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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第二章 本質の渦中へ
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37/150

第37話




 NPCの命を軽視していたという訳じゃない。あの人たちは、もうこのゲームでは俺たちと同じように、プレイヤーみたいなもんだ。インダストリアルヘブン社は、このゲーム世界でのNPCをリアルの俺たちと殆ど同じように作り出した。そして、今もNPCは自分たちの世界を生きてる。

 俺たちは、ゲームプレイヤーとして、たとえ何度死んでも、生き返ることが出来る。だが…NPCは、一度死んでしまったら、もう復活はしない。下級兵士の階級にあるNPCが死んでも気付かなかったが…いや、軽く見てたのかもしれない。本当の人間として、見るべきだと思う。



 …だが、このゲームの本質は何だ?

戦争を主体にしたこのゲーム。この話が知れ渡れば、俺たちプレイヤーとNPCとの間に、見えない壁が出来る。お互い分かち合うことのない、大きな隔たりが。




 そうなると知って、俺たちはそれでも、戦わなければならない…のか。




 『スペースベルト』

火星と木星との間には、小惑星帯が存在する。正確な個数は不明で、大きさも一つひとつ異なる。大きいものは直径100kmを超えるものもある。現実世界では、この小惑星帯が太陽系形成の重要なカギを握っているものとして、認識されている。

 SFGでは、このスペースベルトも再現した。居住区というものは存在しないが、共和国軍はこの無数に存在する小惑星帯を改造し、各地に補給基地を設けている。スペースベルトが無数に存在し、その個数や内部情報を得ることが難しいという予測で、残存している艦隊はそれぞれ分散して補給を行っていた。結局、第一、第二艦隊が敗れたことにより、形勢は一気に転落した。彼らの作戦がいとも簡単に見抜かれ、甚大な被害が発生したという情報は、共和国軍の市民を震撼させると共に、失望させた。帝國に流れようとする人がいたくらいである。

 アレンたちも同様に、補給を受けることになった。今回の戦闘、総合的に見れば負けにはなるが、アレンは夥しい戦果を挙げた。これにより、ゲーム権利が急上昇し、階級も上昇した。下士官から抜け出し、准尉、准士官として戦闘に参加することになった。アレンは元々空戦隊志望という訳ではなく、他の部隊へ転属したいと考えているほどであった。が、しかし、この昇進でまた宇宙を飛ぶことになりそうだ、と彼は頭の中で呆れながら辞令を受けた。



 「もう、特務はいらないな?」

 「特例という扱いは、あまり好きではありません」

 「でも事実だからな、このゲームの記録には残る。称号からは外すが」



 生き残った巡洋戦艦パストーレだが、傷一つ無く生還、という訳にもいかず、甲板の補強などを急ピッチで進めていた。スペースベルトの補給基地、とは言うが生産ラインも小規模ながら存在している。あまり事を大きくして、帝国軍に気付かれても困る、という心配はある。

 サイクスは、今回の戦いの後、大佐に昇進した。アレンのように実戦で戦うという機会はもう無いが、艦隊戦のアドバイザーや司令補佐、また補給や援護のタイミング調整など、沢山の仕事を担う。そのサイクスが、今アレンを連れて補給基地内部の兵器開発部を訪れていた。地球配属の第七艦隊も、このスペースベルトから物資を受け取る機会がある。



 「それで、今日はどのような用事ですか」

 「しばらくは、やはり戦闘艇要員として働いてもらう。仕方ない、こんな状況だ。あれだけの戦果を残していれば、下げる訳にもいかん」


 「…」



 確かに、俺は相手の戦艦を撃沈させた。…考えたくないな、ホント。もしNPCが本当に死ぬ、なんて話を知らなかったら、素直に喜んでただろう。ゲームのはずなのに、こんなに考え込まずに済んだはずだ。



 「そこで、アレンに専用機を渡そうと思ってな。開発中のものだが」

 「よろしいのですか?」

 「むしろ、あげたいくらいだ。腕の良い奴に使ってもらうというなら、兵器開発部も大喜びだよ」



 結局、俺は働かされるって訳だな。敵を倒せばゲーム権利もあがるし、報酬が入ることもある。それを本当は素直に喜んでいいんだろうが、もうそういう気持ちが表れるかどうかは、ちょっと分からないな。

 確かに、宇宙を飛んでいる間は楽しい。景色が綺麗だ。いやもう、景色なんてものじゃない。最初に見た地球ほどの感動は無くても、本当にその姿に見えてしまうんだから、リアルで宇宙旅行してるみたいだ。


