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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第三章 あの星へ戻るために
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第44話



 「ある意味危険な状況を利用することになる。失敗すれば俺たちは今度こそ破滅する。その一か八か、作戦を実行することが決まった」



 二正面作戦。

共和国軍が帝国軍相手に、幾つもの戦線で戦わなければならない状況を、共和国軍があえてその状況を作り出すという、大胆な行動に出ることが決定された。この会議では政府首脳部が再び軍に圧力をかけ、そうするように積極的な発言を求めた、と言う。自分たちは戦わないのに、まるで私欲を晴らすかのように、軍人たちに戦争へ行け、というのだ。

 しかし、この二正面作戦は、既にアレンの構想にもあった。もしこの一方的な状況を打開できるとすれば、いまだ多少の戦力が残っている小惑星帯、スペースベルトの共和国艦隊を利用し、地球圏に展開する帝国軍を後ろから挟み込むか、あるいは目の前にある木星を取り戻して、急ピッチで生産能力を回復させるか、であった。アレンの考えはその二つのどちらかであったが、首脳部の決定は後者であった。しかし、問題点は二正面作戦を実行するほどの戦力が、彼らには整っていないということであった。今帝国軍は侵攻を緩めているが、これがいつ猛攻に転ずるか分かったものではない。なので、共和国軍としては早期打開のために、この作戦を実行することを決めたのである。

 この作戦に関しては、アレンも最初から同意していた。いつまでもやられ続けている状況をもし、この段階で変えることができれば、という期待が彼にはあった。問題点を克服するための努力をしようという、前向きな気持ちもあった。



 「そこで、だ。アレンには、木星奪還の戦闘隊長として、衛星エウロパ、イオなどの諸衛星に行ってほしい」


 「俺が隊長、ですか!?」


 「そうだ。私からも、ぜひお願いしたい」



 ユラが話した。この作戦の詳細は今後微調整することが考えられるが、ユラの作戦指示も当然飛び出す。彼は今後全軍の司令官を務めることになるのだから。第一艦隊から第三艦隊までしか存在しなくなった、共和国海軍。今回の衛星攻撃作戦は、第一艦隊の空戦部隊と、第三艦隊の陸戦部隊と兵器を総動員して行われる。その長たる位置にアレンをあてようとした。ユラやサイクスとしては、これがアレンにとって良い形での経験と刺激になるだろうと考えていた。



 「何も、そんなに気負うことはない。戦況をよく見て、どこをどう攻撃するか、指示を出せばいい」


 「他は全艦隊をもって、帝国軍を攻撃する。大規模な戦闘が発生すれば、もしかすると敵は木星宙域から応援を要請する可能性もある。そうなれば、より一層取り返す機会は多くなる」


 「しかし、我々の部隊をどう送り出すつもりですか?戦艦で通ればすぐ発見されますし…」




 だが、アレンはそこで気づいた。先日の悲劇を思い返した。帝国軍は、恐らくスペースベルトにあった小惑星を利用し、ワープ装置を取り付けて落下させた。さらにルーナ・ツヴァイには核パルスエンジンも搭載されていた。それほどの技術をこちらも再現し、同じようにして部隊を木星宙域まで送り出すことに成功すれば、二正面作戦の実行が可能となる。



 「奴らが瞬間物質転送をするんだったら、俺たちも真似してやればいい。こちらは戦闘を引き付ける。その間に、すぐ衛星に降下して制圧するんだ。主要都市の防衛機能を掌握すれば、こっちのもんだ」


 「…分かりました。微力を尽くしましょう」



 二正面作戦の全貌は、共和国軍の兵士にすぐ開示された。実行が二日後となっており、かなり急を要する作戦ではあるが、やってみる価値はある、とアレンは判断した。この機会を失われたら、共和国軍は消滅への道を辿るだろう。それは避けなくてはならなかった。

 多くの人の期待に応える、その重圧に負けてはならない。アレンは気持ちを冷静に落ち着けようとしていた。



 …ルーナセーバーの、出番か。




 8月上旬。

その日の夜に、作戦決行が予定されている。零治は、夜の6時までにログインすることを考えて、それまでに生活面での片付けをしていた。数日分の食糧を買いに外へ出かける。嫌というくらい暑い季節に外に出るのは、正直しんどい、と思うのが彼であった。夕方も、蝉の鳴き声が聞こえる。夕焼け色に染まる空を眺めるのは、少し落ち着く。

 店の中へ入れば、まるで天国に来たかのような幸せ感を得られる。外の暑さに比べれば、ここは冬ぐらいな勢いで寒いと言えるかもしれない。野菜、飲み物、肉類、カップラーメン、缶詰…あらゆるものをかごにつめている時、彼は突然背中に違和感を感じた。



 「あ、永倉さん。久しぶり」

 「久しぶりだねーっ!」




 そこで俺は偶然にも、永倉さんに会った。めっちゃ涼しそうな格好で羨ましい。そういえば、前に行ってた夏休みどっかに行こう計画は、いつ発動するんだろうか。その時、あっちの世界の状況はどうなってるかな。重倉永倉さんペアと、俺とテツか。まぁ悪くはないだろうな。とにかくそういうことがあるんだったら、楽しんでみたいという気持ちはある。

