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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第四章 NPCたちの戦い
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第54話




 「…あなた」


 「どうしたんだ?」


 「…私ね、赤ちゃんが、できたみたいなの」


 「そうか、…喜ぶといい」




 …。



 「…」


 何もない空を眺めていれば、自然と気持ちも空虚なものに満ちてくるように思えてきた。それが良いのかどうかなど、ここでは関係ない。求めていたかどうかもわからない。自分自身で理解も判断もすることができていなかった。あの頃の、作られた思い出を一つ思い浮かべれば、一つ大きなため息が出てくる。窓を開け、椅子に座りながら、この星の自然に触れようとしても、ここには何もない。無に等しかった。自分の気持ちに従った訳でもなく、誰かがそうした訳でもないのかもしれない。空虚なものであった。だからといって、この星に対して何かを求めているとも言い切れない。辺境と言われたこの星はずっと、この星のままで居続けるだろう。それがこのゲーム全体として良いものであるのかどうか。この星に生まれこの星で死ぬ者が今後現れるのなら、彼らにとってこの星はどのような意味を持つのだろうか。どのような意味を持たせるべきであったのか。


 それを考えるのは、本当に軍人としての仕事か。今はただ、目の前に迫ってきているであろう、強大な敵を相手にするしかない。



 「少将。各艦隊、補給物資の搬入作業が完了しました。旗艦へおいで下さい」

 「10分後にいく」



 旗艦で仕事をしている通信士からの連絡を自室で受けたゾレルは、すぐにその場から立ち上がり、部屋の窓を閉め、カーテンも閉め、その場を後にした。デスクのうえあった、一枚の写真を手にして。



 「ご苦労」

 「準備は着々と出来上がっております。それにしても、この周辺の巡洋戦艦が旧式のものばかりでなくて、助かりましたな」


 「あぁ、全くだ」



 レムラ少佐が旗艦の艦橋にやってきたゾレルを出迎え、各艦隊の状況を順次伝えた。あれから3日が経過しており、予定の出兵時刻も近づいてきている。名前を持たない第三勢力との戦いで、この旗艦そのものも老朽化し始めている中での、出兵となる。ゾレルは司令官であれど最前線に出て指揮をしながら戦闘を行う、周りの人から見ればそれはまさに「猛将」とも呼ぶべき存在であったが、これが兵士たちの全体士気に大きな影響を与えているのだ。

 旗艦も準備を終え、彼が艦橋に上がってから約1時間後。



 「全艦、準備整いました」

 「発進する」



 ゾレルからその指示が飛ばされた、その直後。干上がった大地に無数の轟音が鳴り響き、地面をも反射して周囲を轟かせる。一度に複数の戦艦が離陸を行うので、恐らく耳栓なしでは相当な爆音であるだろう。ゆっくりと地面から足を離す船もあれば、勢いよく地面を蹴る船も存在した。離陸からすでに、艦隊としての陣形を整え、そして旗艦が中心となってこの星を離れていく。



 「ラーミア星引力圏内を離脱。ただちに、ワープ準備に入ります」



 彼らにとっては、母なる大地ともいえるラーミア。そこを離れていく多くの人々。彼らの軍勢は、全員がNPCで構成されたものであることを、知らない者が圧倒的に多かった。



 一方。共和国軍でも、予定されていた通り、天王星に向けた行軍が開始された。土星周辺の衛星で補給を終え、さらに再編成を行った三つの艦隊。戦艦総数175隻、この数で再び地球圏で占領され続けている諸惑星を解放しに行くことになる。

 その後は決まっていない。どこまで共和国軍の軍勢が戦線を伸ばすのかは、戦っている軍人や指揮をする高級士官たちが決める訳ではない。大本は、政府が決定するのだ。



 「よし。集まったな。天王星までの時間は長い。だからといって、気を抜く訳にもいかないのが現状だ」



 旗艦ダビーレ。戦闘艇デッキに設けられた一室。そこに集められたのは、ダビーレに所属する空戦隊であった。空戦隊長を務めるのは、アレン大尉。それをバックアップするのがサイクス大佐でもあり、空戦隊の実力者でもある、エルガー曹長であった。三人が前で並び、彼らと対面するように、兵士たち十数名が整列している。その中には、まだ新兵のジム一等兵もいる。



 「これから模擬戦闘訓練を行う。チーム編成はサイクス大佐が行ってくれた。ので、その紙を見ておくように」



 アレンがすべて事細かに説明して、実戦を想定した訓練を行うことが決定された。急な実行ではあったが、適度な緊張感を植え付けるのには十分であった。模擬実践訓練のため、当然のことながら実弾は使用されない。各機体に取り付けてある実弾などは、すべてペイント弾に装備変更され、ブラスター砲は使用されない。ただし、ターゲットをロックオンすることが大前提となる。標的にロックオンすれば撃墜カウントとなり、撃墜カウントを取られた機体は模擬戦闘から一時離れ、その回の結果を待つことになる。



 「中々、上官らしくなってきたな」

 「いえいえ、大佐ほどでは…」

 「俺だってらしいか、と言えばそうでないと否定するさ。要は周りの目だ」



 各員が自分の機体に登場している頃、サイクスとアレンで話をしていた。この模擬戦、敵も当然行っているのだろう、と。



 「手加減するなよ。デルタアースと普通の機体じゃ性能は違うが、訓練は訓練だからな」

 「もちろんです」



 サイクス大佐のチーム編成は、全体の空戦部隊を2つのチームに分割し、混合戦を行う。誰がどう指揮をするのか、というのは特に定めてはいないが、アレンのいる方が必然的に彼が指揮を執る、と皆もサイクスも思っていた。勝ち負けにこだわるな、というのがこの模擬戦での注意事項というものであったが、やはり上官が敵にいると、中には一方的なゲームになりそうだ、と肩を落とす者もいた。無理もない。



