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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第一章 キッカケが整うまで
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第19話




 確かに、帝国軍の動向は気になる。もしこの先地球に接近してくるなんてことがあれば、俺たちだって危ない。もし、このヴァーチャルな環境で、俺たちの地球が破壊されていくようなことがあれば…コロッセオや、他の街はどうなるのか。

 だが、何が出来る?



 《箱から開かれた道は、一つとは限らない》




 でも…まだ、現実的な話ではない、か。



 「出来ました」

 「ん。そうだな、そこそこの出来だ」



 俺は、この一週間ケスラーさんのもとで教わると共に、なぜかどういう流れかよく分からんが、飯を作ってやってる。このゲームじゃ料理はそんなに難しい話じゃない。アシストみたいなのがついてくれるんで、短い時間で美味いものが作れる。便利っちゃ便利だが、女性には微妙な要素だろうな。というか、女性のプレイヤーっているんだろうか。

 …いるか。オンラインゲームの時もいた。男性が圧倒的なんだろうけど。


 「さて…今日が最終日だが、何がしたい?」

 「なに、したいって…」



 流石にそんなこといきなり言われても、なんて返したらいいのか、俺には分からない。何がしたい?このゲームで…でも、ルーナとは全く関係ないことになるだろうし。

 でも、考えてみりゃこいつは不思議なもんだ。俺はゲームがしたくてゲームをしてる。だけど、ゲームの中で自分を操作できる俺は、何がしたいのかを決められる。稼ぐもよし、ゼウ商会に行くのもよし。今まではゲームっていう欲がそのまま行動になってたんだけどな。



 「では、俺に足りないものは、なんだと思いますか?」



 俺がそう聞くと、ケスラーさんは右頬に浮かべてた笑みをきゅっと引締め、真面目な顔してこっちを向いた。ケスラーさんがいきなり俺にそんなこと聞くように…向こうもいきなりなんだって、思ってるだろうな。だけど、実際のところ俺自身でも気になるところだ。七日間こうして特訓してきた訳だが、一体これから何が出来るのか、というと俺にはちょっと分からない。ルーナがどういう場面に活かされるのか、具体的には分からない。



 「誰しも、欠けているものはある。それを埋め合わせようとするのは愚策というものだ」


 「なぜですか?人は、欠点があるから弱くて、このゲーム…いや、この世界でなら、その欠点を突かれれば死んでしまう。だったら、その人に足りないものを埋め合わす必要があるのではありませんか?」


 「そんなことが出来るのなら、もうそれは、人ではないのかもしれないな」



 ケスラーからそのような言葉を聞くと、何かと信じてしまいそうな気持ちになる彼であった。しかし、そのケスラーの言葉は、彼が彼にルーナの力を教えているとは思えない、実に人間らしい言葉であったかもしれない。



 「人は、間違いをする。自分の苦手なもの、突然訪れたもの、条件は様々だ。何度も同じ間違いをすれば、それは自分にとって欠点だと、言うことが出来るだろう。しかし、人は欠点から学ぶ。欠点のない人はどこにもいない。たとえどんな天才であろうと、そこは万人に共通している。アレン君の意識は、どこを向いている?」


 「どこ…?」




 この力を持って、君は何と対する?


 何のために、この力を得ようと思った?


 誰のために、今ある武器を手に持つと決めた?




 「…俺、は」



 …何も、返せなかった。俺は何のためにこの力を得ようとしてたのか。ただ、特別な何かを感じ取って、「普通」であることを拒んだだけの俺が、この七日間で何をしてきたのか。何を思って、何のために、誰のために何かをしようと思ったのか。

 だけど、あの時確かに、俺は普通であることを拒否した。だが、あの影の相手を目の前にして、もうそんなことにはこだわっていなかった。ただ、この存在を確認するために、とにかく前へ進んだ。その根元はなんだ?何がそうさせた?



 「…では、それが、これからの君がしたいことになる」

 「え…?」


 「見つからなかった答えを探すための、“ゲーム”だ」






 《俺たち、なんにもしてなかったら、良い奴なんだってさ》


 《俺たちに、特別なことは必要ないって》





 「…やってみます。俺なりに。ここで学んだものを、得るために」

 「…ならば、もう行くがいい。アレン君のいるべき場所は、他にある」



 ありがとう、ケスラーさん。ここでの経験は、きっと後で活かされる。確証も何もない。ただ、今の俺はそれを信じて進めば良い。これから起こること、訪れることに。


 彼はオートバイを起動させ、広い空間に響く大きな音を鳴らしながら、その車体を浮かせて飛行を始めた。森の木々と葉が揺れ動き、更に新たな音を作り出す。そして、遠くへ、あの街へ戻るために、再び飛び始める。窓からその様子を眺めているケスラーさんの存在を、薄々と感じながらも、彼は後ろを振り向かず、ただ前のみを向いて先へと進む。




 「判断、決断、そして意志。私は力と呼ぶ…が、しかし。それはただ我々を支えてくれる存在であり、我々を助けてくれる存在にはなり得ない。決めるのは、最後は人自身だ」


 …そうだな、もしあれが尽きると分かれば、その時は…。




 今日は休日。一週間前は、あの本をケスラーさんに渡すために探してた時だ。もっと時間が掛かると思ってたが、思ってたより早くて良かったな。今日の夜からは、ゼウ商会に復帰できるだろう。


 「ん…?」



 彼はオートバイでコロッセオ周辺まで戻ってきた。一週間あけて戻ってきたが、その時彼の目線に留まったもの。


 あれは…PK集団か!?

