表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第二章 本質の渦中へ
PR
34/150

第34話




 「敵艦発砲!」


 「なんと正確な…艦隊を二分してそれぞれの敵に対応させろ!!」

 「閣下いけません。それでは真正面からの敵に側面攻撃を受けます…!」



 「…バカな…!?」



 共和国軍が名付けた今回の作戦、『トライアングル作戦』。分散した艦隊で最初に接敵したところを基点に、左右や後背を突いて挟み撃ちにするというものであった。はじめから共和国艦隊はトライアングル上に展開し、それは当然帝国軍艦隊にもハッキリと見えていた。どの配置の敵と対しても、帝国には分散した艦隊がほぼ同数でしかないので、消耗を蓄積される可能性が高い。恐らく効果的な戦法で戦術的には申し分ないものであっただろう。

 しかし、ここで共和国軍は単純な計算違いをしていた。敵は常に真正面から現れるものだと思い、側面に関しての防御など考えていなかった。何故なら自分たちの側面を守るのは、いずれ現場宙域に駆けつける艦隊であると判断されていたためである。そのため、このトライアングル作戦は奇襲に極めて弱い。要するに、はじめから帝国軍に分散した艦隊の配置図を見せたのは、自分たちの弱点を曝け出していたようなものなのである。それでいても、帝国軍を指揮する者にその弱点をいとも簡単に見抜きだす力があるのか、と思うと先が思いやられる。あるいは、今まで負け続けで来たのはそうした有能な人材が、帝国軍に集まっているからなのかもしれない。

 そんなことを考えてる余裕などなく、また考える時間さえもなく、爆散する戦艦が次々と発生した。



 「戦艦ロッケンハイムからの通信が切断されました!」

 「我が艦隊は左右からの挟撃を受け分断されつつあります!」


 「急いで戦闘艇を出させろ!このままでいてたまるものかっ…!!」



 トライアングル陣形の中でも、最初に接敵したのが第一艦隊で、ゲームの設定上共和国軍最強の艦隊と言われてもおかしくないのだが、この奇襲により完全に混乱し、指揮系統は激しく乱れた。左右、真正面という三方向からの攻撃に対応するのは、恐らく現実の海戦でも不可能だろう。プレイヤー、NPC問わず死にたくないと思う人もいた訳で、精彩を欠く者が多数存在した。ここで艦隊司令官は戦闘艇を発進させて敵の攻撃を弱くさせようとしたが、彼らが戦闘艇を出撃させる前には、帝国軍の制宙権確保は始まっていた。通常の戦艦よりも圧倒的に戦闘艇を多く保有する空中母艦も、機体を離脱させる前に攻撃させられ、乗員ごと爆散する。こうなると、いよいよ挟撃体制は完全なものになりつつあった。

 さらに、全体の兵力で帝国軍は劣っていても、分散した一艦隊とあたる場合には、どの艦隊よりも多い兵力で戦うことが出来る。第七、第八艦隊にしてみれば、話にならないレベルだろう。



 「こちら第一艦隊!敵の奇襲を受け交戦中!救援願う!!」

 「ちくしょう!これで何機生き残れるってんだ!?」



 各地で怒号にも似た悲鳴などが飛び交った。彼らの通信は帝国軍が用意した通信妨害ジャマーにより、味方艦隊のどこにも届くことは無かった。ここにきて第一艦隊の司令官は、自分たちが相手より不利な状況で戦っていることを把握した。作戦を立てる間は、敵がこれにはまってくれるだろうという期待と高揚感から、戦闘の時を楽しみに思うにまで至ったが、今となっては完全にその逆となった。まともな戦闘が出来る状態ではない。そして自分たちが勧め考えた作戦が、こうも裏目に出てしまうと、戦意そのものに影響が出る。何より土星宙域を手放してこちらで決戦をしようとした他のプレイヤーに、申し訳が立たない。



