第一話「引力の理由」④
翌日、三回戦第一試合。
その試合を碧雲隊の面々は固唾を飲んで見守った。
試合の展開は変わらず、派手な魔術戦となった。片側からは火炎が、片側からは岩石が飛び、互いの魔術が互いの領域に入るな否や、相手から魔術の制御を奪い取って強引に逸らす。防御が済めば再び攻撃。自身の魔力を練って魔術を固め、相手を倒さんと射出する。それが繰り返され、無数の魔術が試合場を飛び交った。
一方、その下でも高度な駆け引きが繰り返された。魔術の不意打ちや流れ弾を警戒しつつ、相手の剣や斧槍を警戒しつつ、しかし後ろに抜けられて後衛を倒されることのないように、二対二の複雑な位置調整が繰り返される。
牽制の剣閃が閃き、威嚇の刃が地面を叩く。合間に小さな魔術が飛び、暗器が飛び、ぎゃりんと鐵がこすれ合わされる音が断続的に響く。
どちらも非常に高度な技術が用いられており、戦況は拮抗していた。そして、それは肉体と魂魄の消耗勝負になることを意味しており、その一点で言えば、ファウーゼたちのウェイトベオ州第二代表側が劣勢なようだった。
最初に追跡者が足を縺れさせて倒れ、腹を掻っ捌かれた。
次に観測者の魂魄が限界を迎え、白目をむいて倒れた。
そして、一対二を強いられ魔術の迎撃に限界を迎えた狙撃者が腹を貫かれた。
最後に残ったのは、追跡者・ファウーゼ゠ルーサペック。一対四の状況であり、【独立命撰特務】の隊員でさえ、少しばかり骨が折れると感じるだろう状況で、ファウーゼは観客席に向かって高々と指を一本掲げた。
それが自分たちの方に向けられたものだと感じたトドイは横に座るルヴィケスの袖を引っ張った。
「これ、どういう意味っすか?」
「はてさて。一人は倒すという意味か、一人でもやれるという意味か。それとも」
ルヴィケスは口を噤んだ。直後、試合が動いたからだ。
四人は一斉に動き、ファウーゼに攻撃を集中させた。岩石の砲弾、砂礫の竜巻、大剣の斬撃、斧槍の刺突。間断なく襲い来るそれらは、常人であれば一瞬で血煙と貸すほどの暴力だ。
対するファウーゼの動きは、それまでのものとは次元が違った。
大剣の振り下ろしに剣を合わせてそっと逸らしつつ、ほぼ同時に突き出された斧槍は柄を肘で押して体を回転させつつ受け流す。そうして二人の間をすり抜けた直後に振ってきた岩石を踏んで高々と跳躍し、周囲を覆っていた砂礫を跳び越えると、剣を素早く振って構え直す。
相手は驚きつつも攻撃の勢いを更に激しくするが、結果は同じ。石の散弾は全て剣で叩き落し、大剣の薙ぎ払いは屈んで躱し、斧槍の突きを踏んで止め、砂の刃は剣の身で受け流す。ファウーゼはそのすべてを鎧に掠らせることすらなく、淡々と、淡々と、受け流した。
非の打ちどころのない連携も無意味だと、全方位からの波状攻撃も意味がないと、そう言わんばかりに、ひらひらと避けて見せた。
それはまさに舞のように、美しさすらある軽やかな動き。観客たちは呼吸を止めてそれに見蕩れ、その周囲には致死の暴力が渦巻いていることすら忘れて魅入った。
永遠に見ていたい。そう思うほどの時間は、しかし、すぐに終わり。ファウーゼは最後に大きく跳躍すると、試合場の場外にまで飛び退った。
そして、一礼。
「うちらの負けにございます」
審判にそう告げ、ファウーゼは兜を脱いだ。
そこでようやく呼吸を思い出した観客たちは一斉に息を吸いこみ、窒息寸前になっていたことに気付き、そしてまた息を呑んだ。兜の下から現れたファウーゼの素顔が余りに美しかったからだ。