誰かが一方的に襲われてる…いや、違うか…しかし…!



 「早く置いてけ。どーせおめぇには勝てねぇよ」

 「くっ…」


 アレンが目にしたのは、一人の男性に四人で囲む集団であった。車通りの少ない上空からわずかな状況を眺めることが出来るが、ただ事ではないことを彼はすぐに理解した。

 一人の男を取り囲んでる男たちは、いずれも肉体が筋肉質と言うに相応しい容姿をしている。こんな集団に取り囲まれれば、流石に恐怖も表れるだろう。その男は冷や汗をかきながら、バッグから何かを取り出している。


 「ありがとよ。じゃ、とっとと失せな」

 「…」

 「あーおっと、間違えた。失せるって、方法があったな」



 男性の恐怖の表情は目に数滴の粒を浮かばせる形で、更に具現化する。その瞬間、集団の一人の男が立ち上がろうとした男性めがけて、猛烈な勢いで手を突き出す。上空にいるアレンには何の武器も持っているようには見えなかったが、その手は男性の心臓部を確かにえぐっていた。鈍い音と男性の口から多量の血を発生させるその瞬間は、ハッキリと見えていた。男性は、荷物の中身を取られることにプラスして、その場で体が四散したために、デスペナルティまで与えられることが確定した。こんなことが起こっている状況が、目の前にある。


 彼は、放っておくことが出来なかった。幾人かが示した意見を、忘れないまま、地上へ降りる。



 「なんだよ。わざわざそいつから降りてくるようなことがあったんか?」

 「上から見ていたぞ」



 俺がその一言を言った瞬間、その男たちの目は変わった。間違いなく、こいつは生かしてはおけない、という殺人を目的とした目になった。俺が何もしなければ、ここに降りることもしなければ、何もなかっただろう。


 だが、今一つ。

 こいつらを赦す訳にはいかん…!!



 「何しようが勝手じゃん?ゲームなんだし、マジになんなよ」


 「ゲーム、だからな。しかしな、やって良いことと悪いこと、特にその後者に対しては、答えを示しておかないとな!!」





 …暑い。とにかく、暑い。ただそれだけ、ハッキリと分かる。リアルと似てるのか?ここの気温は。


 ゲームだから、とか、普通だから、とか…俺たちには分からないほどの権利がある。だが、すべての判断をそれらの言葉で表せば、ヴァーチャルゲームはリアルにも影響する。

 ゲームと、リアルとは区別されるかもしれない。しかし、切っても切れないものは、たとえ現実と仮想の違いがあったとしても、共通される!


 プレイヤーであれば、仮想と、現実との戦いを認識する必要がある…!





 「…なるほど、お前か。最近、制裁者って、俺らPKをするようなプレイヤーを狩る連中が増えてきたが、お前もその一人か」


 「…」



 「強ければ、それでいい。俺らだってな、本当なら…」




 …このゲームは、幾つかの点でリアルのプレイヤーを参考にする点がある。たとえば、このゲームにはスキル制度はない。そのかわり、武器や防具でステータス補助をすることは可能だ。しかし、一説にはそんなこと関わりなく、サイコグラフィックスモニターから得る情報、その人自身の体が、キャラクターの基本体系になる、という話もある。事実なら、平等性なんて全くないゲームになる。いやそもそも、ゲームに平等性を求めるということ自体が、間違ってるのかもしれないな。

 そうやって、自分が相手に勝てないことを知れば、それを理由にやめる奴もいるだろう。だからこそ、ヴァーチャルゲームとリアルでは、似てる点があるんだ。



 「…そうだな、本当なら…」





 その日は、本当にいろいろなことがあったんだな、と改めて思う。ケスラーさんのとこを離れ、帰りにPK集団を倒し、そしてゼウ商会に戻り仕事をこなす。ゲームだけど、今日は疲労感がすごい。おかげでよく眠れそうだ。


 「…疲れたな」



 布団の上で、ただ動くことも出来ない体に責めることもなく、彼はそのまま眠りにつく。一瞬、何か彼自身でもよく分からない思いを持ちながら、そして眠った後には忘れていた。

 翌日。零治は同じようにして、ゲームへログインする。毎日のゲーム生活がもはや当たり前のようにもなってきたが、今日からは本格的にゼウ商会に復帰して仕事をすることになる。いつもと、少し違った気持ちで、彼はオフィスに入った。



 「アレンか、早いね」

 「あぁ、久々にね」


 俺が先にオフィスに入って、次に来たのはエナだった。エナはすぐにデスクのパソコンを起動させて、仕事に取り掛かるようだ。俺はゼウからの依頼待ちだ。だけど、ゼウは今日も皆が揃ってから指示を出すらしい。まぁそれが基本的な形なんだから、あとは待っていればいい。

 それから、大体30分で全員が揃った。なんだか久々に皆の顔をじっくりと見た気がする。怪しい意味じゃない。昨日は色々バタバタしてたしな。今日からは、いつも通りの営業で…



 「それでは、今日の仕事を言う。先日から言われてた、大掛かりな物資輸送の手伝いを行う。人数だが…」



 「…!?」

 「え、ちょ、なな何!?」

 「ん…!?」

 「なんだなんだ!?」





 そう、なるはずだったんだ。




 Space Fantasy Game

 ―答えを、見つけるため―




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