した。それが彼女にとってどれほど大きな意味を持っていたかは、自分たちでさえ意識することが出来ないものであった。しかし、彼女が長い間行動に移せなかった、伝えることの出来なかったことが、彼の口から彼女に向けて発せられた。彼にそんなつもりは無いだろう、と期待しながらも考えてもいなかった予想外の出来事に、彼女も驚きを隠せなかった。



 「アレン…もういいのか?」


 「…出来るだけ、戦う術を持ちたくはありません。ただ、自分は軍人である事実を曲げようとは、思っていません」


 「…そうか」



 サイクスにとって、アレンのその言葉が自分自身の力で、どうにかして仲間を助け出そうとしているのが、よく分かった。サイクスとしても彼のその気持ちに同情して出来るだけ協力してあげたい、と思っていたが立場上そうすることも出来なかった。アレンも、そのことはよく知っていた。だからこそ、自分の力と周りの状況を合わせて何とかしなくてはならない、と彼は思っていた。

 それが、今回のレーダー基地攻略作戦の、中身へと繋がる。



 「アレンには、再び偵察任務についてもらう。偵察…というよりは、潜入だろうけどな」


 「…でしょうね」


 「前回との最大の相違点は、我々はアレンの帰還を待たない、ということだ」



 サイクスが説明した作戦の内容。すぐにでも行われる帝国市民の避難行動に彼も混ざり、その足でレーダー基地まで行く。そして情報を得ながら司令部の在り処や爆撃などに使えるポイントを連絡し、それを実行する。ただし、ある時間を過ぎてもアレンからの連絡が無い時は、その時点で作戦を決行するというものであった。恐らく昔の彼であれば、このような無茶となる作戦には反対しただろう。しかし、今の彼には反対するような姿は全く見られなかった。個人的には、前の戦いで確かに勝利したとはいっても、味方に多くの犠牲を出したし、そのうえ混乱を招くようなこともした。自分にある仕事をしたい、と彼は思いつつも、彼女を助けるという自分にとって正しい選択を遂行しようとしていた。そういった複数の意味合いが重なった時、この偵察活動は彼にとってプラスになり得る。サイクスもそう踏んでいたのである。



 「無論、爆撃からは逃れてほしい。なんとかな」

 「これも、上の圧力ですか」

 「そんなところだ。しかも、ダイス長官直々のな」



 戦況が星の占領によって変わりつつあることを、政府の人間が嬉しく思うかどうかなど、彼には関係なかった。作戦の内容が打ち明けられ、彼はそれを承諾した。



 「あと、アプデによって実装された機能もフル活用されるようだ」

 「ということは、戦闘が始まったら我々が映るかもしれない、ということですね」


 「だろうな。戦闘開始時刻になったら、お前も自分の役目を果たせ」



 「…?」



 サイクスは、占領した司令部から外を眺め、そして言った。重々しく、もう一つの彼に対する任務のように。




 「…以上だ」



 それは、一つに軍人としてではなく、一人の人間としての決断を与えるための言葉であったかもしれない。サイクスもこの一件の詳細は既に知っている。一人のプレイヤーとして、たとえ自分たちがNPCとは違う運命をゲームで得ていたとしても、人間として同じように見ていた。同じ人間でありながら様々な境遇に生き、そして主張を曲げずに死んでいった、かつての同胞たち。そのことを考えた時、これ以上「プレイヤー対NPC」による悲劇を繰り返して良いことなど、何一つない。サイクスが直接関わりを持っていなかった相手だとしても、アレンに何とかして欲しい。軍人としての命令で伝えることは出来なかったが、サイクスが出来る精一杯の作戦内容であった。あえて難しい事態の中でそれを行う。僅かな時間しか残されていない今、あとは彼の行動に委ねるしかなかったのだ。



