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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第一章 キッカケが整うまで
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第18話




 いつだか…確か、俺が身辺警護を頼まれた時だったかな。テレビや新聞はよく見た方が良いって、言われたの。あの店であのおじさんに言われたように、もっと気にするべきだろうな。既に敵が太陽系内に入り込んでるんだったら、いつかここだって戦場になる可能性があるってことだ。


 …待て。そうしたら、俺たちはどうなる?中立都市に居続ければ、そりゃ攻撃される心配はない。だが、他の土地が抑えられたんじゃ、どこにも行けなくなる。そうはなりたくないな。あまり考えない方が良いのかもしれない。

 とりあえず、今は目の前にいるこの人に…。



 「あ、あまりにもきつ過ぎはしません、か…!?」

 「何を言う。まだまだ序の口だぞ」



 …長時間逆立ちしながら意識を集中させるなんて、初心者には無理だろ!というような感じで、ルーナって力を身に着けるために、俺はエルンスト・フォン・ケスラーというよく分からない人のもとに、一週間ほど世話になることになった。ケスラーさんがどうしても、身に着けるためには一週間はみっちり修行しないと駄目だって言うから、俺も気になりゼウ商会に休暇をもらってここに来てる。郊外で友人たちには居場所が正確に表示されない。


 「よし、慣れてきたな。自分の身体に対応しきれない負荷を制御するのも大事な特訓だ。では、次はその状態でセーバーを取り出し、起動させてみるんだ」


 「この状態で…!?」

 「良いからやるのだ。冷静に、そう冷静に…」



 とにかくも今の俺は、ケスラーさんの言いなりだ。この人が言う特訓ってやつをやらせてもらってる以上は、その指示に従うってのが普通だろうから。結構きついが…セーバーのボタンを押すためには、片手で全身を支えなくちゃならん。俺の背丈以上の木が支えになってなきゃ、間違いなく倒れてた。ボタンを押して、真正面に腕を向けて…。


 「あぁっ!?」

 「…」



 効果音を付けるなら、ぜひ激しい音で頼む。



 「すみません、支えきれずに」

 「何も気にすることはない。積み重ねが大事だ。さぁ、もう一度」



 ただ、一心で俺はここに来たのかもしれない。他の人と比べられた時に、何か違うものを得たくて。もしそれだけなら、案外俺も馬鹿かもしれない。けど、普通でないゲームで普通のことをしたって、何か良いことがあるんだろうか、と思うのが正直なところだ。他にもこう思ってる人がいるかもしれない。いや、たぶんいるだろう。

 そして何より、このルーナというものが、他の誰にでも扱えるものでない可能性があるってことだ。だとすれば、その可能性を信じて手に入れてみたいものがある。



 それからのこと、アレンはケスラーのそばで様々な訓練をした。休みがあったとしても、合計で5時間ほどは訓練した。ケスラーは指示を出しながらそばで見ていたり、時々一緒になって訓練もした。ケスラーの言葉や指示は、彼にとっては不可解なものもあったが、それはまだ自分ですらよく分からないルーナの力を手にするため、とアレンは割り切っていたと言える。気付けばリアルの時間は0時を過ぎている。


 「では、また」

 「待っているぞ」



 不思議なもんだ。なんでケスラーさんの家にセーブポイントがあるんだろうか。まぁおかげでセーブポイントボーナスももらったんだが…運営はこんなところに作ることに、どんな意味を持ち合わせてたんだ?



 「…まさかな」



 それからのこと。俺はゲーム内では、他人との接点を避けた。俺がそうしたいわけじゃない。ケスラーさんがそういうから、俺もそれに従っている。他人と意識をかわすことが、どうやら集中力を乱すらしい。まぁ分からなくはない。それがもしかしたら、ルーナの力にとっては邪魔な存在になるのかもしれない。そこまではケスラーさんも言ってくれなかったが、そう考えても良いだろう。

 俺はセーブポイントを利用して、学校帰りにすぐログインしては、ケスラーさんと特訓を始める。一週間という短い時間で、どこまで俺はこの力とやらを身に着けることが出来るだろうか。得体の知れないこの力を、ね。



 「よし。では今日はそこの森に入ってもらう」

 「…森?何故ですか?」



 ここ、森と言うほど広かったかな。確かに外から見れば木に囲まれた家ってことなんだが、一体何の用で…?

