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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第五章 色を失くした眼
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第74話




 第一艦隊と第二艦隊を分散させて占領作戦を行う。かつての木星防衛線のような包囲網作戦を彷彿とさせるが、アレンによってもたらされた情報と情報偵察艦から得た分析結果を基に、ユラ司令官が考案したものだ。兵士たちは皆ユラの指揮をはじめから信じていたし、戦う前から彼の期待に応えようと意気込んでいる人も多い。アレンも、フューリーもそのうちの一人だ。

 しかし。アレンにはどうしても頭から抜けない事情がある。先日軍港内で出会ったあの女性ともう一人の男性。彼の目に疑いはなく、ほぼ確定的なものとして存在していた。だが、どうしてあの女性がここにいるのか。何があったのか。何が原因なのか。それがどうしても分からない。



 彼は、彼女のことを知っている。




 「長距離砲およびミサイル発射用意…完了しました!」

 「了解した。一斉射撃30秒後に、戦闘艇部隊は出撃。艦隊はそれぞれ前進」



 帝国領の地球型惑星で知られるドーミア星域。このあたりの宙域は本星の強力なレーダー網により常に監視されているだろうことが、情報として彼らのもとに届いている。だが逆に言えば、この星とそれらの拠点を自分たちのものとすれば、帝国領侵攻への大きな一打となる。

 この時。共和国軍全艦隊が砲撃用意を整えていた時、ドーミア星のすぐ近く、砲撃コースに数隻の巡洋艦が航海していた。恐らくこれから有視界による暗礁宙域偵察活動を行うのだろう、と司令部は判断していたが、この場合においてはそれですら好都合となった。



 「撃て」



 次の瞬間。莫大な量の光が辺りの宙域を包み込み、そして各艦から一斉に長距離ブラスター砲と長距離ミサイルが射出される。大きな音と光が各方面に向かって走っていく。宇宙に描けば綺麗なそれらも、着弾した際には恐ろしい存在として扱われる。



 「…?」


 「どうした?」

 「ね、熱源!無数に発生!!」


 「なんだと!?」



 本星を出発したばかりの巡洋艦は、熱源の発生を感知した瞬間には回避行動を取った。だがユラの指示した各方面への長距離攻撃で、敵艦が展開していたその位置は広範囲に広がる通過ポイントとなっていた。ただちに回避行動を取るが、間に合うはずもなく、また砲撃とミサイルの合間を潜り抜けるような俊敏な動きを巡洋艦が取れるはずもなく、間もなく爆散した。当然、本星からもこの熱源は確認出来ている。だが、気付くのが遅れれば意味を持たない。第三艦隊が駐留する軍港の各武装施設に、長距離からの攻撃を実行した。ブラスター砲の最大射程を生かし、さらに長距離ミサイルの利点を十分に活用したその攻撃は、百発百中とはいかずとも短時間で大混乱に陥れるほどの影響を帝国軍に与えた。



 「ただちに対空戦闘用意!!迎撃ポイントとは逆の方から航空隊を離陸させろ!!」


 「イエッサー!!」



 駐留基地のみならず、帝国市民までも動揺の嵐に包み込んだ数分間の攻撃。少し収まったかと思えば、既に惑星軌道上に第一艦隊が展開を始めており、陸戦部隊の投下作戦も同時に行われようとしていた。少ない戦闘艇部隊の指揮を行うアレンは、直ちに対空侵入を指示し、長距離攻撃でも潰せなかった対空砲火や自走砲などの破壊を始めた。固定砲台などは破壊できても、車両タイプの対空戦闘はこういった方法で倒すほかない。もちろん、すべてを吹き飛ばす方法だって共和国軍には出来たが、一番は行き過ぎた殲滅行為をせず、占領に集中することであった。アレンたちが軍港の上空に飛来した時、基地以外のところからも対空砲火が始まった。戦闘艇にとってはそれらを破壊するのが第一であるが、その砲火は苛烈なものであり中々近づくことを許されなかった。