 「…閣下、どうしますか?」

 「いかん、ここは後退しないと…」

 「し、しかしこの状態で後退こそ、至難の業では…っ」


 「敵機接近!!」



 ゲーム内の時間でわずか30分ほど、第一艦隊は壊滅の危機に瀕した。撤退しようにもほぼ包囲されていて身動きが取れず、正面の敵に対応すれば左右から挟み込まれ、左右の敵に対応すれば真正面からの激しい火力に葬り去られる。地獄への方程式が成り立ち、それを回避できない状況まで整ってしまったのである。

 第一艦隊旗艦に敵戦闘艇の容赦ない攻撃がさく裂し、艦内の各所で激しい爆発が発生した。一瞬の出来事に何が起きたか分からず死亡判定を見る者、爆発により壁が崩落し、生きているのにもかかわらず宇宙空間へ放り出される者、激しい爆風と熱戦により、宇宙服装備でないプレイヤーたちは生きながら体のあらゆる部分を焼かれ、そして倒れていく。まさに地獄さながらの光景であった。



 「こんな…馬鹿な話があるか…!!」




 作戦の立案に大きく関わったのは第一艦隊の司令官で、第二艦隊以外の艦隊は、その意向に従うというのが基本的なスタイルであった。しかし、どれだけ機械や作戦が優れていたとしても、それを運用する人間が駄目ならば、すべてが台無しになる。掛け算に0を付け加えた結果と、同じようなものであった。結果論が全てを語るなら、この時点で既に共和国軍は負けている。

 第一艦隊旗艦は各所破壊されたが、戦艦そのものは爆散せず、いわゆる漂流状態に陥った。皮肉が込められているのか、帝国軍はあえてこれ以上の攻撃はせず、足早に次の宙域へと向かい始めた。基地へ戻ることも出来ず、ただこの場に居続けることとなってしまった。この状況を各艦隊が知っていれば、更に後退を余儀なくされただろう。しかし、彼らが知り得たのは第一艦隊が最初の接敵ポイントになった、という情報だけである。他の艦隊は既に、第一艦隊のいた宙域に接近している。



 「…わざわざ、兵力を分散する必要があっただろうか」

 「?アレン、どういうことだ?」



 同じ戦闘艇乗りであるフューリーが、そう尋ねてきた。アレンは、後に記録されるこの戦いの結果を、まるで先取りしたかのように彼に訴えた。兵力分散で敵を包囲することまではいいとして、到達する時間などを考えた時、各艦隊が統制された動きが出来る訳がない。天王星を包囲してきた時の状況を、アレンは覚えていた。普通であればレーダーに映る敵の影も、それが出来ない場合もある。総数で敵に勝るのなら、その優位性を活かすべきだろう、と。しかし、アレンには何の権限もない。軍でそう言った声を反映させるには、まず当本人のゲーム権利を上げ、階級も上げていかなくてはならない。

 つくづく商会とは違い融通が利かない、と思わざるを得ないアレンであった。



 「確かに…アレンの言う通りだ。俺たちの配置はまるではじめから罠があると言わんばかりだもんな」


 「そう。だからさ」


 「んー…なるほどな」



 フューリーもこの件に関しては、アレンに意見を揃えた。何も彼がいつもアレンの意見を聞かなかった訳ではないが、アレンが話すように、敵より数が多いのであればそれを分散させる必要も、無かったのかもしれない、と思うようになったのである。戦闘は古来、数による暴力というのが記されている。戦場での勝敗は数が物を言う、と。それに習った戦術というのも、あって不思議なものではない。

 しかし、このSFGでは頭を使う場面が多々ある。ただ正面から戦っている戦闘艇部隊とは違い、実際に船の配置を決めたり攻撃ポイントを定めたりする司令官クラスは、どこにどう配置し、どのポイントに砲火を浴びせれば敵を突き崩せるのか、というところ、細部まで考える必要がある。SFGの宇宙戦闘における魅力の一つとも言え、自分の考えで艦隊を動かしてみたいと思う人もいるのだ。