 ケスラーさんは、俺にルーナセーバーを出すよう言われた。時間は早くも経過する。既に5日目に突入したところだ。最初の4日間は、とにかく厳しいもんだった。それが今日は何故森に…。



 「理由は言わん。この周辺の森を一周して来い。装備は私服とセーバー、回復キット一つだけだ」



 …何をしようってんだ。ただの散歩とは思えんな…。



 「ケスラーさんは来ないんですか?」

 「あぁ。ここでコーヒーでも飲んで待ってるとする」



 ほぼ強引に外へ出された訳だが、こんな森に何があるのか。…いや、何かがあると考える時点で、もう違うのかな。俺は一瞬意識を集中させて、スイッチを押してセーバーを起動させた。相変わらず良い音だ。このセーバーはルーナの力の意識を集中させることによって実体化する。もっと楽な方法があっただろうに…もしこれと同等の武器が販売されてたら、そっちに替えたいくらいだ。

 案外特訓の時間経過は早く、しかもそこそこの効果もあるようだ。一瞬意識を高めてセーバーを出したら、後は殆ど付きっぱなし。前みたいに起動させるだけで疲れるとかは、無くなった。



 「綺麗な森だ。川もある…」



 元々、この周辺、特にコロッセオ郊外は自然に恵まれた土地だ、とケスラーさんは言う。俺がこの間立寄った店の周囲も、良い景色だった。本当の地球はこんな姿ではないかもしれないが…。でも、こういうのも良いな、たまには。ただケスラーさんが俺に休憩させるためにこの森に入れさせた訳じゃないと思うけど、今は、まぁ…。



 「…ん?」



 …やっぱり、ただの森じゃないか。そうだろうな、じゃなかったら、わざわざこんなところに…



 アレンは、確かに感じていた。この森がただの森でなく、それは自分にとって害となる何らかの要因がある、ということを。ケスラーがルーナセーバーを持たせたのは、恐らくそれが理由となるだろう。彼は歩くペースを若干遅めて、周りの音を確認しながら森を進んだ。どのぐらい歩いたか、彼には正確に把握できない。しかし、もう周りの景色を楽しむほど余裕は無くなった。



 「何!?」



 一瞬の張りつめた空気が彼に信号として伝達され、わずかな隙も与えずに手足を反応させる。彼の右方面から発生した突然の変化は、光の線という形を作り出して彼に一直線に襲い掛かってきた。緑色の光を持ったその線は、彼が咄嗟に反応したルーナセーバーを直撃し、線の進行方向を変更させる。彼は一瞬、自分のしたことが理解出来なかった。だが、そんなことを考える時間の余裕もなく、彼はすぐに横っ飛びをしながら二発、三発と光の線をかわしていく。彼はすぐに、腰の方へ手を伸ばして、ブラスターを取り反撃しようとした。



 「…しまった…!!」



 …そうか!ケスラーさんめ…俺にこの状況をあえて…!!



 いつものブラスターはない。短距離用のダガーもない。軽装備で防護服も身に着けていない。ルーナセーバーというもの以外は、丸腰と言っても過言ではない。この状況でこの場を乗り切るには…。



 「…やるしかないのか…!!」



 アレンは木の陰から一気に飛び出して、発砲してくる方に向かって行く。相手もすぐに陰から姿を現し、手に持ったブラスターで短時間で照準を定める。再び一瞬の眩い光と共に銃弾がアレンの体を突き抜くために走りはじめる。決して足場が良いとは言えないこの状況下、アレンは脚力を最大限に利用しつつ、この多数の木を使いながら、かなり接近した。すると、相手はブラスターを瞬時にしまい込み、よく見えない何かを取り出した。



 「このまま斬れるか…ん!!」



 …奴も!?