激しい運動による激しい呼吸はどこか色っぽく、血が巡って赤くなった頬もまた同様。明るい金髪をかき上げる仕草も、泣き黒子に垂れる汗を拭うさまも、すべてが様になっている。今まさに死闘を繰り広げていたとは思えないほどの穏やかな笑みもまた蠱惑的だ。
トドイがきゃーきゃーと悲鳴を上げる横で、ルヴィケスは不満そうに呟いた。
「どうやら、一呼吸分だけ頑張る、という意図だったようですね。流石に準決勝の相手を四対一は厳しいか」
「いやっ、すっごい! 美人! 可愛い! うちの隊においでー!」
「あの、私たちが見るべきはそこではなく……まあいいか。フォフォ隊長」
負けたというのに莫大な声援を浴びながら退場するファウーゼを横目に、ルヴィケスはフォフォに話しかける。それに対し、フォフォは鬱陶しそうにルヴィケスを追い払うように手を振った。
「いえ、もう十分です。今のと同じことをできるのは、中隊全体でも二割いるかどうかです。それに、彼女の真価はそこではない。ファウーゼ゠ルーサペックは候補に入れます。見る目のない私でも流石に理解しました」
「何をおっしゃります。こうして私を雇ってるんですから、他の三隊長の誰よりも見る目はありますよ」
「そこが一番自信がなくなってしまう点なんですよ」
「ははは」
フォフォは愛想笑いするルヴィケスの耳元で囁く。
「問題は他の隊との競合です」
「問題ありません。冥弓隊は完璧主義のため、冤罪とはいえ経歴に傷のあるものは取りません。耀華隊は数値能力信者。隻腕という減点を妥協できないでしょう。朱顎隊は隊長が無理矢理割って入ってくるのが心配ですが、女性は積極的には狙わないのでおそらく大丈夫です。つまり、狙い目です」
「……ちなみに、念のため碧雲隊の評価を聞いておきましょうか」
ルヴィケスは視線を彷徨わせ、嘘くさい笑みを顔に張り付けた。
「話せばわかる良い隊長ということで」
「おべっかは不要です」
フォフォは不満そうに顔を逸らした。
一度候補に上がれば後は早かった。最後に見せた運動能力を見れば、ルヴィケスの言葉に偽りがないことは判断できる。追跡者が不足している碧雲隊からしてみれば、人柄に問題ないのであれば取るのに躊躇いはない。他の隊との競合の可能性も低いということで、第三任命で取れそうなのも良い点。そう言った理由から、とんとん拍子で任命が決まった。
任命式でも大きく予定が狂うことはなく、第一任命は競合しつつも競り勝ち、第二任命は被らず。ファウーゼも第三任命で無事に通ったのだった。
僅かにあったルヴィケスの不安、ルヴィケスが嫌われていて任命を蹴られるのではないか、という不安も現実になることはなく、任命式ではファウーゼは嬉しそうに拝命していた。
任命式の後、ルヴィケスはトドイと共にファウーゼを迎えに行った。ファウーゼは見知らぬ人々から祝福されて困惑しながらも、笑みを浮かべてそれの一つ一つに丁寧に対応していた。
ルヴィケスに気付くとぱあっと顔を輝かせたファウーゼに対し、トドイも嬉しそうに声を上げる。
「きゃー! 近くで見るともっと可愛い!」
ルヴィケスはトドイの頭を叩く。しかし、トドイの頭は非常に硬く、ルヴィケスの拳の方から異音がする。
ルヴィケスは己の拳を撫でつつ、顔に笑みを張り付けてファウーゼに頭を下げた。
「不躾に申し訳ありません。こちら碧雲隊闘技指導員のトドイ。一応あなたの同僚となります。これから碧雲隊の隊舎に案内しようと思っていますが、荷物は大丈夫ですか?」
「まぁ、ほめてもろて、かなんわぁ。やけど、荷はまだ宿屋にありますさかい、ちょっと待ってもろてよろしおすやろか?」
住んでた地域の影響か少し特徴のある喋り方に、それも良いとトドイは何度も頷く。ルヴィケスはトドイの態度が少し心配になりながらも、ファウーゼに向かって提案した。