 「あれ、そうか。ジム君はBチームか」

 「大尉!先発します!!」

 「了解。各隊発進せよ。無線チャンネルとパスワード間違えないように」



 エアロック封鎖後、準備の整った機体から順次離脱していく。一瞬ふわっと浮き上がる感覚に笑みを浮かべ、彼は自分の専用機デルタアースの出力を最大にする。途端に激しい振動と急な圧力がかかり、シートの後方に自分の身体が押し付けられるのがよく分かった。真上に見えた鉄の塊が無くなり、視界が広くなる。真っ暗闇に映る美しい星々、その海の中を高速で飛び始めた。



 「何々?…第一戦闘艇部隊が?」

 「の、ようですよ?」



 第三艦隊 旗艦クロイシュナ



 「担当は?報告は受けているか?」

 「あぁ、そうだ。アレン大尉だと聞いてます。熱心ですね」


 「ホント、熱心だな…あいつ空戦隊は希望じゃなかったはずなんだけどな」



 第三艦隊に所属する空戦隊長、フューリー。かつては一緒に星の海を飛んでいた者だが、軍事再編成計画を経て、彼は第三艦隊所属になった。アレンが第一艦隊で指揮を執るように、彼は第三艦隊で空戦部隊の統括をしていた。確かに出兵中の移動時間はこうしたことにも使うことが出来る。なるほど、と思いながら彼は艦橋にいる情報士官からの情報を得た。



 「ドロワも、見てるだろうな。きっと」

 「大尉と同じく、訓練を指示するとは思えませんけど」

 「ふん、よくいうよ」



 この模擬戦を専門に使用される無線チャンネルにて、二つの部隊が連絡を取り合う。機体に常備されているレーダーと空間把握モニターを確認しながら、相手の機体を追いかけることになる。アレンでないもう一つのチームは、エルガー曹長が指揮を執る。



 「時間は10分間。良いか、単独で動くな。3機がかりで敵を落とせ」

 「ラジャー!」



 エルガーがそう指示を出した直後に、所定の宙域に辿り着いた各隊は、順次攻撃態勢を整え交戦を開始する。お互いの部隊の距離が縮まり、模擬戦とはいえ緊張感のある戦いが始まった。暗闇の空間に、ペイント弾を使用した弾丸が飛び散る。ペイント弾を使用しても撃墜にはならないが、機内には当然被弾による衝撃などが入り、結局はペイント弾と言えど回避しなければならないのだ。

 お互いの模擬戦はすぐに激しい交戦状態となって、幾つもの火線が宙域を飛び交う。遠くから見れば綺麗な光景ともなるのだろうが、コックピットの有視界から、すぐ傍をペイント弾が通過していくのは、やや恐ろしい光景でもあった。実弾であれば緊張感は更に増したであろう。早速狙われたのは、ジム一等兵であった。彼の動きは3機一組を目指すエルガー曹長の作戦にすらついていくのがやっと、と言うような形であった。思い通りに動くことの出来ない編隊は、すぐに狙われる対象となる。現実の戦いでも、動きの鈍い機体がいた時、まず相手の戦力を削ぎ取る目的があるとすれば、それを集中的に狙うだろう。



 「発見した!アレン大尉のデルタアースだ!」

 「エルガー曹長を呼べ!」



 アレンが高速で飛びながら、Bチームの相手を追いかけまわしていると、後方から何と一気に5機接近しているのをレーダーで確認する。そんな数に接近させられたら、いくら彼でもロックオンはされてしまう。模擬戦の性質上、ロックオンされればその時点で終了となる。司令官クラスがそう簡単にやられる訳にはいかなかった。



 「くっ…いけるか…!」



 機体の各所に備え付けてある推進装置をフル稼働させ、高速で飛行していた状態から、急に減速して機体の姿勢を変える。相手から見て遥か上空に、今度は急加速する。5機編隊が速度を上げながら接近していたため、急な方向転換に対応しきれず、編隊が一気に乱れた。その動きをレーダーで確認していたアレンは、更に機体の向きを変え、まるで直滑降するように、彼らの高さに対して急降下し始めた。



 「あー、流石大尉だ」

 「あんなの目で追えないっすよ」



 ほぼ一瞬で2機をロックオンすると、ロックオンされた機体はコックピット内が赤くなる。ロックオン警告灯が付いた証拠であった。5機とすれ違う前に、態勢の崩れた2機をロックオンし、再び急な回避行動をとってロックオンを避ける。到底他の人が真似できるような芸当ではなかった。更にアレン機の後方から編隊がやってきて、ドッグファイト状態となり、あっけなく5機編隊の全員がロックオンされてしまった。すぐに数を減らしていくエルガー隊。戦況は明らかであった。



 「ジム何してる早くしろ!!」

 「す、すみません!操縦桿が重たすぎて―」

 「無駄口を叩くな!!」



 結局その後もジムは足を引っ張り、最終的には補足された。そしてエルガー曹長率いるBチームは、途中粘りを見せながらも敗北という結果に終わった。母艦へ帰投すると、すぐにアレンから各隊員に対して多数の指摘を行った。旗艦が全員の機体の動きをモニターでチェックし、それを宙域区分で移動の流れを把握していたものを、スクリーンに投影する。ほぼ全員に共通して、レーダーに頼っていることが明らかであった。



 「以上。模擬戦はまた機会があれば行う」



 さらに、その後のこと。自由時間になったところで、思いもよらぬ事態が発生する。



 Space Fantasy Game

 第54話 ―行軍中の、訓練にて―




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