 アレンは相手が恐らく弾切れになるだろうことを予測して、前へ進んだ。しかし、相手に斬りかかろうとしたその瞬間に、見えない物の正体がはっきりと分かった。ただの偶然であれば良い、しかしそれは間違えなく事実であった。



 まずいな…俺は剣道なんてやったことないぞ。同じ武器相手にどうやって勝つ…?銃さえあればこんな近距離戦だって苦労はしないだろうに…。



 最初に斬りかかったのはアレンであったが、彼の攻撃は相手も同じルーナセーバーの前に、あっさりと防がれてしまった。それだけでなく、彼は相手の攻撃を一方的に受け、防戦を強いられる形となってしまった。たまに足を取られ体を斬られそうになるが、それでも何とか防ぎ、いつ攻撃を仕掛ければ良いかと頭の中で考えながら、防御している。

 このまま同じ攻防を続けても、意味がない。どこかで何かを仕掛けるタイミングが必要となる。ではそれはいつだ?と、彼は自分自身に問いただすように、思考を回転させる。



 …落ち着け。一番落ち着く必要があるのは俺だ。よく冷静に…そうだよ。もし本当にそんな力があるっていうのなら…



 徐々に相手の攻撃が早くなる。連続した攻撃に対処する彼。



 …普通?普通じゃない?もう、そんなことにはこだわっていないのかもしれない。



 鋭い目線同士がぶつかり合い、一つの閃光を生み出すようにせめぎ合う。





 …だったら、ただ前に進めば良い…!



 「!!!」



 そして、一瞬で事が済んだと気付くまでに、彼は少しの時間を要した。頭の中の考えが具現化するまでのタイムは、彼の意志か、あるいはルーナと呼ばれるものの意志かによって生まれた反応で、わずかな時間差しかなかった。体が四散するサウンドとモーションが描かれ、綺麗な結晶にも似た破片が一瞬空中に浮いて、そして消えた。


 やったか。後他には…いなさそうだな。流石に疲れるよ、ケスラーさん。なんとかすることは出来たけど。

 何か妙な場所だとは思ってたが、やっぱり予想は当たっていた。ケスラーさんはただ俺に森をまわれと言った訳じゃない。目的があった。俺が一周した後で聞いた話で、これは一種のシュミレーションによる訓練だ、といった。マーカーを付けた相手を殺してもPKだという通知が来ない限り、それはPKとしては認められないって話がある。どうやら、本当らしいな。



 「どうだ。難しい話ではあるまい?」



 いやいや、そんなことないです。結構大変ですよ。



 「アレン君の場合なら、まだ伸びる。だが、人から得る程度には限界がある。君は、それが早い段階に来ている」


 「…と、言いますと?」


 「実戦をする気はないのか」




 …“実践”?

つまり、このセーバーで俺がやってきた制裁を…?しかしそれなら、別にブラスターで十分だ、と思う。相手がよほど強いんだったら、考えもするがあまりこいつを外で出したくはない。


 「PK集団を倒すなら、ブラスターでもいけます。それに、この武器はまだ出回っていないのでしょう?それなら、あまり外―」


 「そうではない。実戦とは、戦場で、という意味だ」



 俺が思わずその言葉を聞いて表情を変えるのに、ケスラーさんはすぐに気付いた。ケスラーさんの方は、表情一つ変えずに話を続ける。





 「十万人からのプレイヤーがいるのなら、十万通りのゲームの仕方があって当然なものだ。しかし、このゲームの趣旨を忘れてはいけない。帝国軍は、既に太陽系内部に侵攻している。冥王星が落日の道を迎えるのも、時間の問題だろう。そうなれば、共和国として生を成した我々は、味方同士のPKを制裁している場合では、無くなる」


 「俺に戦争に行けと言うんですか…!?」



 ケスラーは、彼から視線を逸らし、奥の部屋へ向かうために歩きながら、彼に言った。



 「箱から開かれた道は、一つとは限らない」





 Space Fantasy Game

 ―力には、実戦を―




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