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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第三章 あの星へ戻るために
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第45話




 「全艦隊、大気圏離脱完了。奪還部隊、ワープ完了」


 「こちらもワープ準備にかかる。全艦隊第一種戦闘配置!」



 その日、もう一つの世界は、決死の逆境策を実行にかかっていた。隕石落としの成功により更に勢い付く帝国軍に対し、共和国軍は艦隊を再編成し、本格的な攻撃に出ようとしていた。これが失敗すれば、彼らの運命は大きく傾く。舵を取った船体に氷河がぶつかり、ボロ船に変わってしまう光景など、誰も見たくはない。そうさせる訳にはいかない。理由があるからこそ、戦う。

 そして、この作戦を機に、共和国軍は本格的に反撃に転じようと考えていた。政府がそう言う前に、軍隊がそうするのである。




 火星と地球の間の宙域で展開する、帝国軍艦隊。地球を目前にして、大規模な補給と補修を受けていた。彼らとて戦い続けることは不可能で、負担軽減と万全の状態で戦うために、準備を進めていた。武装の修理、強化、食料品や医薬品の補充、補給路の確保のための艦隊配置など、やることは沢山あった。その作業が進められ、それが完了し次第、本格的な攻撃に出ることが決定されていた。その作戦が終了した時、地球は帝国の手に落ちるかどうかが、インターネット上では注目されていた。オンラインゲームの情報を取り扱うゲーマーズニュースも、専門記事にして大々的に取り上げた。


 その、矢先の出来事であった。



 「…ん?」

 「どうした?なんかあったか?」

 「い、いや微妙に空間の歪みが見えた気がしてな?」

 「なーによくあることだろう。バグか何かじゃないのか?」



 次の瞬間。突如爆音にも似た音を周囲に響かせ、そして突如激しく艦内が揺れる。最前線に配置していた偵察艦隊を襲った、突然の状況。何が起こったのか全く分からず、突然爆発に巻き込まれて爆散する戦艦もあった。戦艦内部のエンジンに異常でもあったのか、と「誤認」するほど、突然のものであった。しかし、司令本部のレーダーが、ハッキリとした事実を捉えた。



 「ね、熱源無数に発生!!」

 「なんだと…回避だ!!」



 先に偵察艦隊が確認した、微妙な空間の歪みは、共和国軍艦隊が小型ワープで接近し、ワープアウトした証拠であった。距離が長ければ長いほど、エネルギーも浪費し空間軸もぶれる。今回はその距離が短いが為に、発見が遅れたのである。ワープアウトする直前には、既に共和国軍の全艦隊は第一種戦闘配置を完了させており、ミサイルの雨を降らせることに成功した。無慈悲にもターゲットをロックオンしたミサイル群は、明確な攻撃意思を持って数の嵐を見せつけた。



 「し、至急木星宙域に連絡を入れろ!」

 「入れてどうするんですか!」

 「増援を要請しろ!敵は本格的な反撃に出るつもりだ!!それから、大佐にも連絡を入れろ!」


 「大佐はまだログインしていません!!」

 「こんな時に…迎撃態勢!!」



 かつて、共和国艦隊は幾度も奇襲を味わった。突然レーダーに無数の敵が現れ、集中砲火を浴びる。その恐怖を、共和国のプレイヤーはよく知っている。逆に、帝国軍はいつも攻め込む側として、その攻撃を楽しみながら無慈悲に続けていた。しかし、この作戦で逆の立場を経験することになり、このゲームの本質たる戦争の脅威を、はっきりと自覚することになる。ミサイル攻撃は見事に成功し、前面に展開していた偵察艦隊はほぼ全滅した。他の艦隊もすぐに攻撃準備に取り掛かったが、あまりに攻撃の勢いが強いために、思うように統制がとれず混乱をきたした。



 「敵艦隊、動きが鈍くなりました!」

 「混乱しているな。よし、接近して艦隊戦に持ち込む。第二艦隊、第一波の空戦部隊を出撃」



 特に最前線に展開していた敵艦隊は混乱を極め、我先にと戦場を離脱しようとした。補給を受けていた最中でもあり、作業を急に中断させ人員を収容し、離脱するまでに時間を要した。離脱する前に撃沈させられる戦艦が多数発生し、さらに無秩序に後退することによって、味方艦同士と接触して爆散するという醜態も見せつけていた。今まで圧倒的な強さを誇っていた帝国軍にも、このような姿があるのだということを彼らは知り、ある意味でホッとした。真正面から堂々と戦えば、どうせ勝てるものではない。絡め手を利用して一気に攻め上がる。その最初の段階は見事に成功した。



 「ケン少佐、敵の通信傍受は出来てるか?」

 「バッチリです。敵は増援を要請しています」


 「…かかった。まだ確定された訳じゃない、気を引き締めよう」



 帝国軍内は、補給中のタイミングを襲われたことによって、自分たちの作業が敵に露呈していたのではないか、と疑う者が続出した。それほどタイミングが良かったと言える。まさか軍内部に内通者がいるのではないか、と言う人がいるくらいであった。だが、実際のところ補給に関しては予測といったものに過ぎず、確証はなかった。ユラにとっては、相手が先制攻撃して来なくなったタイミングこそが、補給線が長くなりすぎてるために、態勢を整えている時間だろう、と考えていたのだ。今回は、それが見事に的中したということになる。



