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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第三章 あの星へ戻るために
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第46話




 「…まぁ、これからが問題かな」



 デルタアースはそのまま基地の入り口すぐ近くへ着陸する。既に敵の戦闘艇部隊以外の対空迎撃手段は残されておらず、容易に着陸が可能であった。二正面作戦という賭け要素の多い作戦を共和国軍は実行し、そして帝国軍はものの見事にその術中にはまった。奇襲作戦により地球圏にいる艦隊を混乱させ、木星から増援部隊をワープさせる。木星が手薄になったところで、奪還部隊が衛星に奇襲攻撃を仕掛ける。この二段戦闘により、共和国軍はこの戦いにおいて短時間で優位な状況に立つことが出来た。特に、奪還作戦に動員された陸戦部隊の戦果は凄まじいものであり、その勢いは負け続けている軍とは思えないほどの、脅威であった。


 「中尉!内部の抵抗は流石に激しいようです」

 「了解した。長期戦になる前に部隊を増員して、その区画を強襲制圧する」



 アレンは自分でも驚くほど、指示を飛ばしていた。このような経験は彼にとって初めてのものであったが、戦闘をしながら彼は戦況を確かに把握していた。衛星都市の各所制圧の指示も、都市機能を掌握するのに重要な要所ばかりであった。そして最も難関とされる各基地の制圧に関しても、システムで位置情報を確認しながら兵士たちから戦況報告を受け、自分自身も戦いながら次のターゲットを選択する。そうした攻撃指示の連続が、気付かないうちに帝国軍兵士を疲弊させていた。はじめは拳銃型のブラスターで応戦していた。



 「んっ…!?」



 アレンはすぐに気付いた。システムのアシスト機能で、自分が何者かにロックオンされた時には、必ずその表示が出るようになっている。一度に三つの表示が重なり、その印はハッキリと映し出された。直後、彼は自分の腰に身に着けていたルーナセーバーを取り出し、そして光る刃を一瞬で発動させた。そして、すぐに後ろを振り返りその遠心力を利用して、一度セーバーを振り抜いた。直後、セーバーに連続して三つのブラスター弾が直撃した。少し遠いところで彼を狙っている集団がいることに、彼自身が気付いた。そして、彼はここで相手がどのような攻撃に出てくるか、先読みしたのである。

 そのまま自分を狙っている者たちのところへ行こうとしたが、すぐに目の前が友軍含めた敵との近接戦闘の場に変わり、行こうにも行けなくなった。このSFGでの近距離戦闘方法は、幾つもある。中には中世期の斧や盾などを使う人もいるが、ごく少数ではある。大体は実体のあり熱を持つレーザーナイフなどが主流だ。



 「内部が次々と制圧されています!」

 「D10ベースゲート突破!!」



 監視カメラに映り込む、共和国軍の兵士たち。どこを見ても勇敢に戦い続けている。決して自分たちに余裕がないだろうに、それでも勝とうと前に進み続けている。そして、その中に一際目立つ男が、一人。光る剣を右手に持ち、突き進む。



 「…あの剣…」


 「閣下!」

 「…すぐにギニアス部隊に連絡を取れ。全部隊後退命令発令」




 光を解き放つ一本の刃。無の空に漂う一つの光は、その刃を生みそして育てた。数々の苦難に耐え、あらゆる者の意思を吸い込んだ一つの光。何も変わらないことへの、罪。そして、変えた先に訪れた未来に対する、贖罪の念。すべてを引き受け、身を持って抗う末路に見ゆ、光無き世界。



 「…」




 エウロパ奪還作戦における各所の状況は、帝国軍の最高司令官が後退命令を出して以後、圧倒的に共和国軍有利に傾いた。中にはここを渡すまいと激しく抵抗する部隊もあったが、それもすべて彼らの前には無力、と言わんばかりであった。かつて自分たちがそうしたように、今度は自分たちが殺される番であった。アレンたちにしてみれば、もうここまで来て誰がNPCなのか、と確認はしていなかった。自分たちにできること、たとえ迷いがあっても、それを成し遂げる他今は、あの星を守ることが出来ない。



 「くっ…!!」



 光を放つ剣は、相手の首をハッキリと跳ね飛ばし、一瞬で四散させる。死ぬ直前のエフェクトが、段々と激しく、いや残酷になりつつある。しかし、彼はそれを心に痛みを持ちながら実行を続けている。この時、それを意識する余裕はどこにも無かったが、確実に聞こえる、いや感じるあらゆる波に打たれていた。他者との間に

発生する意識の波。人と人とを結びつく一種の干渉。



 「少尉。前方に煙が!!」



 それは、基地内部で確認されたものではない。周囲の空域で待機していた強襲揚陸艦が確認した現象であった。基地からそう遠く離れてはいない地点で確認された、急に広がりを見せる煙。サーマルオプションで確認するよう、強襲揚陸艦の艦長は情報士官に伝える。



 「こ…これは!」

 「どうした?」

 「熱源を特定!ロケットと思われます!!」


 「…離脱するつもりか!全砲門開け!!」

 「敵の戦闘艇部隊が近づきます!」



 帝国軍最高司令官の地位にある、グラーバク。彼の乗るロケットが、基地郊外の発射基地から射出され、激しい光を周囲に浴びせながら急上昇していく。すぐに共和国軍の部隊は攻撃を開始するも、ロケットの速さと急速に上昇する角度に船がついていけず、思うように照準が定まらない。それに加え、増援の戦闘艇部隊が接近し、それどころではなくなってしまった。

