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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第四章 NPCたちの戦い
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第57話




 これがまさか、と思ったが、本当にそうなることなど誰も期待してはいない。いや、そうなってはいけなかった。そもそもの原因はなんだったのか。すべて、彼が導いたことであっただろうか。結末を演出した一部に、彼も含まされていたのだろうか。



 カウントダウンは、今始まる。




 …。




 その後、共和国軍は引き続き進行を続けることにした。当然とも言うべきだが、政府のお偉いさん方、は太陽系をすべて確保しなければ、すべての話は始まらないと身勝手に豪語した。軍人としてはいい迷惑であった。特にNPCとしては、一歩も外に出たがらない内政など信じる訳がなかった。が、そのようなことを公で言うことも出来なかった。

 激しい組織的な戦闘が予想された。上層部に所属するアレンやサイクスなどは、最悪の事態を想定しつつ、航路を維持し続けた。が、ここまでくると不気味に思えてくるくらい、帝国軍の動きは消極的であった。海王星宙域に接近し、ようやくレーダー反応がアクティブとなり視界が良好となったが、小数の帝国軍艦隊が射程の近くまで接近してくるだけで、攻撃をすることは一切なかった。そのような状態が既に8回も行われていた。共和国海軍としては、ここまでくると接近を無視してもいいレベルであったが、不意の襲撃に対応するためには、無視することもできなかった。艦影を確認するたび第一戦闘配置が命じられたが、すべて警戒解除という形で出撃することはなかった。

 帝国軍にどのような思惑があるのか、彼らにはわかっていない。いわゆる「威力偵察」を帝国軍は行っていたが、これはゾレル少将が太陽系に近い艦隊に移動中命じていたことが、後々判明している。



 「くそっ!敵は一体どういうつもりなんだ!?」

 「曹長…落ち着いて下さい」

 「こなくそっ!!」



 当然、ともいえる。8度にわたる第一戦闘配置からの、警戒解除。特に戦闘艇部隊に所属する人たちは、戦闘配置があるたびにパイロットスーツに着替え、自分の機体に乗り込む。何度も緊張感を味わっているのにもかかわらず、立て続けに解除命令が出されると、敵の行動のみならず、上層部の対応に腹立たしさが浮き彫りとなる。それはエルガー曹長だけではなかった。

 アレンは、ただじっと待った。敵がどのように動いてくるかを。


 それからしばらくのこと、何事もなかったかのように海王星までもが解放された。海王星に住む共和国市民としてはこの上なくうれしいことであったが、戦闘せず勝ったような感覚を得られない軍人たちは、奇妙な予感を覚えるものと、無邪気な笑顔を見せるものと、二つに分かれた。上層部は全員不思議に思った。一体帝国軍は何を考えているのだろうか、と。



 「まるで、誘い込まれているようだな」

 「お、フューリーもそう思ったか」



 艦内の自室で第三艦隊に所属するフューリーと通話をしていたアレン。システムを起動させて太陽系の地図を目の前に投影しながら、今までの航路を指で追っていた。ワープを何度も重ねているが、何か特別目立ったようなところは通っていないし、敵の出現ポイントに裏があるようにも思えなかった。となれば、フューリーが言うように、何かに誘い出されているのかもしれない、といった考えも発生する。彼らに限ったことではなかったが。

 それでも、太陽系の解放成立まで、あとひとつとなった。惑星とは言い切れないが、残りは冥王星がある。冥王星基地に辿り着き、そこで政治の首脳部からどのような司令を受けるのかが、今の重要なポイントとして認識されていた。結果は目に見えているが。

 さらに日程が過ぎ、彼らは現在海王星圏内から脱出し、冥王星宙域へと向かっていた。もうすぐ、ワープ航法に入るというところである。



 旗艦ダビーレ コアエンジン制御室



 「…用意は、出来たな」

 「いけます。狙い通り、突発的に…」


 「よし。ここからは、お前の責任だ。押せ…ジム」

 「…」



 「…やらなければ、お前の命も、地位も財産も、友人も皆死ぬことになるぞ?」



 その弱き幼き男が、配線と配電盤を入れ替えた後の、プログラム実行ボタンを押す。スクリーン上に投影され、システム制御によるエンジン起動各モジュールの点火準備を始めた。ここまでくると、もう後戻りは出来ない。



 「…見ていろ、政府の犬ども。そして…俺たちをなめるなよ、プレイヤーどもが…!!」



 数分後。作業中であった艦内管制室から数名の人が出てきて、コアエンジン制御室にいた者たちと合流する。



 「よし、全員デッキへ向かえ」



 …?



