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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第三章 あの星へ戻るために
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第41話





 「パストーレは…撃沈しました」



 共和国軍の組織的な抵抗が組織的でなくなった時、軍はその力を失うだろう。それは仮想世界にいるプレイヤーやNPC同士で話されたのみならず、ネット上に展開されている幾つもの掲示板で、そう言われているのだ。帝国軍は猛攻を続け、その勢いのまま共和国軍を圧倒し続けている。地球圏での戦闘は、その猛攻の前に加速し、共和国の陰りは一層増した。このままでは共和国そのものが帝国に乗っ取られることは、誰の目にも明らかであった。そうさせないために戦うプレイヤーたちの中にも、この状況ではどうしようもない、と諦めるくらいであった。

 それでもなお、彼らの戦いは続く。アレンも、苦しい戦況の中で戦果をあげ続けていた。心の中にはNPCを「殺害」するということへの意識を持ち続けながら、目の前の現実を直視していた。ゲームであっても、しなくてはならないことがある。もし軍人でなければ、こうも思うことは無かっただろうか、と彼は思う。

 巡洋戦艦パストーレの撃沈により、アレンの帰る母艦は消滅した。そして、自分たちと同じようにして働いてきたNPCクルーも、この世から消え去った。考えたくもない現実であった。目を背きたくなるような事実であった。しかし、どう足掻いたとしても、過ぎた時間は取り戻せないのである。



 「…もう、これ以上は…」


 「分かっている。それでも…それでも、俺たちは戦うのをやめてはならない。なんとかしてくれる、そう願ってる人がいる限りは」



 帝国軍艦隊、旗艦。戦闘の勝利による盛り上がりは最高潮を迎えていた。実戦部隊を支える補給部隊や整備兵たちからの声は、地球圏での戦闘を最前線で行っているギニアス大佐のもとにも届いた。兵士たちは、直属の上司が非常に有能であることなどを認め、全面的に信用していた。全く負けなかったとは言い難いが、それでもここまで辿り着いたことは、実力が相当なものであることの証拠とも言えた。彼だけの力ではない。しかし、彼によって士気が向上しているとすれば、それもある意味では実力の作用と言うことが出来るのかもしれない。



 「ワープには無事に入ったそうです。戦艦を移動させるのとは違いますから、少々時間を要するとのことです」


 「そうだろうな。すぐに次の戦闘に出る。用意を怠るな」



 スペースベルトを利用した、帝国軍の作戦。ルーナ・ツヴァイと呼ばれる一つの小惑星。現実でこのようなことが起これば、恐らくは甚大な被害が発生するだろう。

 ヘルメットを右手に持ったギニアスは、ブリーフィングルームへ向かうまでに、参謀勤務の人からドリンクをもらい、そうして司令室の中へと入って行く。暗い空間の中、幾つもの機械が動き、その光で室内を照らしていた。一人の高級士官がギニアスに薄い紙に液晶モニターがついたものを渡して、彼はそれを見る。



 「ルーナ・ツヴァイがワープアウトしてから、大急ぎで核パルスエンジンに動力を渡します。この作業が時間を要するので、この間大佐たちには、共和国軍を押さえていただきたい」


 「中々、無茶を言う。成功すれば確かに落ちるのだな?」


 「はっ、間違いありません。重要なのは、その時間です。ワープ後もすぐに引力に乗りますが…エンジン点火しなければ、いくら共和国と言えど阻止する時間は十分にあります」



 いくら共和国軍でも、その事実を知れば間違いなく抵抗する。それも今まで以上に激しい戦闘になる可能性がある。ギニアスはそう考えた。ワープアウトしてから作戦が完了するまで数時間。プレイヤーの集中力はそこまで持つとは思えない。お互いに疲弊することは、避けられないだろう。



 「私も出よう。相手にも、中々腕利きがいるしな」

 「本当ですか?大佐…」

 「大丈夫だ。あしらうくらいの余裕はある」



 ギニアスがそういうと、その場にある机の上に紙を置き、室内のレーダーを確認し始めた。帝国軍艦隊も、補給が終われば再び戦闘が始まる。そのわずかな時間の間に、プレイヤーに関しては現実の体に戻って、プレイヤーも補給をする。本当に働いているかのように、休憩時間を使い、そして再び戻ってくる。

