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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第二章 本質の渦中へ
35/150

第35話




 「もしアレンに艦隊指揮の権限か何かがあれば、この件司令部に伝えてたか?」

 「当然さ。無駄な戦いになる前にね」



 無駄かどうかは、実際のところ戦闘が始まる前に決まっていることがあれば、歴史がそれを証言する場合もある。現実世界でもその二手に分かれるだろうが、ゲームではどうだろうか。戦いに備えるために、自分の資金で戦闘を有利にしようとするプレイヤーも当然いる。すべて軍任せにする人も当然いるのだが、人によってプレイスタイルというものは異なるものである。

 もし無駄な戦闘だとはじめから分かっているのなら、わざわざ自分のコロンを投資してまで強化しようとは思わないだろう。



 「アレン、今ゲーム権利幾つだ?」

 「んーと…」



 そうか。もう60にもなるのか。惑星から脱出してきたり、PK集団の襲撃を流したり、作業してたり…そうしている間にこんなに上がったんだな。2ヶ月でこれくらいか。ちなみにフューリーは俺より少し上の67みたいだ。十万人のプレイヤーがいるなら、誰が一番上なのか…そういや、そういう情報って、運営の公式サイトとかで載ってないんだろうか。何せトッププレイヤーの座に座りたがる人だっているだろうから。



 「司令官クラスは、もっと上だと考えて良いだろう。まぁ、そういう人たちはこのゲームが始まってすぐに軍に入ったとか、そういう人なんだろうけどな。アレンみたいに、地球でいろいろしてきた経験がないから、ある意味新鮮なんだろう」


 「なるほどね…」



 トライアングル作戦が実行開始されてから、1時間30分が経過した。ゲームの連続ログイン時間にしても、大した時間の量ではない。しかし、戦闘における不安はやはりどの艦隊も共通して存在していた。現在木星周囲の宙域を航行中なのは、第七、第八連合艦隊のみである。



 「いまだ味方とは連絡がつきません」

 「ここまで来れば、敵は電波妨害出来る手段を持ってると、考えて良いだろう。レーダーに映る距離まで接近しないと、先制攻撃をすることも、防御することも出来ないって訳だ」


 「目と勘に頼るしかないということですか…」

 「まあ、勘は置いても、そうだね…偵察艦を一隻用意しよう」



 実際偵察に使われたのは巡洋戦艦であったが、ユラは第八艦隊の司令官に話を持ちかけ、第八艦隊に所属する一隻を、先行させて偵察にあたらせた。レーダーが近距離でしか機能しないという状況であれば、目に頼る方が手っ取り早いと考えたのである。

 結局、第二艦隊からの通信が彼らにもたらされることはなかったが、ユラの判断は正確に敵の意図を読むに至った。



 「前方に敵艦隊発見!…との連絡。数およそ100かそれ以上との推定」

 「んー、まともに当たれば数で負ける。ここは初めから逃げたほうが良い」

 「しかし閣下。それではまるで敵前逃亡に…」


 「あれだけの数を一度に動かして、しかも交戦していないんだ。既に、第一、第二艦隊は壊滅の危機にある。そして更にこちらは数の上で相手より劣る。戦いに勝てる可能性は、低い。勝算のない戦いは出来るだけ、したくないんだ」



 ユラは艦橋内部でそう言うと、すぐに第八艦隊の司令官と連絡を取った。戦わずして逃げるという訳にもいかないが、後退しながら味方基地の援護が届く位置まで下がろうというのが、ユラの考えであった。司令官もそれを理解し、すぐに後退準備に取り掛かった。

 それでも、帝国軍艦隊はハッキリと共和国軍艦隊をその射程に捉える。偵察艦が発見してから、わずか15分後のことであった。



 「艦砲射撃、開始」

 「撃て!!」



 両艦隊はほぼ同時刻にブラスター砲の撃ち合いを開始する。真っ暗闇、背後に見える木星を背景に戦闘は開始される。ほぼはじめの段階から、共和国軍艦隊は後退を目的とした戦闘を開始した。この機会を逃すまい、と帝国軍は一気に殺到してくる。偵察艦の報告では、帝国軍艦隊の総数は約100ほどであると伝えられていたが、実際には130隻ほどであった。偵察部隊に非は無い。

 一斉射撃開始から5分後、すぐに艦隊は小型戦闘艇を出撃させるよう指示した。



 「良いか、味方に当てるんじゃないぞ。小さいからって、ブラスター砲なんぞ当たったらひとたまりもないからな?」


 「で、でも…」


 「大丈夫だ。やれると信じてりゃ、いけるもんさ。肩を楽にな」



 巡洋戦艦パストーレの砲撃室。基本的にはこの狭い部屋で、戦艦に備わっている武器を管制する。撃つも切り替えるも、何もかもが出来る。艦内機能として、一様艦橋でも管制することは可能だ。味方の戦闘艇部隊が出撃したと聞いて、子供にしか見えない若い少年の手は震えながら、一つのボタンを押そうとしていた。ブラスター砲の手動管制ボタンだ。