 「アレン大尉、2時の方向!」

 「やはり、上がってきたか」



 第三艦隊の司令官の司令は早かった。彼らが上空に到達して攻撃を始めた数分後には、既にレーダーで敵機を捉えていた。しかも、この基地が本隊の駐留する基地であるから、その数は自分たちの3倍にもなった。レーダーに無数の赤い点が映る。間違いなく包囲攻撃をされるだろう。そうなれば、重力の効いた戦闘に慣れていないこちらが不利になる。とはいえ、再び宇宙まで上がろうものなら、戦闘中に燃料の補給をしなくてはならなくなる。


 選択肢は一つしかなかった。



 「戦うしかない。既に味方の戦艦が降下し始めている。耐え抜くぞ!」

 「了解!!」



 アレンが操るデルタアースは即時最大推力で敵戦闘艇部隊に向かっていく。その後を味方も続いていく。特に戦い方などは指定しなかったが、いつも通りに行けば1機の敵に対して複数人で撃墜しにかかる、という方法であった。アレンははじめ編隊を組んで接近してくる戦闘艇に対し、最大出力でブラスター砲を撃ち込んだ。戦艦さえ一撃で葬ることの出来る改良型ブラスター砲の威力は凄まじく、その一発で3機を撃墜、1機を被弾させた。それに続くようにして、各戦闘艇が接近する前に一斉に砲撃を行う。先手を打ったのは共和国軍の戦闘艇部隊であった。幾度となく危機的状況を切り抜けている彼らの攻撃は、防衛任務でしかも訓練ばかりを積んでいる帝国軍第三艦隊所属の戦闘艇部隊とは比較にもならず、その練度の高さを証明していた。とはいえ、自走砲などと一緒に攻撃を受けると厄介であった。特に地上車両から対空ミサイルを発射できるタイプのものを相手にすると、ミサイル回避をしている最中に敵機に撃墜される、というケースがあった。デルタアースの強みでもある速度域の調整と機動性は、どの機体にも同様に性能としてある訳ではなく、アレンのように戦える人などまずいなかった。フューリーであれば互角に戦えるのだろうが、彼は今生産基地占領の指揮官でありこの場にはいない。



 「多少被害が出ても仕方がない、か…」

 「いかがいたしますか」


 「ケン少佐、すぐに対空砲の新たな所在を。そこへ向けてピンポイント攻撃を仕掛ける。ただし攻撃は最低限に。高度が十分に下がったら陸戦部隊を投下する」



 艦隊の攻撃手段は街にとっては大きな打撃となる。いくら占領が目的とはいえ、出来る限り被害を少なくしたいというユラの心の内が、基本構造として戦闘艇部隊に攻撃を委ねるという判断に繋がっている。彼らが突破口を開くことによって、陸戦部隊が隅々まで占領するための活動を行える。艦隊のような黒の塊が前面に突出する必要は無かった。彼らはこの惑星を破壊しようとなどは考えていない。

 艦隊によるピンポイント攻撃が行われ、地上を移動しながら攻撃を続けていた帝国軍の車両が次々と撃破されていく。



 同時刻。まだ占領の手が伸びていない帝国軍の戦闘艇格納庫。





 「あれだけの数いるが、味方は苦戦しているようだ。お前の出番だぞ」


 「…」


 「良いな?戦果を期待している…」







 …チェーン。






 地上車両からの攻撃は大半が制圧され、アレンたちは再び上空に飛び続けている敵機への攻撃に戻った。既に地上部隊が突入を開始している。どこまで彼らを援護出来るかどうかだが、街全体がとても栄えているため、一発の攻撃が大きな犠牲を生むことにもなる。上空からの攻撃は躊躇われた。アレンも地上に降りて自らも陸戦部隊の支援をしたいところであったが、軍港が完全に制圧できるまではそうもいかなかった。かといって母艦に帰投したうえで再出撃するのも時間が掛かる。今は上空で待機しているしかなかった。