 それが誤った判断のもと行動されれば、敵に付け込まれる可能性は十分にあるのだが、今の共和国軍がその状態になりつつあった。



 「…閣下、敵艦隊らしき反応が」

 「ん?方角は?」

 「…3時方向。真正面です」


 「んー…第一艦隊とはまだ連絡が取れないのか」

 「依然、不明です」



 第二艦隊の司令官は、第一艦隊の司令官ほど勇敢で熱血漢という人柄ではなかった。むしろその逆とも言え、艦隊司令に上がった当初から、艦隊の維持や生産性の向上、管理能力などに優れていると評判で、周りからの信頼もある人物であった。当然第二艦隊という主力が戦闘に参加しない状況が一番好ましいのだが、この状況ではそうも言ってはいられない。初戦闘となるプレイヤーが多数いるが、上手くそれを引っ張っていく必要があるのだ。

 しかし、この時点で第二艦隊の司令官は、共和国軍が今回実行しようとしたトライアングル作戦が、帝国軍に見抜かれ、更に第一艦隊との連絡が取れない状況にあるということを考え、既に第一艦隊は多大な犠牲を出してると予測していた。その判断は、次に発する言葉の真意に繋がる。



 「全砲門開け!正面から敵と対する!」

 「しかし閣下。敵艦隊の数と我が艦隊では…」


 「構うな、時間稼ぎだ。第八艦隊に至急連絡しろ。“逃げろ”とな」



 状況が好転しないことを予測した司令官の選択は、この場合は正解とも不正解ともいえない状況であった。自分たちと同じようにして、第七、第八艦隊も挟撃作戦を実行しようとしているだろう、ということがある。通信が取れないのであれば、戦況を知る手段は限られてくる。この時、この司令官はトライアングル作戦の欠点を把握して、作戦を実行する危険性を考えていたアレンという男の存在を、知るはずもない。

 戦端が開かれる。両軍真正面からの対峙となった今回の戦いは、第一艦隊ほどの醜態を晒すことにはならなかった。逆挟撃体制を取られた第一艦隊の最期は、それこそ無様なものであったと、後々両軍から笑いものにされるだろう。この時点で少なくともそう思う人が幾人もいた。ただ、第二艦隊が同じ道を歩む必要がない。彼らの司令官が冷静であれば、その兵士たちにも落ち着いた行動が見られる。何かしらの関連性があって、艦隊との連携は取れていたのだ。



 「厳しいか?」

 「はい…どうしても押し返すことが出来ません」

 「後退しながら敵の攻撃を誘い込め。間隙を作ってそこに火線を集中させる」



 確かに数において不利にある軍隊は、敗北の道を辿ることが多い。そう考える人がいて当然だろう。しかし第二艦隊は、そんな常識じみたものにも抵抗して見せていた。それでもなお不利な状況に変わりはなく、40分が経過した頃には、お互いの戦力差は目に見えていた。一時は敵の攻勢を誘い込み、集中砲火によって数を減らしたものの、その際の行動が帝国軍に全面攻勢を与える機会を生んでしまった。

 一本の光の刃が無秩序に真っ直ぐ飛んでいき、固く黒い鉄の塊を貫いていく。



 「…これまで、だな。この戦いで、何人の人がSFGにログインしなくなるだろうか…」




 直後、旗艦は内部から大きく分裂し、爆散した。司令官のその言葉を聞いた人はいなかったが、彼なりにゲームと言えど勝利に導くことが出来なかったことに対しての、責任の表れであっただろう。

 まだそう近くは無い宙域で健在の第七、第八艦隊。アレンは、直後急に胸を締め付けられるような感覚を得た。



 「…駄目、だったのかもしれない」




 Space Fantasy Game

 ―欠点の、露呈―




執筆者からのコメント…


大学も始まりアルバイトもしてると、中々更新出来ないものでペースが非常に遅くなっています。笑

まだまだ終わり見えないこの小説ですが、どうかよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