8:Win Win な関係、のはずなんだ……
おはようございますー。夜に投稿しようとしたら寝落ちしちゃって。メールもなかなか届かなくてこんな時間になってしまいました。
「「……え?」」
キョトンとした顔で私を見る二人はどこか間抜けで思わず吹き出してしまった。
私たちの間をまだ少し冷たい風が通っていく。受け入れる覚悟ができたからだろうか、私は初めて先輩としっかり目を合わせることができた。
自分の心が凪いでいるのが分かる気がする。
「え、本当に良いの?」
信じられないような目で見てくる先輩は本気で不思議がっている。わたしだって別に誰かを虐げて悦ぶような人間では無いですよって声を大にして言いたい。
「良いですよ。でも、条件付きです」
「条件って?」
固まったままだった龍弥がようやく現実に帰ってきた。
どうしようかなー条件。って言ってももう決まってるんだけどね。やっぱりこれだけは守って欲しいっていうのがいくつかはあるから。
「元々言っていたでしょ? ご両親の許可を取ってって。あと3つあって、もうあんまり意味が無いかもしれないけど学校では私と話さないようにして全くの無関係にするってこと。家にある入らないでって言われた場所には絶対に入らないこと。家賃とかはいらないから家事を分担すること。それ以外はまた今度教えるからとりあえずはこれを守って欲しいなって。あ、挨拶に行くときは龍弥を連れていってください」
うーん、今伝えるようなことはこれぐらいだよなぁ。他なんかあったっけ? というかストーカーが家に来たりとかは無いよね? 来たらどうしよう!
誰か助けてになるよね。
「り、莉沙、何で急に受け入れる気になったの……?」
そんなに不思議そうな顔をされると私もちょっと心が痛い。でも、急に受け入れるとかなに言ってるんだっていうことが事実だもんねぇ。
「まあなんというか、あんまり家に人を入れたくなかったけど拒否して相手が酷い目に合うっていうのはずっと心に残って後悔するなって、思ったからだよ。だからあんまり気にしないで」
うん、ある意味私利私欲の為だな。ここまで聞いて見捨てるとかさすがに出来ないよ。
莉沙の心情など知らずに賢正は思ったままのことを口にする。それが莉沙を怒らせるのだが。
「莉沙がそんな風に考えていたなんて知らなかった。自分の意見を是が非でも貫き通す人だとは思ってなかったけどそれでも許可が出るなんて思っても見なかった。助けてもらってあれだけどお人好し過ぎないか?」
「酷くないですかそれ! 私だって相手のことはしっかり考えます! っていうかお人好し過ぎるってなんですかっ!
これでも結構自分優先で利益大好きですよっ!!」
肩で息をしながら吠えかかると疲れた。何でそんなイメージができてるのさっ。私だって我慢しますよ必要ならっ。あ、なんか自分で自分を貶してる感じ? え、ちょっとへこむ。
あーもう。
「……やっぱり泊めるの止めようかな」
ボソッと呟いたその言葉はどうやら聞こえていたらしい。数秒もたたずに謝罪の言葉が返ってきた。なかなか面白かった。
「そ、そろそろお昼食べないと休み時間終わっちゃうよっ! 莉沙早く食べよう!」
「何だ龍弥、俺には言わないのか?」
「いや、別にそういう訳じゃ無いですよ! ……ただまあ、莉沙と一緒にお弁当食べるなんて無かったから、つい」
龍弥とお弁当? 食べたことあると思うんだけど……。学校ではってことかな? でも何でそんなこと言うんだろう、いつも家で一緒に食べてるのに。
私が考え込んでいると、先輩も揃って考え込んでいた。顎に手を当てて微妙に下を向いているところはとても絵になると思う。惚れはしないけど。
「莉沙、お昼ぐらいは一緒に食べない? 龍弥もこう言っているわけだし」
「え……。それはさすがに困るというか」
一緒にご飯とか無理! だって食べるとしたらたぶんここでしょ? そうしたら他のトップ6とかも来るよね? 今日たまたま来ていないだけできっと会うよね!?
