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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第二章 本質の渦中へ
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第23話




 7月上旬。

本州は異常と言いたいくらいの猛暑と熱風に見舞われる時期。全国に張り出した高気圧が空を覆い、炎天下の路面温度は40度を超える。日中の気温は常に30度に達し、最低気温も下がらず、とにかく過ごしづらい。慣れればなんともないことなのだろうが、それでも夏バテや熱中症に気を付けたい、という時期ではある。

 梅雨明け。彼らの学校は試験期間にあった。高校生であれば、年に数回の試験を乗り越えなければならない。点数を取らなければ留年もあり得る。この作品の主人公、零治の通う学校は、特に進学校でも、かといって底辺にいるような学校でもなかった。偏差値が50代後半という学校であり、それ以外特段変わったことは、あまりないと言えばそう言い切れるだろう。学校の生徒数が少ない、田舎地域にはよくある特徴以外は、いたって普通の学校なのかもしれない。ただ、この学校が無くなると市としては大きな深手を負うことになりかねないので、支援を受けている、といった状態だ。



 「ふぅーっ、終わったね!」

 「だな。これでゆっくりできる」



 その日最後のテストは、現代文のテストだった。正直、出来は期待していい、と俺は思う。自信が少し出るくらいのもんだ。あんなにゲームをやっておきながら、ここまで出来るとはちょっと予想外だったな。さて、期末テストは終わった。あとは夏休みまで直進するだけ…とはいっても、毎日ゲームをやってばかりじゃ、まずいだろうな。ある程度は外に出たり、ああだこうだしないといけないな。



 「あ、相坂君この後暇かな?ハルたちとお昼ごはん食べに行こうかなーって思って、もしよかったら」


 「あ、あぁそうだな。暇だ、ついてくよ」

 「原田君も、良かったら一緒に!」

 「待って待っしたーその言葉!いきまっせーもちろんうんうん!」



 …やたらハイテンションだな、こいつ。まぁいい、テツだからしょうがない。って、俺はいつも思うようにしてる。それよりさっきまでテストを見て青ざめてたテツだが、大丈夫だったのかな。まぁ、理由は想像に任せる。

 他の学年でも噂の広まってるうちの学級の女子生徒、永倉さんとそのお仲間達に誘われ、俺たち二人はこの小さな町で人気のレストランにやってきた。あ、噂というのは悪い意味じゃない。彼女たち、人相が良いからな。特に永倉さんなんかが、人気なんだとか。


 「このメンバーで、夏休みどっか行きたいね!」

 「楽しそうだな」

 「良いな良いな!なんでもいいぜ!海でも旅行でも天体観測でも!」


 テツの言う夏休みの楽しみ方は、とても王道をいってる気がする。でも、実は俺そういう経験があまりなく、ちょっとしてみたいなという気持ちが起こったのである。特に天体観測なんて、良いじゃん。遠くの星…あー、でも、それはあのゲームで体感できるのか。その気になればお隣の星系まで覗けるしな。現実はそんなのあるのかどうか知らんが。

 女性たちはオムライスを。俺はカルボナーラを、そしてテツは牛すき焼き定食を食べた。テツの、正直めっちゃ美味そうだった。羨ましい。その後、俺たちは特に行く用事もなく、少し話してから解散となった。



 「じゃ零治、またあとでなー!」

 「あぁ、“あっち”でね」



 今日は早く学校が終わって、早く家に帰れるんだ。いつもテツと出来てないから、今日はあいつとSFGをやるって約束、してたんだ。家に帰ったらまずは洗濯物だな。それから夜ご飯も作って冷凍しておくか…夜は食べるだけにしておこう。



 「あ、相坂君ーっ」

 「あれ、永倉さん。帰りこっち?」



 あの場で解散となって、一足早く歩き始めた俺だったが、テツたちが見えなくなったあたりから、永倉さんが走ってきたようだ。まさか、同じ方向?家が学校から近いこの町のどっかにあるってのはまぁ、知ってる。



 「うん。役場から近いとこ!相坂君は?」

 「俺はー、あれだな。少し町の離れにある並木公園ってとこの近くだ」

 「あー分かる!何回か行ったことあるよ私!」



 なーるほど、永倉さん役場の近くに住んでたのか。途中で方向は別になるが、別に俺たちそんなに離れて住んでるって訳じゃないな。まぁもともとこの町は狭い。離れてるって言う必要はどこにもないな。役場か…学校までの道のりが簡単だから羨ましいな。

 その後、途中までの道のりを、俺たちは他愛ない話をして過ごす、予定だった。予定って、何か変か。だけど、いつの間にか話は真剣な方向に進んでいて。それは学校内のことでなく、お互いの過去の話だった。



 「もうちょっと伸び伸び生活したいなーって、今でも思う時があるよ。でも学校は本当に楽しいんだ!」


 「そう思えるだけでも、良いものさ。永倉さんがそんなに気にすることはない。俺はそう思うよ」


 「でも、やっぱりどうしても過去って思い出しちゃって、ね。そんな時、相坂君はどうしてる?」




 《頑張って普通しなきゃならなかったんだ…!!》



 もちろん、あの世界とこっちの世界は別物だ。だけど、共有されるものは幾つもある。それを見出すことも、見直すことも、出来る。苦い思い出なら…だけど、俺に説得できるほどの経験はない。

 永倉さんは、一体何を…、いや、何と…。



 「あ…ご、ごめんね!なんか変な話になっちゃったね」

 「いや、気にしないで良い。永倉さんが大丈夫であれば、問題ない」

 「うん。今はほら、笑ってれば楽しいからっ」




 いや、そうではない。それでは、でも…。

その後で、俺たちは行き先の方向が分かれるので、その場で少しだけ話をしてお互いに帰路についた。ここまではなんだか、不思議な展開だったかもしれないな。意外ではあっても…でも、良い話ではない。そういう一面があるんだって、認識しとく必要はある。と思う。