 「大尉!敵の増援部隊を確認しました!」

 「また出てきたか。…倒すぞ」



 流石に敵の本拠点だけあって、その攻撃は激しいものであった。対空砲火こそ減少したものの、優位に立って戦闘をしているとはまだ思えない。敵の航空勢力が出撃してくると、陸戦部隊の行動に支障を与えないために迎撃に向かった。しかし、何と増援として出撃してきたのは、わずかに3機であった。



 「あ?…たった3機で何を…?」

 「もう在庫が無いのか?」



 はじめ、共和国軍の戦闘艇部隊は不審に思った。増援部隊、とはいっても視認できる数はたったの3機。とりあえず出撃して来たのか、それとも本当に3機だけで戦おうとしているのか。見当はつかなかったが、戦闘が始まってしばらくしても他の機体が上がってくることは無かった。多くの兵士たちは、大人数でかかれば自分たちは死ぬことはない、と緊張感を解いて攻撃に当たった。




 「…!?」



 …この感覚は…。




 「皆気をつけろ!!」



 アレンが声を張り上げて無線越しに飛ばした瞬間、彼の左前方から急な光が発生し、機体が激しく揺れた。すぐにアレンは上昇して回避行動をとった。3機しかいない敵に、味方があっという間に撃墜されたのである。しかも、戦闘艇の射程には捉えられない距離からの攻撃であった。楽に敵を葬れる、といったムードが一瞬にして緊迫感を呼び戻す。はじめから警戒していたのはアレンとその直属の編隊のみで、事態は急変した。



 「ち…近づけん…!!」

 「うおわああぁっ!!!」



 「くっ…!…しかし…!!」



 アレンは攻撃を躊躇った。確実に敵機の後方を狙い撃てるよう、ドッグファイト状態を作り出そうと試みていた。だが既にその敵機は気付いているのだろうか、機動力を生かして逃げながら、視界に入った共和国軍の機影に向かって攻撃を仕掛ける。ここまで来れば射程圏内で、すべての機体が狙い撃つことが出来る。が、3機のうち1機だけ、それもアレンが追い続けている敵機が尋常ではない運動性能を発揮しているおかげで、ブラスター砲が役に立たなくなっていた。

 味方機が次々と撃墜されていく。こうしている間に地上部隊が侵攻を続けていれば、とアレンは思うが、戦闘艇部隊の損害も戦力としては痛手となる。あまり長く空戦を続けるわけにもいかなかったが、相手を捉えることも出来ない。重力下の戦いは、更に加速を続ける。



 「こちら司令部。アレン大尉!」

 「…!!」

 「艦隊の援護射撃を行う…聞こえているか!?」


 「…分かっている、だが…!!」



 この時のアレンは、ほぼ目の前にしか集中していなかった。旗艦からの声も届いている、それに対して答えも出している。だがその答えは明確なものではなく、司令部では攻撃命令を下せなかった。その様子はユラも、サイクスも旗艦から見ていた。様子がおかしい、なぜそこまで1機の敵にこだわるのか、と思わずにはいられなかった。

 追いかけっこのような戦闘が、お互い同じタイミングで別の方向へ旋回したことにより、真正面から対峙する戦闘へと変化する。アレンはブラスター砲の出力を最低限にし、操縦桿の発射ボタンを押そうとした。対して、相手は躊躇うことなく一発のブラスターを放つ。一本の線だけが発生して、何を目指すことも無く空中を駆け抜ける。正面衝突を回避するために、アレンはその場で機体をロールさせた。





 お互いのコックピットが、わずかにすれ違う。





 「…チェーン!!」



 「…!?」





 カウントダウン。

 彼らの間に現れた現実は、残酷な再会であった。




 Space Fantasy Game

 第74話 ―元仲間との、再会―




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