「んー、じゃあさこれの代わりってことでどう?」
先輩が見せてきたのは、私のスマホに貼ってあった写真と書かれた付箋だった。因みにお弁当箱包みに入れっぱなしにしておいた私のスマホはすでに龍弥の手に渡っていた。付箋多いっ!
って、それを言いたいのは私だよ、私が一番に思ったことだよぅ!
二人がそれぞれを持っていることに思わず箸を落とすほど狼狽する。箸は地面に着く前に先輩が掴んでくれた。
「な、んでそれ持ってるんですか? ていうか気づいてたんですかっ!?」
「いや、気づいたのはさっきたまたま。だけどお弁当を見ていた時の表情で大体察したよ」
私、そんなに変な顔してましたっ!? いやしてないはずっ! 今ならまだ間に合……わないね、はい。
「というか私ですら忘れかけていたそれを交渉に持ち出しますか。でも写真と食事って釣り合わないと思うんですよ」
「莉沙。俺からも頼む! 写真撮って良いからご飯一緒に食べよう! お願いだからっ!」
なぜそこまでご飯に執着するのか……。話が微妙に分からない。でも写真撮って行かないと林檎には泣かれるだろうなぁ。というかファンの子達が怖いっ! 龍弥と六会先輩とご飯を食べた私を襲う気がする。林檎が止めてくれるかな? いや無理だ。泣きっぱなしで人の話を聞かないと思う。どうする私! 今ここで断ればとっても混沌で面倒なことになるはずだ、どうしようかほんと!
「………………………………週に一回だけなら」
「マジかっ! ありがとう莉沙ちゃん大好きだっ!!」
どうやら絞り出した私の声は伝わって居たようだ。これで伝わってなかったら恥ずかしい。写真、写真の為なんだっ! 我慢しろよ私! こういうときはやけ食いだ!
「って、先輩お箸返してください」
「ああ、忘れてた。ごめんね」
本当に忘れてたのかな? すっごく気になるんだけど。先輩が箸を乗せた掌を私の方に差し出してくる。そして私が取ろうとすると邪魔が入った。そう、邪魔が入ったのだ。先程まで上機嫌だった龍弥の手が。
滅茶苦茶不機嫌になったね、なんで? なんかこめかみがピクピク動いてるけど大丈夫? 怖いんだけどな、っていうか左手に力を入れるのはやめろ! 私のスマホが割れるっ。壊れるからやめてください龍弥!!
「はい、スマホとお箸。もう落としたらダメだよ?」
龍弥が先輩の掌からお箸を取ってスマホと一緒に私の方へ差し出してくる。いや、押し付けるの方が正しいかも。
あ、先輩から取ったことは無かったことにするのね。それが良いとお姉ちゃんも思うさ。
というかさも龍弥が拾ったって感じで良いのかな? 心配してくれるのは嬉しいけど。
ちらっと先輩の方を見ると肩を竦めてさすが番犬とか言ってるけど番犬って何?
でも龍弥の顔が怖いので無視します。だって怖いんだもん、詳しくはまたそのうちに聞く。
「「「ご馳走さまでした」」」
無事にチャイムが鳴る前に食べ終わることが出来ました。写真も撮れてほくほくです。早速林檎に送りましょうか。ちゃんと合法的な写真ですよ? 撮った後に確認してもらって許可を取ったんですから。えへん、仕事が速いでしょ。
龍弥たちと離れて先に教室に戻っている私は今廊下にいます。私のクラスはもう少し先だけれど写真を送ったらとんでもない叫び声が聞こえた。林檎は無断で誰かに渡したりはしない子だから大丈夫だ。……一応釘だけは指しておこう。
廊下で立ち止まり、スマホを弄っている莉沙のそばを一人の男性がすれ違った。明るい金髪を細いゴムで留める背の高い男子生徒だ。制服は着崩しており、これから授業が始まるというのに教室がある方向とは逆へ進む。その足はまだ龍弥と賢正が残っている屋上へと向いていた。
すれ違うとき、軽く視線を落とされたことに莉沙は気づいていない。これがこれから始まる波乱の幕開けだというのに。
頑張ってフラグを立てて見たのですがどうでしょう? 最後の男子生徒とか気になりません? 一応この辺りまでがプロローグというか序章というかなのでそろそろ章とかに分けていきたいなって思います。
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