 「木星宙域より通信!増援艦隊の到着はあと20分後!」

 「よし…それさえ乗り切れば…!!」



 旗艦ダビーレ 艦橋



 「恐らくトルク中佐たちも、木星から傍受しているとは思うが、念のため暗号通信で送っておこう」


 「はっ、直ちに」



 一方、この時既にアレンたちの奪還部隊はワープアウトしており、一度も発見されることのなかった、スペースベルトの共和国軍基地部隊と合流し、今か今かとタイミングを待っていた。全艦戦闘配置についており、緊迫した状況が続いている。自分たちの攻撃次第で、大きく共和国の運命は変わる。重圧は確かに存在していた。



 「通信を傍受。木星宙域から、約70隻の増援艦隊がワープに入ったとのこと」


 「アレン、いよいよだ。攻め方は決まっているな?」


 「はい。増援艦隊以外の戦艦は出撃していません。彼らを外に出せば、我々は負けてしまいます。なので、そのまま艦隊にはコンクリートの下敷きになってもらいましょう。…誘導弾用意!」



 目標をロックしたうえで、誘導弾を投下して一気に殲滅にかかる。まさか帝国軍がこんなにも近くに共和国軍がいるとは想定していないだろう、という考えから、彼はここでも奇襲の作戦を実行することにしていた。誘導弾を無数に投下した後、一気に主要基地を制圧する。艦隊の出入り口となる部分は完全に閉鎖し、内部から制圧をかける。こうすることによって、機能に甚大な被害を与えることなく、掌握を目指す。激しい抵抗が予想されるが、強襲揚陸艦による武装も彼らにはある。そして、空戦部隊を使いながら高速で対空砲などを撃破し一気になだれ込む。



 「今だ!全艦突撃!!」



 強襲揚陸艦も、戦闘空母も、そして巡洋戦艦も最大出力で小惑星帯の表面から離脱し、一気に衛星エウロパに近づいた。そして爆弾を各艦が一斉に投下し始め、誘導弾は目標に向かって静かに飛び続ける。



 「れ、レーダーに反応!敵です!!」

 「は!?なぜ奴らがこんなところにいる!?」

 「分かりません!数は不明!!」



 次の瞬間、突如目の前が真っ白になり、痛みも何も感じる間もなく、彼らは死体となって四散した。冷たい雪が静かに降る、寒い衛星エウロパの表面に大量の黒い物体が真上から降り注ぎ、突然死亡する。悲劇以外の何ものでもなかった。帝国にとってはここに共和国が攻めてくること自体が、考えられない事実であった。地球圏で戦いを続けているのに、木星でこのような事態になるという想定は、全くなかったのである。衛星エウロパもそれなりの大きさを持つが、アレンは部隊を分けて主要な基地ほぼすべてに、ほぼ同じタイミングで攻撃を仕掛けるように指示した。そして、それは面白いほど上手く成功したのである。



 「派手に都市開発したようだな…もうこの地に帝国カラーは必要ない。第一に軍基地を制圧、次に銀行、放送局、税務局、都市開発機構、鉄道、大型道路、民間港、国家事務所、見落としないよう制圧しろ!…中佐、自分も軍基地の制圧に向かいます」


 「頼む!…おっと、敵の戦闘艇部隊のお出ましだ。対空戦闘用意!」



 アレンは指示を飛ばしたうえで、すぐに戦闘空母の戦闘艇デッキへ向かった。ダビーレにあったデルタアースも、今はこちらの作戦のために、戦闘空母に格納されている。敵の戦闘艇部隊が接近している警戒警報が鳴らされると、彼の緊張感もまた一段と増した。しかし、全体を見渡せば最初の段階での奇襲は成功したため、活気とやる気に満ち溢れていた。コックピットに乗りすぐにエンジンを始動させる。武器管制、機体制御、手袋、操縦桿、ウィンドウ、すべてを確認した。



 「デルタアース出ます!」



 デルタアースを固定していたものが外れ、少々の衝撃と共に宇宙空間に浮いた。既に衛星の表面に展開済みの奪還部隊は、一気にエウロパへと下降した。強襲揚陸艦から幾つもの大型戦車が離脱し、地表へ降下する。アレンは出撃して早速敵の戦闘艇部隊を発見する。相手の期待の動きが機敏で激しい様子から、アレンはコックピット内にあるブラスターの出力レバーを左に押した。そして、もう一つボタンを押した。出力を抑えながら、彼はブラスターを単発式から連射式に変えた。今までの戦闘では、ボタン一つで一発であったが、今度は押し続けることによって、エネルギーのある限り射出され続ける。もちろん連射なので次弾射出までの時間が短く、当然狙いを定める技術が必要となる。灰色の機体が6機ほど見えた時点で彼は迎撃し始める。少量のエネルギーではあるが、いつも描く速度と変わりなく線は向かっていき、あっという間に5発を命中させ、2機を撃墜した。



 「こいつ…まさか最近噂の、敵パイロットじゃないのか…?」


 「デルタ翼のエースパイロットか…!!」


 「あんなのに勝てるかよ!!…ぐはあぁっ!!」




 恐らく連射モードにしなくても、きっちりアレンなら片づけられたことだろう。しかし、戦闘による経験から慣れた、彼の照準合わせは見事なもので、移動を続けながら攻撃をしてくる敵機に対し、正確に2,3発を命中させていた。無論外れることもあるが、外している数のほうが少ないように見えた。あまりに突然すぎる戦いに、帝国軍はこちらも混乱していた。既に陸戦部隊が降下済みで、艦隊戦ではなく白兵戦が展開される。思ってもいなかった事実である。



 「アレン中尉。陸戦部隊が基地への侵入に成功しました。そのまま援護願います」


 「了解した。上空の支援が済み次第、俺も下に降りる」




 二正面作戦は、こうして実現する。この作戦が、共和国軍の全体士気を大きく高め、そして反撃の烽火への第一歩となる。




 Space Fantasy Game

 ―本質に、新たな展開を―





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