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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第二章 本質の渦中へ
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第30話




 俺があの町にいないから、あんなことが起きた。いやそう考えるべきではないというか、それは直接理由にはならないだろうが…何か関係があるとすれば、黙っているのも嫌なもんだな。今軍人である俺にはどうすることも出来ない。PK集団の行き過ぎた行為を、どう処理するつもりなのだろうか。

 確か、軍の治安当局が下町を管轄に入れたという話があったな。サイクスさんが言ってたはずだが…既に知り得てるだろうか。ゲームでは、たとえ下町と呼ばれていても、その規模はめっちゃ大きい。すべてを把握するのは無理にしても、何かしら情報くらいは…。



 …今、保安部から依頼を受けて討伐するプレイヤーは、いないんだろうか。やはり皆誘拐され身動き取れなくなることを恐れて…テツも言ってたな。プレイヤーはもう逃げてるって。だとすれば、わざわざ危険を冒してまで倒そうとは思わないのか。

 NPC任せには、限界がある。とすれば、奴らを止める方法はやはり…。



 「…ったく。これじゃ集中できない…」



 テツがもたらした情報は、アレンにとっては心情を大きく揺らがせるものであった。恐らく他のプレイヤーが同じ話を聞いても、似たようなことを思うだろう。このゲームのタイトルは非常に有名になっているため、リアルのネットでは掲示板などで情報交流やキャラ情報などが公開されている場合がある。その全てが善良なものではないにせよ、このPK集団の一連の話も、今後掲示板などで呼びかけられるのではないか、とアレンは予想していた。事件になってからでは遅い。直接手を下さず自由にできるもう一つの体が、現実にさえ容易に侵入出来てしまっている。

 しかし、今の彼にはどうすることも出来ない。彼は軍人であり保安部の人間ではない。自分の技術や力が負け続けの共和国軍に役立っているかどうかなど、彼には知りようもなかった。



 「しばらく戦闘は無いって、予想らしい。あくまで、予想だが」

 「なるほど…予想、ね」



 土星の衛星、アイガイオン。土星最大の衛星タイタンほど大きくはないが、初回ログインプレイヤーやNPCもいる、比較的規模の大きい衛星に設定されている。リアルでは観測されていても、当然人が住めるはずもないし、大きさもかなり小さい。ゲーム用に設定されている、ということである。敗残兵として第四艦隊の旗艦と、第七艦隊は統合され、アイガイオン共和国軍基地で補給と補修を受けることになった。



 「ちなみに、その情報はどこから?」

 「噂だよ。今上の連中が会議をしてるって話だ。今後を決めるための」

 「ん…じゃあ、それ次第で正式な決定が通達されるって訳か」



 パストーレで同じ戦闘艇部隊にいるフューリーとアレンは、最初の戦闘以来の仲である。お互いにプレイヤーでいろいろな情報共有はもちろん、戦闘中のことを一緒に考えたりもしている。どのようにすれば、楽に敵機を撃墜できるか、など。

 いまだ戦闘を初めて組織的な勝利を経験していない二人の若き軍人は、自分たちの戦闘以外にも、共和国と帝国という国家間の戦争についても話し合っていた。この情勢では何ら不思議なことではないが、力のバランスが明らかに帝国側に傾いている、と考え釈然としない者も少なくはない。二人が焦燥感に駆られていた訳ではないが、それでも負け続けると良くないことが起こるという漠然とした予想はついていた。



 「何がいけないんだろうな?」

 「んー…それは難しい質問だと思う、フューリー。実力で負けてるんだったら、文句は言えないしそれ相応の補強も必要になる。でもまぁ、それだけじゃないとは思う」



 …現に、この間の天王星襲撃の時は、レーダーを持っていても察知するのがとても遅かった。更に気付けば星全体を取り囲むようにして、大艦隊が布陣されていた。「こういうことをされると嫌だ」って思われる作戦を、帝国はしてる。戦争だから当たり前なんだろうけど、ここまで考えさせられるとは正直思ってなかった。


