12:夕日に向かって溜め息を
久しぶりの投稿です! これからもよろしくお願いいたします!!
「おい、龍弥お前どうしたんだよ? 今日変だぞ?」
同じようなことを今日は何度も言われた。柱に頭をぶつけるわ、先輩とすれ違ったときに挨拶をしないわ、ドアを開けずに外に出ようとするわで散々だ。
原因は分かってる。莉沙ちゃんと賢正さんのことだ。昼御飯を食べたとき、俺は莉沙が賢正さんをすまわせることを許可してくれたことに嬉しさ半分、悔しさ半分だった。
だってそうだろ? 先輩の悩みがかいけつされたことは嬉しいけど、今まで俺と莉沙しか居なかった家にこれからは先輩が居るんだぞ? そんなの嫌に決まってる。
「龍弥~。……聞いてねえなこれ」
莉沙は自覚が無いだけでかなりってかすっごく可愛いくて、告白しようとする奴なんて後を絶たない。そんな莉沙を他のやつのとこに置いとくなんて!
それに。
「……悩みがあるみたいだしな」
「悩み? ま、いいや。じゃな龍弥」
「待て、話を聞け」
そうだ、俺が分からないならこいつに聞いてみれば良いんだ。なんたって自称恋愛のエキスパートだしな。
そそくさと帰ろうとする自称恋愛のエキスパートの首を引っ掴み、先輩方に挨拶をするのも程々に部室を出る。
生暖かい風が肌を撫でた。
◇◇◇◇◇◇
オレンジと青が混ざった処はピンクっぽい靄になるのだな、と俺は不意に思った。これはあの二人が付き合うことになるという暗示なのか。
「はぁ……」
「とっとと話し始めろよ」
急かされつつ話したのは今日のこと。昨日までのことは既にこいつに愚痴ってある。
「で、喜ぶべきなのか哀しむべきなのかでモヤモヤしていると」
「そうだよ、なんか嫌なんだよ。嗚呼どうしてこうなった!?」
「お前が許可したからだな」
「簡潔で素晴らしい答えだな! そこまでして俺の心に傷を負わせたいかよ……」
「いや、別に?」
「だろうな!」
そろそろ帰るぞ、と言われて今度は俺が引きずられていく。ただ引っ張られるがままに校門へと近づいていく。
「スライムかお前は! いつまでも地面に張り付いてんじゃねぇよ!」
何かが吠えた気もするがそんなの知るか。嗚呼、本当に何してんだよ俺は……。
「……あーあ、早く帰らなきゃ食べられてるかもしれねぇな。龍弥の大好きな莉沙ちゃんは」
莉沙ちゃんが食べられる……? 莉沙ちゃんは食べ物じゃないし。ていうか食べさせないし! 触らせもしないし! 部屋になんて入れさせないし! もし、もしそんなことになってるのなら――!
「先輩を殺る」
俺が莉沙ちゃんを守らなきゃ。
「いますぐ帰るぞ」
「アイアイサー」
西日を浴びながら、ようやく辿り着いた校門で俺はそう宣言した、のだが。
「あれ、龍弥」
大きなスポーツバッグを二つ肩からかけているのは今話していた賢正さんだ。
そう、張本人が目の前に来た。
「今から帰りか?」
「は、はい。そういう先輩は?」
「荷物、家に忘れたから」
確かに着替えとか歯ブラシないとダメだよな。
「龍弥ー。俺、先帰るわ」
軽く肩を叩きながら言われた。その顔は少しひきつっていて、賢正さんと並ぶのをお断りしたい気分なんだなと察した。
「おう、じゃあな」
そしてゆっくりと歩き始めた。
「龍弥、お前の家って二人暮らしなのか?」
今更何を。俺と莉沙ちゃんは二人暮らしだ。
「急にどうしたんです?」
「いや、なんとなく?」
「疑問符が付くのはなんでですか?」
「なんとなく」
今度は断定系か。そこは普通の文で返してほしかった。
今莉沙ちゃんどうしてるかな。あーあ、もう。早く会いたい。
ついつい空を見上げてしまう。別にそこにいるわけでもないのに。
「……。そういえば先輩」
「なにかな?」
「この前、莉沙に何を……? 事と次第によっては追い出しますよ?」
そう、この前。莉沙ちゃんを家に連れ込んだときのこと。何があったのか俺はまだ聞いてない。
「番犬もしつこいと嫌われるぞ」
は? だから番犬ってなんなんだよっ! その説明をしろよっ!
「……色々あって家の掃除したんだよ」
は? いや、なんで掃除? 意味分からないんだけど。
「色々あったんだよ」
「……もういいです」
莉沙ちゃんはいったい何してるんだか。まあ、莉沙ちゃんらしいといえばらしいけど。
そのまましばらく無言で帰った。俺も賢正さんも基本無言だから沈黙が辛いわけじゃない。
ただ、嫌な予感はするけど。これから色々と変わっていくような、戻れないような、そんな感じがする。
あの事、莉沙ちゃんは知ってるんだろうか。
俺の、俺たちの秘密を。
ばれてないと良いな。莉沙ちゃんは巻き込みたくないから。