 「おう、アレン。今回デルタアースは出番なしか」

 「はい。酷使しすぎました。…すみません」


 「いや、まぁでもお前さんは上手い使い方してると思うぜ。戦争だかなんだかっていつも言ってるが、なんだかんだ言ってな」



 街の市民は既に基地へと向かい始めている。無論全員が基地へ向かうはずが無いのだが、やはり急に共和国の風潮が浸透するのを嫌う人たちは多くいた。かつて自分たちが同じことをさせられたように、自分たちも占領するということの意味を実感することが出来る。アレンは集団に混ざって基地へ向かうために準備をしていた。帝国市民の服装を調達し、いかにも逃げてきたかのように鞄に荷物を詰める。腰には隠しながらも、ブラスターとルーナセーバーを装備する。帝国側の人間も武器の携帯は普通にあるということだから、恐らく荷物のチェックなどは行われないだろうと考えた。そうしている暇も、恐らく帝国軍にはない。

 そこへ、機体整備長と兵士たちの武装などを管理・生産する開発部のおじさん二人がやってきた。アレンがよくお世話になっている二人である。



 「潜入捜査をするんだったら、やっぱりそれらしい装備が必要だろう」

 「まぁ捜査…まぁ、そうですね」

 「こいつを持っていけ。日用品に見えるが取扱いには注意だぞ」



 そうして渡されたものは、三つ。一つは腕時計、一つはネクタイピン、そしてもう一つはタッチパネル型の小型携帯のようなものであった。確かに見た目は日用品。いずれも誰もが使うものである。



 「その腕時計には現在位置を確認できる機能と、地形を把握する機能がついている。それから無線連絡も可能だ。システムを開く手間が省けるだろ?」


 「…えぇ、まぁ」


 「ネクタイピンには、超小型カメラが搭載してある。ボタンは二つ。左は録画と停止、右のは送信だ。5分間くらいなら続けて撮れるぞ」


 「…」


 「そしてもう一つは、携帯だ。タッチパネル式で、今風だろう?」



 とはいうものの、世に言うスマートフォンというのは、かなり前の時代から提唱されていた便利な携帯の在り方であった。システムなどを操作することを考えれば、別に驚くようなものでもない。



 「ただし、こいつは携帯ではない。爆弾が仕込まれてる」

 「え…爆弾、ですか?」

 「画面で起爆時間を指定することが出来る。あとは好きな場所に設置すれば良い」


 「使うかどうか分からないですよ?」

 「必ず使う。そう思って、用意したんだからな」



 もし本当にこれを使う機会が来るとすれば、それは非常時かもしれないな、とアレンはその場で溜息をつきながらそれら三つを受け取った。どうやら開発部のおじさんは遠い昔に映画で描かれていた潜入捜査もの、スパイ系列のものから参考にしたようだ。

 旗艦から降り、基地内部を経由して街の中へ出ようとする。その時だった。



 「アレンか。今から行くんだな」

 「あぁ、フューリー。行ってくるよ」

 「そうか。自分が死なないように正確な情報を送らないとな」

 「それね、ホント」



 フューリーも既に作戦内容は知らされている。共和国軍としてはレーダー基地も奪取したいところだが、恐らく敵軍の攻撃は激しいものとなるだろう。そうなれば、基地の破壊も考えていた。ただ一番良心に障るのは、そこに無抵抗の市民がいる可能性が高いということであった。都市から離れていく市民の数は、正確には彼らも知らない。だが、やはり軍の管轄下にある街などに居れば、やや安心感を持つかもしれない。レーダー基地の周囲は雪原エリアで、人が多数住むような居住地域などは存在しない。基地で市民を保護する可能性も考えられる。



 「とにかく、無茶はするな」

 「覚えておくよ、その言葉」




 …その時が来るまでは、まだ…。




 こうして、彼は一時街を離れ、再び偵察活動のために遠すぎるレーダー基地を目指すことにした。基地へ逃げようとする一部の市民に混ざりながら。自分に出来ることを、その役目の一つを果たす為に。



 風のように、時は過ぎる。心の中に訪れる虚無の空間は、その時をじっと待っていたのである。




 Space Fantasy Game

 第77話 ―自らを示す、役目―



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