【10】 『住所』も『本籍』も一緒でしょう?
丹沢「おっ、これだ」
丹沢は『方書リスト』から
『美浦市美女来9-8-7 ハッピーハイツ○○○号室』
というのを見つけた。
丹沢はリストのそのページを
開いたまま窓口へと戻った。
丹沢「速水さま~」
待合席で待っている爽香を呼んだ。
爽香は窓口へと向かった。
丹沢「お客様の住む共同住宅の名称がわかりました。名称は『ハッピーハイツ』ですね」
丹沢は『方書リスト』に、
記載されたその名称を
指さして言った。
爽香「そう言えば、そうだったような」
丹沢「何号室かわかりますか?」
爽香「203号室です」
丹沢「良かった、それは覚えていたんですね」
爽香「うるさいわね! あなた、あたしを馬鹿にしてるんでしょ」
丹沢「とんでもない、自分としては褒めたつもりで言ったのですけれど」
爽香「感覚の相違ね、まぁいいわ。いいからあなた仕事して」
丹沢「次に『いままでの住所』欄に、前に住んでいた住所を書いていただけますか?」
爽香は、『いままでの住所』欄に
『福島県東白川郡棚加羅町大字関口字一本松9786番地』
と書いた。
丹沢「『東白川郡』の『かわ』の字は、縦3本の『川』なんですね」
爽香「ええそうよ。『白河市』のさんずいの『河』と、よく間違える人がいるけれどね」
丹沢はメモ用紙に
「春日部」と「粕壁」の
字を書きながら、
丹沢「参考までにですが、埼玉県の中でも『春日部』という地名と『粕壁』の2種類の地名が存在していますので、私どもも細心の注意を払っています」
爽香「そんなところに細心の注意を払わなくて良いから、他のことに注意を払ってよ!」
丹沢「ははははは」
爽香「なにその笑いは? 知識を見せびらかした自慢の笑い?」
丹沢「ははははは。次に『本籍』欄を記入してください」
爽香「『本籍』ってなんですか?」
丹沢「そう来ましたか」
丹沢の口元が少し緩んだ。
爽香(なに、そのにやけ。
また自慢するのかな?
こいつ絶対、市民を馬鹿にしている)
爽香「『住所』も『本籍』も一緒でしょう?」
丹沢「そう言う場合もありますし、違う場合もあります。むしろ違う場合の方が多いかも知れません」
爽香「そうなの?」
丹沢「そうなんです!!」
爽香「何よ、偉そうに! そもそも『本籍』って何に使うの? 住所だけでいいじゃないですか? あたし、今まで生きてきて、誰かに本籍を聞かれたこともないし、本籍を使ったこともないわ」
丹沢「いい質問ですね」
また口元が緩んだ。
爽香「あなた、自慢したいんでしょ、自分の知識を見せびらかしたいんでしょ。いいわよ、聞いてあげるから言ってごらんなさい」
爽香が丹沢を手玉に取るように言った。
丹沢「では、」
爽香「では?」
爽香(『では』と来たか!
この自慢しぃ、が!)