 ここはゲームだからあれだけど、他の銀河系には、俺たちみたいな命を持つ奴が、いるんだろうか。帰って来れなくても良いから見てみたいって、望む人もいるだろうな…。



 二人は分厚い銀色塗装の扉から、大きな広間へ出た。目の前には黒い鉄の塊。分厚い構造を持ちつつ、翼にも見える二つの板は、本体の大きな胴体を力強く支えているように思える。更に小さいながら板の上部に、別のものも取り付けられており、第二の翼のようにも見える。塊の横にはバルカンのようなものが置かれ、その大きさに思わず驚く。ブラスター砲のようなものも見えた。アレンが先日まで使っていたものより、大きく見える。



 「これは…!」

 「新型戦闘艇。名をデルタアース、という」

 「デルタアース…中々、格好良いですね」



 デザインはすごいんだ。結局戦闘に行けば汚れたり傷ついたりはするんだけど、まぁ前より良いものが使えるのなら、悪いってことはないな。



 「アレン准尉ですね。お待ちしておりました。簡単に、機体の説明をしますがよろしいですか?」


 「あぁ、頼む」


 「はい。まず、以前まで使っていた機体と決定的に違う点を紹介します。その方が、分かりやすいと思うので。恐らく最大の特徴、と言えるでしょうが、この機体デルタアースは、2発エンジンと4つの推進装置を利用し、いつどこでも好きなように機動をスムーズ変えることが出来ます」



 つまり、あれか?速度が出てなくても、姿勢制御が出来るってことかな。スペースシャトルとかそのあたりなら、当たり前の技術なんだろうけど、こんな小さなものにそれを取り付けるのは難しいってことだろうか。よくある話かな。



 「普段は格納していますが、機体底部にはアンカーがあります。それを出せば、あらゆる場所に着陸可能となります。たとえば、岩肌とか絶壁とか、もちろん戦艦に張り付くようなことも」



 「な、なるほど」



 果たして使えるのか!?

まず宇宙空間に着陸するような場所なんて船しかないだろう…あ、いや、一様小惑星帯にも着陸できるか。でも使い方次第だな。敵の目をくらますのに停止するとかは出来るかもしれんが、その分危険もあるだろう…。



 「武装は、60㎜バルカンを追加しました。これはブラスターではなく、実弾使用のものです。使い方は特に指定してませんが、アレン准尉のセンスに任せます」


 「これにブラスター砲も積むのか?機体重量が気になるが…」

 「推進装置やエンジンもより高い出力を得られるよう、設計を抜本的に見直しました。実戦次第ですが、試作機ということもありますので、これが今後量産される可能性もあります」



 話によると、この胴体を支えてる三角形…いやそんなこと言ったら失礼なんだろうけど、まぁその形の主翼はデルタ翼と呼ばれるものらしい。コックピットに近いとこについてる小さい翼も役に立つようで、この二つが今までにない機動性を生み出す、らしい。その辺りのメカに詳しくはないから、実際に確かめてみるしかないな。

 …となれば、また戦闘が起こるという前提で話は進むことになる。まぁ、避けられないだろうしな。残念ながら。



 「つまり、テストパイロットという訳ですね」

 「そんなところだ。頼むから傷つけずに持って帰って来いよ?」



 …だとしたら、俺に頼むのは間違いだと思うんだけどな…。




 巡洋戦艦パストーレで聞いた、衝撃的な事実。NPCは自分たちと同じように、生き返ることが無い。一度死んでしまえば、このゲームから存在を葬り去られる。そうと分かっていても、帝国軍と共和国軍の戦いが収まる訳がない。一度抜かれた剣は、血塗られずして収まるものではないのだ。

 自分が共和国の人としてこのゲームで暮らし、そして共和国のために軍人となったのなら、彼もまた戦わなくてはならなかった。



 夏休みに入って、そう時間が経たない頃に起きた出来事。運営が始まってから問題とされる、PK集団の行き過ぎた行為。そして、戦況の大規模な変化。更に撤退を続ける共和国軍は、背後に地球という青い星を構え、今度こそ負けられない戦いに挑もうとしていた。それに対し帝国軍は、木星宙域のほぼ全域を確保した。この時、幾つもある共和国軍の小惑星帯基地の存在に気付かなかったことが、後々思わぬ方向で影響を受けることになるのだが、今の彼ら、いやゲームをプレイしている人たち全員には、分かるようなものではなかった。





 ゲームにしては、あまりに重すぎた。少なくとも、企画にではなく、プレイヤーに対しては。初め、まだ右も左も分からない頃、彼に教えたあの豪傑な男が言ったような世界に、あるいはある老人が言った現実に、彼も、そして他の多くの人も、飲み込まれていく。



 純粋にゲームを楽しみたいという気持ちと、自分の手で失わせることへの恐怖。時に前者が、時に後者がお互いを支配し、意識の波の中で確かに、新たな波長を生み出していた。





 そして、仮想世界にある現実は、仮想世界を超えた現実世界に、新たな波を打ち出すのだ。





 Space Fantasy Game

 第二章 ―本質の渦中へ―





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