 なんだ、この感覚は。



 自室にいたアレンは、何かいつもとは違うような空気をその場で感じ取った。普通そんなことを日常的に感じ取る者などいない。だが、彼に備わるルーナの力が、今回は働いたのかもしれない。彼は着替えを手短に終わらせ、長い上着を着て艦橋へ出向く。その日が現実世界の土日であったことから、彼は昼間からログインしていた。艦橋には、既にサイクスもユラもいた。



 「状況はどうですか」

 「海は穏やかさ。広域レーダーが利かないのが痛手だがな」

 「冥王星も、こんな調子でしょうか…」



 艦橋のサブモニターには、ワープするまでの時間が記されている。カウントダウンのように、リミットが近づいている。残り3分と表示されていた。このワープを行うことによって、冥王星宙域の2歩ほど手前まで接近することが出来る。偵察艦を先行させれば、もしかしたら敵影を確認できるかもしれない、というレーダー範囲にまで達する。

 が、そのときだった。突然艦橋に小さな警告音が鳴る。それを聞いたアレンとサイクスが、情報士官のもとへ来た。



 「どうした?」

 「4番格納庫と第7艦艇部ハッチに開放警告…あ、あれ?解除になった」

 「…ん?」



 いずれも戦艦の底面にある出入り口であった。もともと作業員がいずれの場所も作業のため利用するのだが、ワープの直前は作業をするはずがない。はじめその場にいた者は怪しく思ったが、すぐに解除になったことによって、それが誤作動によるものだと、思った。アレンは、先ほどの感覚が一瞬にして強まるのを感じ取った。何かが、おかしい。

 が、その異変はすぐに現実のものとなる。



 「ワープ用意…ん?」



 突如艦内が小刻みに振動し始めた。はじめはワープ航法のためのエネルギーによるものだと考えていたが、やがてその振動は小刻みに、だが激しくなる。すると、艦橋の操縦席の周辺からあらゆる警告音が同時に鳴り響く。推力低下、動力異常、余剰圧力。



 「どうした!?」

 「エンジンにトラブル発生!このままでは艦が持ちません!!」


 「…これは…!!」




 まさか、それがこのゲームでの初めての死になるとは、思わなかった。ちょっと不思議な感覚だった。だが、それ以上に…見過ごす訳にはいかないことを、俺は知った。急に現れたハッチの開放警告。あの機体、あの番号…間違いない。



 『You are Dead』という文字がシステムを通じて画面上に現れる。間違いなくプレイヤー自身に対して発せられたものであった。彼は思いもよらぬところで初めての死を迎えてしまった。彼はできるだけこの世界でも死にたくない、と思っていたのだが、それは叶わなかった。しかし、幾つものサブスクリーンに投影されている艦内のカメラから、開放警告のあったハッチに進入する大きな物体と番号を、彼は確認していた。信じたくなかった。信じられなかった。しかし、それが現実であった。

 旗艦ダビーレは、ここで消失する。多くのNPCやプレイヤーとともに。プレイヤーの記憶は、ダビーレが爆発するまでの時間まで存在し、そこからを失って、また新たに記憶を刻みつけることとなった。その話は、直ちに共和国海軍の情報網を張り巡らせて伝えられた。普通このようなことは起こらない。メインエンジンの不良による爆発は、珍しいという言葉で片付けるのも無理のある話であった。



 「…」



 彼がようやく目覚めたとき、そこは海王星の基地内部であった。基地の中にも幾つかセーブポイントが存在し、アレンはそれを見つけては記録したり、あるいは大きな戦闘などに参加するときは、事前にセーブしている。それは、このときのためというのも、理由のひとつであった。

 妙な胸騒ぎが、まだ残っている。だが、たった一瞬の出来事でもある程度の状況を把握することはできている。だが、それがわかっていても、やらなければならないこととは何か。考えることは止まらない。意識がはっきりしてくると、アレンはシステムからのお知らせがあることに気づいた。それはシステムが彼に用件を言ったのではなく、サイクスのメッセージをシステムがお知らせしたものであった。



 『気付いたら、すぐに基地内部の図書館に来てほしい』



 サイクス大佐のメッセージを確認したアレンは、その場から立ち上がり、ある程度の身支度を整えて図書館へと向かった。主に軍で利用される図書館とは、資料室のことを指す場合が非常に多い。この海王星にある基地も、そのうちのひとつであった。現場へ辿り着くと、既にケーンバーク少佐、サイクス大佐が揃っていた。重い足取りで彼は合流する。




 「…」

 「言わんとするところは分かっている、つもりだ」



 その言葉をサイクスが発してきたということは、既に彼にもこの一件の概要が見えているのだろう、とアレンはその場で勝手に解釈した。それが正しかったことなど、彼は意識することは無かったのだが。図書館内の奥にある個室、サイクスはあの宙域で航行していた味方の戦艦からの録画映像を検索し、それをモニターに映した。その映像の中には、旗艦ダビーレも含まれている。その映像を流すときにちょうどユラとも合流した。旗艦が爆発四散した後、幾つものブラスター砲が飛び交う光景がハッキリと映し出されている。



 「…こんなことが…」


 「アレン、これは現実だ。この叛乱行為をどう鎮めるかが、問題だ」



 起こってしまったものは、それとして解決策を見出さなくてはならない。しかし、具体的な策など考えなくてもほぼ頭の中には浮かんでいる。なぜこのような状況になったのか、そうさせてしまったのかを、本来は深く考える必要があっただろう。だが、彼らには政府から受けた命令がある。それと今回の一件とがまるで板ばさみになり、思考を鈍らせていた。



 太陽系内が、昏迷の宇宙を形成する。



 Space Fantasy Game

 第57話 ―叛乱、発生―




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