「忙しければ、後日でも構いませんよ」
「そないどすか。ほな、お言葉に甘えさせてもらいます」
「ええ。任命は終わりましたが、正式に仕事が始まるのは来月からです。それまでは慣らし期間として、隊舎で生活してもらっても構いませんし、やり残しがあるのであれば故郷で過ごしていても大丈夫です」
「……そないなもん、ないってわかってはるくせに。ほんま、いけずやわ」
ファウーゼは少しだけ唇を尖らせて呟いた。ルヴィケスは知らん顔をして聞き流す。
少しだけ二人の会話に間ができたのを逃さず、トドイが挙手をする。
「ファウーゼさん! トドイです! よろしく!」
「あらあら、丁寧にしてもろておおきに。うちのほうこそよろしくたのんます」
「で! 折角同僚になったのでいくつか聞きたいことがあるんすけど! いいっすか!」
「うちで答えられることやったら」
「よっしゃ!」
トドイは周囲をきょろきょろと見回すと顔を寄せて小声で囁く。
「御前試合のときのあの鎧、重くなかったっすか?」
ファウーゼは目を丸くすると、ふっと息を吐いて柔らかい笑顔を浮かべた。その笑みは年相応の幼いもので、トドイはその落差に自身の心臓を抑えた。
「もう重うてしんどぉて、泣きとうなるとこでしたわ」
「でしょうね! そのうえであの動き、見事でした!」
「ほんまにもう、がんばりましたえ。そうそう、聞いておくれやす、トドイさん。あの鎧な、うちらの追跡者やってたぼんぼんが着とけ言うてきはって、お前の美しい顔が傷つくのは耐えられない、やなんてぬかして、ほんましつこぉて。断わって逆上されても面倒やし、しゃあないさかい、着込んでたんどす」
「ええ! そんな理由で?」
「そんなくだらん理由どす。ほんで返す時に傷ついとったら、弁償せぇ言われるんもややこしぃでしょ? やさかい、傷つけんよう必死やったんどす。もう、大変で大変で……」
「そんな理由で!? でも無事やり遂げたから凄いっすよ!」
「そやろ? 降参してからもまた大変どして、なんで諦めたん、て四方八方から言われてな、しゃあなしに、怪我が怖うてー、て適当に言うてたんやけど……それを真に受けはる人までいてはって、もうややこしぃことになりましてん」
ルヴィケスはやたらと口数の多いファウーゼに目を白黒させる。トドイが歳の近い同性だからか、達成感で興奮しているからか。いずれにせよ、こんな楽しそうなファウーゼをルヴィケスは見たことがなかった。
ルヴィケスの話すファウーゼは、歳の割には大人びて落ち着いており、頭脳が明晰で、常にじっとこちらの出方を窺っている、という印象だったのだ。
「新聞にも出てましたからね! 先輩は絶対嘘って見抜いてましたけど!」
きらきらした視線を向けられ、ルヴィケスは迷惑そうに手を振る。
「あなたはそんな玉じゃないでしょう、ってだけです。それより、私からも質問一ついいですか?」
「もちろん。うさん臭い笑顔のお兄さん」
ルヴィケスは笑顔を固まらせつつも、ルヴィケスです。とだけ断わって言葉を続けた。
「なんで破壊者として参加しているんですか。追跡者として参加しろと助言しましたよね」
咎めるような口調に、ファウーゼは少しだけ不満そうな顔をした。そして、いじけた子供のような口調で答える。
「だって、うちが追跡者として参加したら、ぴったりすぎるやろ? そしたら目立ちすぎて、他の隊から任命されるかもしれへんて思うて」
「そんな理由で……どこからも任命されなかったら本末転倒でしょう。あなたは選り好みする立場にないんですよ。そもそもなんでそんなに碧雲隊に来たいんですか」