 昔とは違ってな。



 「ハルが暇になるのが、8月の10日くらいからだって、言ってたよ!お盆前に行きたいなーって、私は思ってる!」


 「うん、良さそうだな。ぜひテツにも伝えてあげてほしい。奴が動き出せば、もう確定だろうさ」


 「そうだね、原田君なら確かにっ」



 まぁ俺が言ってもいいんだけどね。これでお盆前に実行、という感じで予定を空けられるな。それまでに色々片づけて、落ち着けるといいな。



 「少し持つか?」

 「良いの?ありがとっ」



 それからの二人は、特に何でもない会話をひたすら続けながら、帰路についた。零治もまだ時間はある。永倉さんがこの後何をするのかは、彼には当然分からないから、寄り道などはしないでそのまま帰ろうと思っていた。彼は彼女の買い物袋を一部持ち、それを家まで彼女を送るという目的も含めて、行くことにした。数十分が経過し、彼女の自宅が見えてきた。外観が少々古びた建物ではあるが、アパートであることに変わりはない。



 「あ、そうか一人暮らしだったか」

 「うん。入る?入っちゃう?」

 「行きたいところだが、用事につき今度にしよう」

 「よーしじゃあっ、手荷物部屋まではお願いしますっ」



 すぐ帰る、とは言ったが入ることになった。玄関先に置いても良かったんだろうけど、これ意外と重たいし、まぁいいか。1LDKか、一人には十分すぎる大きさだろうな。いやそんなに大きいとも言えないだろうけど。とりあえず、買い物袋を机の上に置き、中に入ってたものを一緒に片付けた。やっぱり永倉さんも、一度の買い物で数日分を過ごすっぽいな。学校行ってた頃は一々買い物してるのも面倒だろうからね。…俺だけ?



 「ありがとう。助かったよ」

 「大丈夫さ。そうしたら、俺はこれで失礼するよ」

 「うん。またねっ」



 ドアを閉める前、元気に、そして笑顔で手を振る姿を、彼ははっきりと見た。そんな彼女の姿を見たとき、何か心の中で揺れ動くものがあった。彼としても疑問に思うぐらい、些細なものであったかもしれない。

 その後彼も帰宅し、夜ご飯を済ませて、18時の15分前にはログインした。システムには次回アップデート先行情報が公開されており、期間限定イベント[ログインボーナスキャンペーン]を開催するようだ。一日一回のログインを二週間続けると、システムから報酬を受け取ることが出来る、という。報酬の中身は人によって異なり、またその種類も公開されていないというところが、キャンペーンにチャレンジさせる意欲を高める。



 「間に合いましたか。既にワープ転送の用意もできています」

 「ありがとうございます。離陸した後、高度2万8千フィート付近で展開すると聞きましたが…」


 「予定通りでお願いします。地球の大気圏から出なければ、隣の宙域にいる帝国軍に察知はされないですからね」


 「便利なものです」



 今回の二正面作戦で用意されたのが、陸戦部隊を移送するための、強襲揚陸艦であった。非常に装甲が厚く、ブラスター砲が来てもある程度耐えることが出来る。また艦上部にはブラスター砲を2門、実弾機銃が6門設置されている。そして更に、陸戦用の大型戦車を搭乗させ、敵地への降下と同時に展開することが予定されている。緊急で用意されたものではあるが、元々共和国軍も帝国本土に侵攻することを想定した武力であることは、見て明らかだった。

 空戦部隊の移送には、巡洋戦艦と1隻の戦闘空母が用意された。アレンは、この戦闘空母で指揮をすることになる。



 「アレン中尉、私が今回の木星奪還作戦の総指揮を執る、トルク中佐だ。よろしく頼むよ」


 「よろしくお願いします」


 「大尉への昇進はすでに決まってるが、まだ間に合わないそうだ。今回は中尉として専念してくれよな」


 「一生階級が上がらなくても良いんですよ」



 二人は冗談を言い合いながら笑った。トルク中佐も戦闘空母に乗艦し、アレンと共に戦闘指揮を行う。アレンが実戦に出撃することは確定しているので、その間彼を補助しつつ、情報を与えて次の攻撃、と段階を踏もうと考えていた。

 出撃時刻の、リアルタイム19時。一般家庭はちょうど夕食時であっただろう。SFGの特徴の一つでは、軍は上層部から各プレイヤーにメールを送信し、作戦の実行にあたってログインする時間を指定し伝えることができる。NPCだけでも戦闘は開始できるが、状況変化にはプレイヤーの要素が絶対に必要であった。



 「閣下。奪還部隊の方も、用意ができたそうです」

 「よし。先発してもらうよう、彼らに通達」

 「はっ。…いよいよですな、閣下」


 「そうだね。これが成功すれば、帝国軍に対して反撃の烽火を上げることが出来る…勝ちたいね、ここは」



 再び、コロッセオの郊外から爆音が幾つも響き渡る。19時をもって、再編成された艦隊が地球の至る所から出撃し始める。アレンらが指揮することになっている奪還部隊も同時に離陸し、そして高度を上げたうえで瞬間物質転送を実行する。ワープアウトに時間がかかるという条件下で、遠距離ワープを実現させる。この間に、共和国軍が地球圏にいる帝国軍に対して大規模な攻勢をかける。ほぼ全軍と見立てたこの大胆かつ大規模な作戦が、今実行に移される。



 「全艦出力最大。大気圏離脱後、小型ワープで一気に帝国軍に迫る」





 Space Fantasy Game

 ―決死の、逆境策―




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