 ただ、戦いに勝って、先に先に進んでいき…で、普通とは違うものを…。



 「どうやって兵を動かすか、とね…中々深いなぁゲームなのに」

 「でも、考えてみればFPSゲームとかも、勝つためにチームと色々作戦組んだりするよな。この場所に何人費やして制圧する、みたいな感じで」


 「…なるほど。似たようなものは、あるんだろうね」



 運営時点での目立った問題はさほどなく、順調に運営を進めてるこのゲームも、運営1ヶ月を過ぎたあたりから、ユーザーによるバグ報告などが少しずつ増えてきた。その全てが認定バグにはならなかった訳だが、そうやってプレイヤー同士のやり取りは、他のゲームとは明らかに違うものがある。従来のゲームなら、基本的にボイスチャットを繋いでプレイしたり、チャットで情報交換する、みたいなことが当たり前だ。だけど、今回はゲームの中に入っていれば、顔見て話すことが出来る。

 帝国軍にどれほど優れた人材がいるのかは…俺にも分からない。もし、そういったコミュニケーションに差があるんだったら…でも、そこを改善したところで、埋められる穴なんてあるんだろうか?



 …なんだろうな。活かしきれていないこの感覚。



 一方。共和国軍の上層部、土星宙域にいる第八艦隊と敗残兵の身である第七艦隊、第四艦隊の高級士官は、衛星タイタンに移動して会議が行われていた。他の艦隊の士官も会議には参加するが、わざわざ土星宙域まで移動することはなく、映像モニターから中継して参加している。


 「閣下…あのモニター、軍服を着ていない人が映っていますが、あれも軍人ですか?」


 衛星タイタンの中にある、共和国軍第八艦隊基地。会議室の大きなモニターに映される姿は、約20名ほど。サイクスは、傍にいるユラ准将に聞いた。サイクスが会議に出席するのはこれが初めてで、ユラは既に経験がある。



 「あれは、共和国政府のお偉いさんだよ。軍務にも介入してるのさ」

 「しかし…よろしいのですか。政治家たちの意見も取り入れるということでしょうが…」


 「むしろ、それが当たり前みたいになってる。我々は、政府の指示で動いてる兵士みたいなものさ」



 もちろん他の人には聞き取れないように、小声でユラはそう言った。共和国軍はもちろん軍の意向で作戦を実行したり、補給を行ったりもする。しかし、大きな軍事行動の際には、こうして共和国政府の高官が間に入ってくるのだ。ユラにも共和国政府の内情は分かっていなかったが、ほぼすべての人がNPCで構成されているという予測はあった。第一、政治活動をしたいために、ゲームで疑似的に体験しようと思うプレイヤーがいるのかどうかは、運営始まって以来の疑問であった。不可能ではないが。



 「第七艦隊の残存艦艇と、第八艦隊を総動員しても、厳しいというのか?」


 「元々、第八艦隊は艦艇数がそう多くありません。この両艦隊二つ合わせても、数は約50ほど。先日、天王星を包囲してきた帝国軍艦隊にも劣る数です」


 「ったく。どれもこれも海王星と冥王星基地があっという間にやられたからではないか…海王星には地上陸戦部隊も沢山いたのに、一体何をしていたのだ」


 「それは言い過ぎだろう。彼らも全力を尽くして戦ったのだ」

 「負け続きでよくそんな生ぬるい発言が出来るな!ええ!?」



 サイクスは、その場で静かに溜息をついた。ユラも、第八艦隊の関係者も一切発言はしていなかったが、軍官僚同士で交換される争いになど、彼らは全く興味を示さなかった。目の前の争いよりも大事なものが、これからやってくる。前線から遠い司令官にはそれが分からないのか、とサイクスは言ってやりたいくらいだった。同じ気持ちをユラも持っていたが、同じく発言することは無かった。