 このゲームの中で、どこまで敵にとって悪役でいられるか。逆に彼は、敵にその悪役を求めていた。そういう意味では、アレンとの接敵はギニアスにとって刺激的であった。



 「…あの男…よし、出るぞ」



 旗艦、戦闘艇デッキ。床にタイヤを付けてその巨体を支えている。そんな光景が数多く広がっている。広々とした戦闘艇デッキでは、整備兵たちが常に動き回りながら、機体の調整や武装の強化などを同時に行っている。ギニアスはヘルメットをかぶり、黒の機体に赤いコックピットの彼専用機の中へと入る。


 「大佐!先行します!!」

 「おう。ヒース、頼むぞ」



 戦闘の最中に作戦内容を聞く空戦部隊、ヒース大尉を第一波とする帝国軍戦闘艇部隊が出撃していく。NPCの中でも高い階級にあるヒースも、ここ数ヶ月の戦闘で戦果をあげ続けてきた。プレイヤーだけが活躍するのがゲームではない。SFGはNPCにも魅力を求めている。ヒースが本当の人間のように、活躍していく姿は、このゲームの特徴を捉えたものと言えるのかもしれない。

 戦闘艇がカタパルトを装着し、それを終えた瞬間に急加速する。現実の空母と似た発進方法だ。浮き上がり推進装置を作動させるまでは、すべてデッキにいる作業員に任せることになる。



 「部隊発進から3分後、ミサイル攻撃を始めます。…大佐、どうぞ!!」



 黒い空間、その遠くに光り輝く星々を見つめながら、赤のコックピットを持ったその機体は旗艦を離れていく。まるで迷彩をまとっているかのように見にくい機体も、そのコックピットが目印のようになっている。すぐに速度を上げ、第二波部隊として先導し始める。

 この時、共和国軍艦隊との距離はそう遠くは無かった。両艦隊とも戦場で補給を受ける形を取った。特に共和国軍にとっては、一度基地まで戻るという手もあったが、すぐに迎撃できるようこの態勢を選んだ。



 「熱源確認!到着時刻まであと30秒!」

 「もう来たか…弾幕張れ!各艦隊回避行動!…ケン、すぐに司令官を呼んでくれ!」



 短い時間の中で、再び激しい戦争が開始される。帝国軍艦隊が先に戦闘艇を出撃させ、そのあとすぐにミサイル攻撃に転じた。誘導ミサイルの雨が真正面から降り注いでくる。各艦はブラスター機銃による迎撃を開始し、ミサイルが着弾するより前に破壊を始めた。暗い宇宙空間、背後に綺麗な地球を構えながら、光が広がっていく。戦闘開始の一報は、すぐに空戦部隊にも知らされた。母艦を失ったアレンやフューリーたちは、旗艦ダビーレから出撃をする。コックピットに急いで乗って、ミサイル迎撃中に発進させる。加速時の負担をもろに受けながら、それでも屈することなく宇宙空間の中に飛び出していく。



 「またあの感じか。しかし…覚えがある」



 すぐ前に、アレンが戦った、あの相手。あの男の気配のようなものを感じ取り、それに反応しているように思えた。この察知できるような力は一体、どこから来ているのか。彼の疑問は恐らく、という形で既に解答が完了していた。ブルネイ隊長も、もういない。隊長の存在しないパストーレの空戦部隊は、後継ぎを決めぬまま出撃をする。ブルネイを撃墜したのは、間違いなくギニアスの乗る赤いコックピットの機体だった。



 「アレン、気を付けろよ。敵は嫌な感じだ」

 「分かるさ」



 お互いの戦闘艇から発する光が、宇宙空間の中で描画をし始め、そして互いに交錯したり、広げるなどしている。何本もの線が黒い空間を貫き、そして赤や黄色などといった別の色も発生させる。自分が知っているあの感覚が迫ってくる。アレンはそれを気にしながら、敵と対峙した。ただ真正面からブラスター砲を撃ち続けてくる者、高度差を付け上や下から攻撃をする者、戦い方は様々だが、アレンはいずれも相手が先に攻撃した場合に対応し、撃墜した。自分の後ろに敵の機体がレーダーで確認できると、アレンはコックピットから後ろを向き、位置を確認したうえで、60㎜バルカン砲を後ろに向かって撃ち放つ。動力異常を来した敵の戦闘艇は、もはや格好の餌食でしかなかった。アレンは機体を左に振り向け、ブラスター砲も同じく左に向け一発だけ放ち、敵機を撃墜した。

