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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第三章 あの星へ戻るために
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第40話




 「…黒の機体が1機!」



 明らかに戦闘艇のブラスター砲ではない、とアレンは思った。自分のそばを通り過ぎた一線は太く力強く、その威力を象徴するかのごとく迫力であった。一本の稲妻が駆け抜けるようにして通り過ぎ、味方機を一撃で大破に追い込んだ。アレンはすぐに報告にあった6時方向を向く。

 その瞬間、何か心の中を圧迫されるような衝撃を感じた。外部からの衝撃ではない。被弾した訳でもない。だが、彼にはこの感覚がわかっていた。そして、こんなにも強く反応するのは、久々であった。



 「この感じは…そっち!!」



 アレンはすぐに右斜め下に機首を振り向け、速度を上げて距離を取った。他の味方機も散会し、向かってくる鉄の塊を撃墜しようと攻撃を開始した。この時1機に対してアレンを含めた5機で一斉にブラスター砲を放ったが、どれも命中することは無かった。そして、相手の機体機動を見て、思わずその場で見た全員が驚愕した。あまりに、早すぎる。というよりは、回避する技術が熟練しているのだろうか。疑問さえ浮かぶその機動はいったいどのようにすれば実現するのか。再び黒い機体がブラスターを放つと、散会した味方機のコックピットを貫通し、その場で推力が停止し漂流状態となった。更に後方に回り込んだ味方機を把握し、すぐに迎撃態勢を取った。



 「後ろに向かって撃てるのか…!?」



 いや、この攻撃…俺も持ってる。これは実弾攻撃だ。180度回転バルカン砲であれば、今のような戦い方も出来る…敵とはいえ、この男できるやつだ。



 今度はアレン機が改めて攻撃を開始した。まるで後ろにも目があるかのように、追撃する形での攻撃を黒い機体はすべてかわしてしまっている。そんなような状況を見れば、普通に勝とうとするのは無理だ、と思い込んでしまうだろう。

 アレンも攻撃を回避しつつ、何とか直撃できるようにブラスター砲を撃ち続ける。が、相手の戦闘艇は彼と交戦しながら、他の味方機を撃墜している。瞬く間に4機が撃ち落されたこの状況は、先ほどアレンが撃墜した時間の比ではない。相手もアレンに照準を定めようと、向かってくる。黒の機体に赤いコックピット。まるでコックピットが相手の目のように見えてしまうその機体。瞬時に味方機を何機も落としてしまうほどの腕前。この時彼は、確かに目の前の強敵に立ち向かおうと、強気になっていた。この相手がNPCかもしれない、という可能性を考えることも捨て、味方の被害を減らそうという気持ちと、相手の機体を落としたいという気持ちが強く重なった。



 『いい腕前だ』


 「…何…?」



 それは、オープン回線で飛んできた声だった。アレンはすぐに回線をチェックしたが、味方から聞こえた音声ではなかった。たった一言と、この状況下。その言葉が相手の黒い機体を操るパイロットからの声であると理解するまで、そう時間を必要としなかった。

 ドッグファイト状態。アレンが逃げ、黒い機体が追いかける。後ろから攻撃を受け、それを必死に回避し続けるアレン。状況が好転する気配もなく、周りの状況が見えなくなりつつあった。目の前の戦闘が激化していれば、いろいろなところに目を配るのも難しくなる。



 帝国軍艦隊 旗艦内部



 「敵は惑星表面の超長距離砲で攻撃を仕掛けてきます」

 「誘導爆雷射出用意。大佐の位置は?」

 「はっ、現在火星宙域のDフィールドにて、敵機と交戦中。敵艦隊の攻撃レベルは落ちてきています」


 「…大佐。うまくいきそうですね」



 共和国軍は火星基地から宇宙空間にいる敵戦艦に向けて、長距離ブラスター砲を撃ち続けた。ほぼ命中せずまるで無邪気に引き金を引きまくる子供のような攻撃であったが、軽視することのなかった帝国軍艦隊は、旗艦の指示のもと、誘導爆雷を投下する。サイズが小さいのに誘導機能が標準装備されており、コース修正を自動的に行える優れものだ。そして、威力が大きいことも利点としてあげられる。投下後から5分後、突如大量の爆撃を受けた多くの基地は完全にひるんだ。



 「これ以上の維持は無理だ!」

 「直撃来ます!!」



 基地砲台は完全に破壊され、もはや制圧は時間の問題とされた。が、それでも帝国軍は攻撃をやめなかった、今までは爆雷による爆撃を中心としていたが、次なる攻撃は着弾と同時に多量の火災が発生し、高温で破壊、焼尽する焼夷弾を使用し始めた。一般人さえも巻き込んだ殺戮。現実世界での戦争も、このようなものが沢山繰り広げられたのだろうか。当時の光景を生で見た者はいなくとも、なんとなく分かってしまうところがある。

 艦隊も帝国軍艦隊の猛攻に遭い、増援部隊が次々に撃沈されていった。



 「戦闘艇デッキに直撃弾!」

 「パストーレ、後退します!」

 「だが今ここで退いては、部隊を回収できなくなる!!」


 「ま、また来ます!至近距離です!!」



 猛烈な砲火は、アレン機の母艦であるパストーレにも襲い掛かり、戦闘艇デッキと艦橋付近に直撃する。その瞬間からアレンはパストーレとの連絡が取れなくなった。ダメージコントロール機能が完全に故障し、大きな煙を上げながら速度を落としていく。



 「アレン!パストーレが!!」

 「フューリー…!?」



 パストーレが沈む…!?