 すると、映像モニターの中の一人が、座っていた椅子から立ち上がって皆に向けて話しかけた。



 「確かに、三つの惑星の軍人たちはよく戦った。一度死んだプレイヤーにはぜひとも復帰してもらいたいと、私たちも思っている。だが、これ以上負け続ける訳にもいかないのが現状だ。私たちは国民に戦争の状況を知らせ理解してもらう広報をしなくてはならない」



 「…閣下、あのお方は…?」

 「“あれ”が、国務情報省の政治幹部さ。ダイスって、名前だったかな」

 「なるほど…」



 「そのためには勝ってもらわねばならないし、貴官らには勝てる努力をし、最善の結果をもたらしてもらいたい。私たちは常に期待しているんだ。いつか帝国の連中を屈服出来る力の差を見せつけられることを」


 「…はい。では、作戦内容をもう一度考え直そう」



 共和国軍高級士官たちが、1時間の話し合いの末に生み出した作戦。それは、はじめから資源豊富ともいえないこの土星宙域を死守するのではなく、後退して艦隊を再編成し、木星宙域で一気に進軍してくるであろう敵艦隊を撃滅する、という作戦であった。土星でログインした第八艦隊のプレイヤー、士官にとっては聞いてもいられない話だったが、反論しても帝国軍と互角に戦えるだけの戦力を、第八艦隊は有していない。艦隊司令官の中でも、特に第一、第二艦隊の司令官には、各艦隊頭が上がらないのだ。


 木星宙域には、共和国軍艦隊最強とも言われる、第一第二艦隊が配備されている。戦艦の数もそれに見合うもので、上層部の作戦案は、敵を木星宙域におびき出すことにあった。そして数と力で敵艦隊を包囲し、一気に撃滅して他の惑星を奪回しようというものであった。



 「よろしいな?」

 「賛成ーそれでなんとかいけるでしょうー」

 「あとは、敵がどう出てくるか、ですな」


 「気にしなくていいだろ。編成艦隊の位置によっては、相手のレーダー網の死角を突くことだって可能なはずだ。包囲しようなんて、そうそう早い段階に気付きはしないよ」



 こうして、共和国軍の会議は終了した。結果的に話し合った内容は、これまでの惑星奪取でどのような作戦を帝国軍が展開したか、という見直しと、今後どのように帝国軍を打ち倒すか、というものであった。が、しかし、前者はほぼ愚痴の言い合いとなり、後者に比重が置かれた。衛星タイタンに集まった士官たちも、呆れた表情や怒りを発散させないまま、政府の声や上の司令官たちの決定に従うしかなかったのだ。



 「便利なもんで、システムが会議の時間を教えてくれるから、それに合わせてログインして一体どんなことを話すかと思えば、この様ですか…」


 「言うな。所詮、そんなものだよ」



 サイクスも、アイガイオンへ向かう小型シャトルのデッキに向かう通路で、そう愚痴をこぼした。もっと有意義なものを期待していたが、今後はその期待もすることが無いだろう、そう思ったのである。ユラとしても、正直よき話し合いがどのようなものなのか、というのを見失っていた。



 「とにかくも、我々は上の人たちの言うことには聞く。それだけやってれば、まずはコロンもゲーム権利も上がっていくんだし、良いってことさ」


 「なるほど…そう考えられるのも、羨ましいことです」


 「でもまぁ、勝つために努力はするさ。戦場にも出てこない、政府高官の言うことじゃないがね」




 しばらく、戦闘は起こらない。土星宙域を手放すという理由で、敵を撃退するために艦隊が集結する。そのため、リアルの時間も少し流れていくことになる。作戦内容のごく一部と、時間が少し空くことが兵士たちには知らされた。


 「…少し、余裕が出来るかもな」




 この先。彼らがどのような苦難に直面するか、いまだ知る者はいない。だが、帝国軍としては、苦難を発生させる状況予測が出来ていた。




 Space Fantasy Game

 ―期待と、失望―




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