 家に戻り少し準備して、いつものように俺はゲームにログインする。今日からはもう、試験勉強を気にしなくて良いから気が楽だ。夏休みが明けるまでは、全然荷が軽い。


 「早いな。もう出勤か」

 「はい。今日は、リアルの方がすぐに片付きましたので」

 「おいおい、俺もプレイヤーだからな忘れるなよ?」

 「そうでした」



 6月下旬の時。

俺が所属していた、ゼウ商会がPK集団の襲撃に遭い、俺以外の全員が重傷を負う事件があった。それをキッカケに、共和国軍の治安維持部隊がコロッセオを度々訪れるようになった。サイクスが言うように、行き過ぎたPK行為の連続をあの人たちが取り締まることによって、全体的なPK発生率を低下させることに成功した。軍が介入すれば、そういうことが起きる。現実でもそれは同じことだ。

 そんな軍に、今俺もいる。[特務三等海曹]として。あの日、俺が決断を下したことによって、サイクスは治安維持部隊に俺の身柄を引き渡されることなく、保護という名目で軍人にすることに成功した。正直、上手く乗せられてる気はする。



 『共和国軍第七艦隊の海兵隊員になりました!―職業:[軍人]』



 「おっす特務海曹さん!」

 「どうも」


 軍ともなれば、上官に出会ったら敬礼するのが当たり前のようだ。全くゲームでこんなことするとは…いや、ゲームだからなのか?とりあえずこの人は、今俺にいろいろと、教えてくれてるシェルビー曹長だ。今日もこれからある訓練のために、シュミレーションシステムを使用して教えてくれるそうだ。皆まだ軍に入ってそんなに時間が経ってないだろうに、よくもまぁ…



 「で、どうだ。まだ映像の中だが、飛んでる気分は」

 「…」



 …こんなボロの操縦、よく知ってるよな…。



 高速であらゆる物体が前から後ろへ流れていくのが、彼には見えていた。そこは、第七艦隊基地内部に作られた、プレイヤー用の訓練施設。バーチャルゲームの中でシュミレーションを行うというこの訓練は、まるで現実世界でゲームセンターのゲームをやるような感じであった。彼は今、ケスラーが教えてくれたルーナの力とは無縁に等しい、海兵隊が所属する宇宙戦闘艇の操縦訓練を行っていた。映像の世界で見る宇宙の中で、実際に設備として設けてある実際の操縦桿を手にしながら、彼は早い速度の機体に対応させながら、標的をブラスター砲で撃ち抜く訓練をしている。が、正直なところ彼には不安しかなかった。



 覚えられるかこんなの!!

第一、こんなのはじめっから出来る方がおかしい。そんなこと期待したって何の意味もないこと流石に分かってるだろー…?


 「いや、でも良い筋してるぞ?」

 「そんな…」

 「他の兵士はそいつを三週間ほどで覚えたが、お前さんだったら、このペースで行けば一週間とかからずに実戦配備出来るだろう」



 この世界では、宇宙で戦うことと海で戦うことを殆ど同じ意味で捉えてるらしい。だからここは海兵隊の基地で、第七艦隊が所属するんだとか。普通は地球や月みたいな、自分の星から近い距離にあるものを防衛するための艦隊なんだろうが、今は戦時下だしそんなこと言ってる場合じゃないって、サイクスさんは言ってた。それで、第七艦隊の一部が戦線投入されるって訳なんだが、どうやらその一人に俺がいる可能性があるってことらしい。



 「出撃までには間に合うさ」

 「そ、それは大変ですね…そもそもなぜ第七艦隊を出撃させるんですか?冥王星や海王星はこっから遥かに遠いし、向こうにも基地は…」


 「そうだが、正直任せられる状況でなくてな。今頃向こうでログインした連中が総出で頑張ってるだろうが、それでも力不足って可能性も十分にある。なら、大部隊で支援した方が相手を追い返せるだろ?」



 …まぁ、確かにそうだ。大群に勝るものはないって、昔からよく言われてる。それがいつも正しいなんてことはないが、相手より数が多ければ安心感くらいはあるんだろう。それを考えてのことか…でもまぁ、俺がここで嫌々訓練して技術を身につければ、早くあの宇宙空間に飛び出せる、ということにもなる。



 「それに、戦闘中のデスペナルティは通常よりも半減してる。死ねという訳じゃないが、戦っていればいずれその時も来るかもしれん。そのためにこそ、訓練は必要だ」



 通常であれば、そのプレイヤーが死亡した場合、所持金と経験値が減少し、武具の耐久度が減る。しかし、戦争による戦闘中に死亡した場合には、この効果が半減されるのだ。戦争をしている間は死亡回数が多くなるだろうという、運営の気遣いだろうか。プレイヤーとしてはありがたいのだろうが、彼としては別に大してありがたいものだとは思わなかった。彼はこのゲームの中でも、死にたくはないと思っていたからだ。



 「よし、とりあえず休憩するか。良いぞ切って」



 俺はそう指示されると、シュミレーションの操作を停止させ、立ち上がった。右の頬だけにやっとあげてるサイクスさんの笑みがどんなに怪しいことか。

 だけど、次の瞬間には…。



 「…?」

 「なんだ?どうした!」


 「冥王星宙域のシグナルロスト!通信途絶!」

 「中佐。すぐに情報室までお願いします!!」




 ただの戦況報告とは、訳が違うものであった。




 Space Fantasy Game

 ―新しい、体制下で―




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