ファウーゼはむっとした顔でルヴィケスを睨むと、ルヴィケスの手を取って何かを握らせた。ルヴィケスが手を開いてみると、それは安っぽい金属製の鍵だった。
ルヴィケスの耳元で囁くファウーゼ。
「フーと呼んでおくれやす、ルヴィケスはん。それと、うちの宿の部屋の鍵どす。今夜、お待ちしとります」
突然の内緒話にトドイが不思議そうな顔をしている中、ルヴィケスは顔を真っ青にして即座に鍵を叩き返した。
「重罪!」
「え? え? 罪?」
ルヴィケスの予想だにしない反応にファウーゼは目を白黒させる。
「いいですか。調査員が任命の見返りになんらかの利益を得た場合、重罪となります。下手すれば死刑です。いいですか? 死刑です! あなたは今鍵を落とした! 私はそれを拾って返しただけ! いいですね!?」
「あ、えっと、はぃ。……ああ、賄賂防止の規定?」
「そうです。あなたはこれから【独立命撰特務】の一員となるわけです。なので、こうした行為は軽々と行わないよう。できるだけ早く規律の講習も行いますので。くれぐれも、お気をつけて」
「は、はい。気ぃ付けます」
勢いに押され、ファウーゼは何度も頷いた。トドイも首を傾げつつ、賄賂は禁止っすよー、と呑気に笑っている。ルヴィケスは油断なく周囲に視線を走らせ、自分たちを遠巻きに見守っている観衆に他の隊の隊員がいないか警戒した。
ファウーゼはばくばくと鳴る心臓を落ち着かせながら、誰にも聞こえないように呟いた。
「……まあ、利益や思てくれてはるんなら、ええわ」
物憂げな視線にトドイがまた胸を打たれていると、人垣をかき分けてフォフォが現れた。
「どうしました? 何か問題でも?」
ルヴィケスは問題ないと首を振る。
「ああいえ、何も。彼女は荷物を纏めてから隊舎の方に来るそうです。案内はトドイに任せようと思います。ルーサペック、こちら碧雲隊小隊長のフォフォ隊長です。あなたの上司となる相手なので、失礼ないように」
「よろしゅうお頼み申します。ファウーゼ゠ルーサペックどす」
「フォフォです。貴女には期待しています。これから十年よろしくお願いしますね」
十年。それが【独立命撰特務】の基本の任期だ。もちろん、実力が見合わないと判断された場合はそれより早く馘にされることもあれば、怪我や病気などで早期の引退もあり得るし、逆にもっと長く務めることもある。だが、無事に十年勤め上げれば退職金も年金も十全に出る。そのため、十年が一つの区切りとして見られている。
フォフォの圧力に負けぬよう、胸を張って受け答えするファウーゼを眺めつつ、トドイがルヴィケスに訊ねた。
「そういえば、結局、あと一つってなんだったんすか? ファウーゼさんの特筆すべき才能ってのは」
まだ気づいていなかったのか、とルヴィケスはトドイに蔑んだ目を向けつつ答える。
「見ればわかるでしょう。これだけの群衆がいて、余さずあの子に視線が集まっている。あの子には人の視線を惹きつける才能があるんです。それは、星霽祭の壇上に上がれたということからも明白」
「あり得ないほど可愛いってことっすか?」
ルヴィケスのトドイを見る目が汚物を見る目になる。
「全身を鎧で覆い隠していた時から同じだったでしょう。あの子の所作、一挙手一投足が全て他人の意識を惹きつけて仕方がない。そういう天性の才能です。これが戦闘の場でどう役立つか、想像してみてください。難しいなら、自分に置き換えてもいいですから」
「ファウーゼさんと戦う……」
「正確には、あの子が敵方にいる集団と戦う、です」
それでもなおぴんと来ていない様子のトドイに対し、ルヴィケスは人差し指を一本立てた。
