アオイ
アオイはベッドに寝転んでいた。彼女はじっと天上を見ていた。
(私は死ぬんだなあ…) 彼女はそんな事を考えていた。一週間後にはもう自分の生命は消えている。そう考えると、今まで当たり前だったこの部屋にも、何か今までと違う不思議な感慨が湧いてくるのだった。
アオイが死ぬ理由は単純なものだった。それはあらゆる意味でこの世界にうんざりしたからだ。彼女の両親と兄は彼女にとってあらゆる意味で他人だった。父親は不動産を営んで、相応の地位と金銭を得ていて、母親はそんな父の価値観に自分を合致させている人だった。兄は父親に似ていて、学校では密かに悪さなどもしていたが、人前では良い顔をできる二面性を持ち合わせていた。要するに、彼らの中には繊細な感受性なんてものはなかったので、アオイはとても孤独だった。
アオイは少女漫画が好きだったし、アニメや小説も好きだった。そこに孤独な一つの世界を見る事は彼女にとってささやかな歓びだったけれど、両親も兄もそんな小さな歓びを認めようとはしなかった。両親や兄はアオイの学業成績を気にしていた。「そんなんじゃ、将来困るぞ」 それが父の口癖だった。アオイは、心ひそかに(私には将来ではなくて、今が大切なんだ)と思っていた。でも気弱な彼女はそんな事を口に出せなかった。
彼女は手のひらを上にあげて、光に透かして自分の手を見てみた。小さな手だ。男子の手に比べれば、とっても小さくて弱々しい。
私はこれまで人を愛した事もないし、誰からも愛される事もなく死ぬんだわ。
アオイはそんな事を考えた。そう考える事は彼女にとってーーー不思議に一つの慰めだった。自分が宇宙の中に一人でポツンと浮かんでいるという感覚。そんな感覚が彼女にとっての原点だった。
今、私はあの宇宙に帰るのだ。それが死の意味なんだ。
アオイはそんな事を考えた。