 結局、5つのロケットを射出されてしまった。当然、この時アレンたちも、またこの強襲揚陸艦の乗組員たちも、あのロケットに最高司令官が乗っているとは思っていないし、そして知り得なかった。



 「…内部は制圧できたが…」



 シュッと、音を立てて光を失う剣。ただの持ち手に変化したその部分は、武器としては使いようも無い。ただの鉄くずだ。しかし、そんな鉄くずも、彼がいれば武器として機能する。それを、彼は堂々と行使した。皆のために。

 そう、自分に言い聞かせることにして、今は詳しく自分に問いかけることはしなかった。



 「すぐに、地球圏にいる仲間たちに連絡を取ってほしい」



 一方。

地球圏で戦闘中の共和国軍も、帝国軍の必死の抵抗に堪えながら、着実に倒しにかかっていた。しかし、ある時を境にその攻撃の勢いが一気に衰える。それこそ、木星宙域衛星エウロパが奪取されたことが、原因であった。衛星を奪取出来るほどの実力はともかく、それを実行できるほどの兵力を共和国軍が有しているなど、戦闘をしていた彼らが信じられるはずもなかった。しかし、事実は事実。木星からの増援部隊がワープアウトしてきた頃には、戦力差は追加しても互角といったところであった。更に問題なのは、木星宙域を奪還した共和国軍が、こちらに殺到してきた時、自分たちは包囲殲滅される可能性が非常に高い、ということであった。



 「…大佐」


 「状況は把握した。全艦全速で当宙域から離脱する」

 「しかし大佐、地球を目の前にして…」



 「…出来る奴もいる。今はただ、負けを認め次の戦いに備えるべきだ」




 現場を知る者であれば、どれだけ苦しい状況であったかが、分かる。逆に言えば、それを知った者は自分たちがどれほど苦しい状況を与えていたのかが、分かる。両方の立場を知ることになった帝国軍兵士は、様々な考えを持った。そして、その結果が今自分たちの状況であると理解し、それを受け入れた。



 「帝国軍、大きく撤退します」


 「うん、それでいい。これで帝国は、最後の目的を目の前にして、また考え直さなければならなくなった。その機会を与えただけでも、我々の勝ちと言えるだろう」



 もしここで負けていれば、SFGにおける局面は恐らく終結へと向かっていただろう。しかし、共和国軍は、自分たちに与えられた一方的な運命に抗った。そして、成功した。まだ彼らにやるべきことが残されている。ここで果てる訳にはいかない。そんな精神的打撃が、むしろ彼らを強くしたのかもしれない。






 同時に、取り返しのつかないことへ、前進し始めるのだ。






 「アレン…よくやったな」

 「ありがとうフューリー。良かったよ、成功出来て」



 結果的に、多くのプレイヤーがログインしている時間帯で、決着をつけることが出来た。確かに長い戦闘ではあった。疲労も溜まっている。リアルタイムでいうところの、2時前にこの戦いは終わった。壮絶な戦いだった、そう振り返る者の何と多いことか。

 共和国軍の今後の方針はまだ決められていないが、アレンは2時を過ぎた時点でログアウトし、次の日の夜にその場所から会議に出席することが決まった。そして、奪還作戦司令官のトルク中佐と共に、日が改まった夜にスクリーンに登場する。



 「トルク中さ…あぁ失礼、もう大佐だな。この度は成功に感謝する」

 「いえ、閣下。アレンが、本当によく頑張ってくれました」

 「そんな、俺は…」


 「二人の頑張りは、地球から出てくることの無かった政治家たちもよく認めているよ。それから、特にアレンはネット上で有名人物になった」



 あーあ、聞くんじゃなかった。

 こうなるくらいなら、あのセーバー…って、もうそんなこと言ってる場合じゃないから、仕方ない。



 「これからについてだが…帝国軍は地球圏から完全撤退した。それどころか、木星にも帰れなくなり、土星宙域まで後退したと考えられる。生産規模が充実してる木星の衛星で軍備増強して、もう一度戦力差を均衡にしようと考えてる」


 「それが第一でしょうね…」



 …ということは、最終的には冥王星あたりまで取り返す、ということだな。太陽系全体か…まぁ冥王星は色々問題があるが。土星、天王星、海王星、冥王星…この四つの星はとにかく、遠い。そうなると、またしばらく地球には帰って来られなくなりそうだな。このまま侵攻作戦は続くだろう。



 「具体的な今後の作戦については、私もそちらに合流してからにするよ」

 「お願いします」



 アレンの表情に、陰りは現る。それはスクリーンが消えた時のこと、誰もその表情を見る者はいなかった。通信を後にし、ただコツコツと響く足音、周りの音が何もなく、同色に包まれた背景を歩く彼の姿が、彼の心情を物語るものとなっていた。





 …目的が果たされれば、また戻って来られる。

 そのためには、戦うしかない。




 「…あの星へ戻るために…」




 Space Fantasy Game

 第三章 あの星へ戻るために




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