「今からあなたを刺します。避けてください」
「えっ? あっ」
ルヴィケスはゆっくりと指をトドイの首元に近づける。しかし、トドイの視線はファウーゼに釘付けになっており、目を離すことができないようだ。トドイは焦りつつルヴィケスから一歩距離を取り、歯を食いしばってやっとルヴィケスの方を見た。
そして、ルヴィケスの腕を抑えつつ、押しとどめる。しかし、視線は何度もファウーゼとルヴィケスの間を彷徨う。それは誘惑を頑強な意思で押さえつけようとしているが、何度も負けかけている様がありありと現れていた。
トドイは冷や汗を掻きつつ呟いた。
「こういうことっすか。これは、やばいっすね」
トドイは想像して、背筋に悪寒が走った。ファウーゼ以外の敵と向かい合って剣戟をしてる最中、視界に入るファウーゼに意識を割かなければならず、下手すれば視線すら奪われる。余裕のないときにそんなことをされたら、迎えるのは確実な死だ。だからこそ、最初に相手にしないといけない。ファウーゼを真っ先に対処するしかない。
それはまさしく、足止めが本懐の追跡者に求められている能力だ。
「一挙手一投足が魅了系闘技。それもあなたでも耐えるのが大変な強度です」
「同性でもこれとか、男は死ぬんじゃないっすか? あれ、でもこれって味方も大変なような」
「魅了する対象ぐらい制御できるに決まってるでしょう。じゃないと私が言うまで気にも留めてなかったあなたたちが本当に節穴だったということになりますが?」
「確かに! いやー! 私たちは節穴ではなかった! ファウーゼさんが凄かっただけ!」
朗らかに笑うトドイ。ルヴィケスはもう何も言わなかった。
そうして眺めていると、フォフォとファウーゼの挨拶が終わったようだった。そして、なぜかファウーゼがルヴィケスの方に近寄ってきた。
少し嫌な予感がしつつ、とりあえず無難そうな笑顔を張り付けるルヴィケス。そんなルヴィケスに対してファウーゼは深々と頭を下げる。
「ルヴィケスはん、うちを推してもろて、心から感謝いたします」
「あなたの才能と努力を考えれば当然のこと。ただの仕事です。感謝は要りません」
「せやけど、うちが腐らずに頑張れたのはルヴィケスはんのお陰どす。それだけは、どうしても伝えたかったんどす」
ルヴィケスはそれを否定することはしなかった。大したことをしたつもりはなかったが、ルヴィケスの助言か何かが役に立ったのなら、それは悪いことではない。
「うち、ルヴィケスはんにもろたこの剣と一緒に、頑張ろうと思てます。どうか信じて、ずっと見てておくれやす」
一瞬だけ、ルヴィケスの表情が凍り付く。ファウーゼの挨拶に感涙しているトドイは気づかなかったが、なんとなく不穏な空気を感じていたフォフォは気づく程度の、僅かな動揺。
連れだって宿に向かうトドイとファウーゼを見送る背後で、フォフォが笑顔のままルヴィケスの肩を掴む。
「二年前、押収品が紛失した事件がありましたよね」
「ありましたねぇ」
「なくなったのは、国宝級の価値がある直剣、でしたね」
「残念なことです」
「目撃情報から、あなたが容疑者として強く疑われてましたね。私は必死に庇いました。私の部下がそんなことをするはずがないと」
「その件では、隊長の暖かさを感じました」
フォフォはルヴィケスの鎖骨を軋ませながら凄んだ。
「犯人は、まだ見つかってませんね?」
「ははは、ご安心を、隊長」
ルヴィケスは朗らかに笑った。
「あれの価値の大部分は鞘と柄の宝石です。それらは砕いて捨てました。証拠はもう――」
フォフォは渾身の右拳をルヴィケスの顎に叩き込んだ。