 アレンにとっては、普通のスコアであった。が、周りのプレイヤーたちにとっては、アレンが着々と離れ業をし始めているのが分かる。ただ単に機体の性能がそうさせた、とも言えるだろう。しかし、本当にそれだけだろうか。この苦しい戦況の中、戦いのコツを見出し、それを実戦で如何なく発揮できるよう、彼自身が成長してきたのではないか。



 彼がよく知る、あの者から教えてもらった、研ぎ澄まされた感覚と共に。



 「うっ…な、なんだ!?」

 「レーダーに歪みが…!!」



 「…この感覚は…!」



 真っ先に異常を感じ取った、戦場の兵士たち。アレンは自らが押し潰されるような強い衝撃を感覚として受け取った。何かが来る。間違いなく、近づいている。だが、あの男ではない。あの男でない、別の何かが。



 「空間から何かがワープアウト!…こ、これは!!」

 「ケン、どうしっ…」



 共和国軍艦隊、戦艦ダビーレ艦橋。空間の歪みから突如ワープアウトしてきた巨大な質量。その様子をハッキリと見ていた彼らは、それを見た瞬間驚愕した。自分たちがついこの間まで見てきた、世話にもなった、小惑星であった。ユラはその場の椅子から立ち上がり、その姿を見た。ハッキリと分かった、帝国軍の作戦の全貌。





 「…隕石落とし…」





 小惑星ルーナ・ツヴァイは、帝国軍の視点から言えば無事にワープアウトした。共和国軍の視点から言えば、とんでもないものが地球圏にやってきたのである。大きさはさほどないようにも思えるが、地球にあの隕石が落ちればただではすまない。一都市どころか、大陸レベルでの被害が予想される。露骨に作戦が明らかとなった今、帝国軍は何も恐れるものが無くなった。敵を倒し、核パルスエンジンを起動させ推力を得れば、ほぼ間違いなく作戦は終了する。


 「おいアレン!あいつは!!」

 「わ、分かってる。だが…ん?」



 小惑星のワープアウトと同時に、帝国軍は更に攻撃の手を強めた。艦砲射撃が次々と襲い掛かり、アレンとフューリーの二人は回避行動をとる。小惑星のすぐ近くには、恐らく実戦指揮を執る戦艦の姿もある。すると今度は、彼らのもとに帝国軍の戦闘艇部隊がやってきた。ヒース大尉である。



 「あれが大佐の言っていた…複数でやるぞ、味方の艦砲に巻き込まれるなよ!」


 「フューリー!この場は俺が何とかする。あの小惑星は恐らく外部からの攻撃では破壊出来ない。内部に入れないかどうか、何とか確認してくれ!」


 「分かった、任せろ」



 アレンは、すぐに小惑星を内部から破壊して、地球へ落着するのを阻止しようと考えた。既にユラが同じ手を考えており、艦隊の殲滅を中心にし始めた。それでも共和国軍の各艦艇は、小惑星に対する直接攻撃をし始めた。ミサイル群が無数に発生し、それが命中しても、外壁が次々と破壊されるだけで、根本的な解決には至っていない。

 戦場は、お互いの意志を関係無しに、苛烈さを極めた。



 「チッ…こんなことしてる場合じゃないってのに…」



 …だが、敵が腕の立つ奴であることは、間違いない…。



 今アレンが戦っているのは、帝国軍艦隊の戦闘艇部隊、第一波のヒース大尉だった。両者とも幾度も戦闘を経験し、空戦としての技術は持ち合わせている。アレンが攻撃すればヒースは回避し、またその逆も発生する。互角の戦いがその場で繰り広げられていた。

 しかし、アレンは早く先に進みたいと思っていた。このままここで時間を費やせば、ますます地球は危うくなる。自分の背後にある星が、外部からの攻撃手段で侵されようとしているのだ。



 「敵艦の攻撃が激しくて近づけません!!」

 「内部から爆発するしかないってのに…くそっ!!」

 「お、おい石がぁっ…!!」



 共和国軍の戦艦も戦闘艇も、苛烈なる攻撃によって次々と撃墜されていく。アレンが何とか隙を見つけ、とにかくも小惑星の表面に取りつくことが出来た。だが、その時だった。



 「あ、アレン少尉!小惑星に火が付きました!!」




 ルーナ・ツヴァイは、最後の仕事を始める。




 Space Fantasy Game

 ―絶望への、軌道―




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