 味方に誤射でもすれば、後で何か言われるのは間違いない。それだけは絶対に避けたいところであった。



 「よしアレン!撃墜数の勝負でもするか!!」

 「と、突然だな…生き残れれば、の話だよ」



 …そう、生き残ればの話ね。誰がこんな展開を予想しただろうな。このままいけば、やはり兵力分散による不利が露呈したということになるだろう。数では敵の方が圧倒的に勝る…戦況を左右する条件は、この戦闘艇部隊の活躍にも関わってくる。

 無事、地球の基地に帰れたら、今度はパイロット以外を志願してやる…。



 まさか、この時それもたった一瞬思ったことが、後々現実のものとなることは本人も知り得なかった。彼の本来「鍛えられた」分野が、直接反映される部隊に配属されることになるのだ。

 アレンの乗る戦闘艇はほぼ固定化され、機体には「703」と書かれている。第七艦隊所属の戦闘艇であることを意味する。自動誘導で第二カタパルトに行き、エアロックを閉鎖する。減圧作業も完了した後、衝撃と共に急発進をする。宇宙空間に出て浮遊感も得ぬまま、すぐに推力をあげ加速していく。至近という訳ではないが、目視できる位置に敵艦隊の艦列が見える。



 「味方機、発進完了です」

 「ケン中尉。各艦に攻撃を長距離砲に切り替えるよう伝達してくれ」

 「はっ」



 まだ砲撃戦が始まってから10分ほどしか経っていないが、ユラはここで長距離射撃に切り替えて、敵の進撃を鈍らせようとした。結果的にそれは成功し、敵の足を挫くことが出来た。そして戦闘艇同士のドッグファイト状態が戦況に持ち込まれた。戦闘艇が出撃している間は、回収のこともあって艦隊を大きく後退することが出来ない。その分敵の進軍を止めることで、戦列を維持しながら戦うことが出来る。



 「…一つ!よし、次」



 アレンは出撃して数分後には、あっという間に一機を撃墜した。海王星宙域で初陣を迎えた時よりは、戦闘に対する緊張や不安はやや薄れており、彼としてはそれが戦闘慣れであると考えていた。この間軍に入ったばかりではあるが、もうこのゲーム内では彼は「新兵」ではないのだ。

 後ろから追いかけてくる帝国軍の戦闘艇を、アレンはきちんとレーダーで捉えていた。自分がどんなに旋回を試みても、敵は速度を落とさずに近距離からブラスター砲を当てようとする。戦艦並のブラスター砲ではなく、戦闘艇サイズに合わせたものになっている。が、しかし、その程度でも機体を貫通するぐらいのエネルギーはあり、そうなれば一撃で航行不能になる可能性は十分にあった。アレンは敵が早い速度で接近してくる逆を突き、急減速して少しだけ上昇した。敵機はアレン機を追い越してしまうという、いわゆるオーバーシュートを決められ、一気に形勢が逆転した。アレンはただ一度の操縦桿のボタンを押し、一発で敵機を撃墜する。



 「…まだいけるな」

 「マルクスだ!各機敵艦隊の上に出ろ!」



 出来るだけ艦砲射撃を避けようとのことだが、当然戦艦は真正面だけでなく、薄い火力とは言っても上や下に攻撃することも出来る。斜め後ろにも射撃することが出来るが、精度は悪い。共和国軍の空戦部隊は敵艦隊の上空でドッグファイトをしながら、次に巡洋戦艦などに攻撃を開始した。



 「落とせる…のか…!?」



 いや、逆に敵の的が大きいと考えればいい。一発じゃ仕留められないと思うが…なんとかやってみせる。



 戦艦は対空迎撃も開始する。ブラスターによる機銃レベルの掃討が始まり、味方機が次々撃墜されていく。が、マルクスもフューリーもアレンもそれを避け、攻撃を続けている。戦艦への攻撃をしようというところ、すぐに敵機が攻撃を仕掛けてくるので、中々思うように攻撃をすることが出来ない。アレンを狙ってきた敵機を彼はすぐに撃墜し、次に標的にした巡洋戦艦に向け一気に6発放った。戦艦の砲塔と後部にそれぞれ3発ずつ命中した瞬間、大きな爆発音と光を伴い、巡洋戦艦は撃沈する。この瞬間多くのプレイヤーがセーブポイントなどに戻されるのだ。



 「…ふう」



 彼は一息つく。周りに敵機がいないことも瞬時に把握して、次の標的に向かおうとした、その時だった。目の前に大きな火線が一直線に通過していき、アレンはすぐに上昇して回避する。戦艦のブラスター砲は、戦闘艇にとっては当たれば即死というものである。アレンは少し鳥肌を立てながらも、体勢を立て直した。すると、一本の無線が入る。



 「各空戦隊、こちらは空戦副隊長のブルネイだ。艦隊戦は優位だが、数は今も敵の方が多い。このままでは逆撃を受ける危険性が高い。ただちに後退する!」



 「…これまでか。アレン機、了解」




 戦闘は、一つの局面を終え、新たな局面を迎えつつある。今回の戦闘も無事に生還したアレンだったが、巡洋戦艦パストーレ内で、ある衝撃の事実を耳にすることになる。




 Space Fantasy Game

 ―劣勢下の、奮闘―




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