 今まで一度も見たことがない、パストーレの姿。自分たちが母艦として使用し続けてきた巡洋戦艦が、見るに堪えないほど被弾し損傷している。制御不能に陥ったのか、左右上下に動く気配もなく、ただ流れに任されている状態となっていた。そうしている間にも、黒い機体がアレンを狙って攻撃をしけてくる。あらゆる方向を気にしたい、と思いつつも攻撃を避けるために集中するので、周りをよく確認できずにいる彼。しかし、この状況、間違いなく自分たちが不利になっていることは明らかだった。

 フューリーの機体も黒の機体に向け攻撃を開始する。決して威力が高い訳ではないブラスター砲を連射し、一発でも当てようと努力するが、その一発があまりに遠い。



 「強いな…これ以上やられるわけには…」


 『ならば、堂々と向かって来るがいい』


 「…あ、しまった」



 彼はオープン回線でのマイクを入れたまま、コックピットで一人話していた。そのため、黒の機体のパイロットにもその声が聞こえていた。相変わらず慣れた感覚は抜けきらない。しかし、アレンも追われるだけでなく、時々黒の機体を追って攻撃を仕掛ける時間が出来てきた。



 「中々どうして、帝国ばかり強い奴らが集まったんだろうな」


 『はじめは我々もそれに気付かなかった。だが今は違う。君は悔いているのか?』


 「…冗談はよせ」



 俺だって当然負けたくはない。常に勝ち続けられるとも思ってないが、総じて勝っていればそれでいい。だが今の状況、この状態から逆転できなければ、もう地球さえ守れなくなってしまう。そうなれば、あの時の感動は次いつになるか、分かったもんじゃない。

 …そうだ。確かに俺は相手を気にしている。NPCであれば、倒してしまえばもう生き返らない。だが、同じように思っている人が俺やこちら側の陣営だけとは、限らない。敵が俺たちを殺しにかかるなら、俺も敵を殺しにかかる。そうすれば、俺は味方を守りたいし、敵も何とか守りに来るだろう。


 一人では、何もできない。二人も三人も、協力がいる。その一人に、俺もならなくてはならない。




 「チッ…」


 再び強い感覚が彼に襲い掛かる。まるで徐々に迫ってくるように。明らかに圧倒されているという状況ではあっても、お互い傷一つ付けずに戦いを続けている。アレンは後ろを取ろうとした瞬間に、黒い機体の方向とは全く別の方向に向けてブラスター砲を撃ち放った。ドッグファイト状態が変化しようとしていたその時、姿勢制御をして攻撃に備えようとした黒の機体の移動方向にブラスター砲が行き、見事に命中する。しかし、その攻撃はわずかにかすっただけであった。このまま状況が動かないと思われたが、先制したのはアレンであった。



 「アレン、これ以上は無理だ!!」

 「…撤退するしかないのか…!?」



 もしこのまま空戦を続けていれば、どう状況が変化するか、それは他者にとっては見物であっただろう。しかし既に共和国軍艦隊は殲滅され、このままだと戦闘宙域の中で彼らが孤立する可能性があった。状況把握をしていたフューリーがすぐに呼びかけ、撤退するように言った。アレンとしては、このまま戦い続けて決着をつけたいところではあったが、自分たちが孤立して殺されてもどうしようもないとすぐに冷静になり、ドッグファイト最中に急速離脱をする。離脱の際、再び後ろにつかれて攻撃を受けないよう、60㎜のバルカンを撃ちながら後退する。



 「…ここまでか…」



 もう、これ以上防ぐことは出来ないのか?俺たちはいつも先制され、そして撃滅させられる。まだ運営が始まってそんなに時間が経っていないというのに、もう地球の目の前まで敵は来ている。これ以上、どうすることも出来ないのか?

 何かいい手は無いんだろうか。敵の攻勢を逸らすような、いや陽動でもいい、時間稼ぎでもいい。何か…何かないのか…。



 結局、共和国軍は帝国軍の猛攻の前に敗れ去り、ついに撤退先が地球と月になってしまった。地球圏へ帝国軍が迫ってくる。この情報は当然地球のプレイヤーたちにも伝わっている。状況が好転せず、このままでは地球も帝国軍にやられてしまう。後がない状況に共和国軍がどう対応するのか、あるいは、ほぼ最終目標と言っても良い地球を目の前に、帝国軍がどのような攻勢を仕掛けるのか、ネット上では既に話題となっていた。



 「事は迅速に進むものだ」

 「ですが予定通りです。こうして火星も抑えられたのですから」

 「ふむ…確かにそうだ」


 スペースベルト外縁部。地球圏にもっとも近い方面に位置する小惑星帯。遠くから見ればその姿さえ視認できるかどうか怪しいといったこの宙域。そこに、ある一つの小惑星があった。



 「エネルギー供給路は確実だろうな?」

 「大丈夫だ!後は無事向こうに辿り着いて点火すれば…」

 「よし、瞬間物質転送システム起動!」


 「起動確認!『ルーナ・ツヴァイ』転送!!」



 かつて、多くの生命がその恐怖を知った。数多くのドキュメントで、その絶望感が取り上げられた。



 今、その絶望をもう一つの世界で、実現させようとしていた…。



 Space Fantasy Game

 ―絶望の、地球圏―





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