表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステラティア ~魔女狩りの剣士とエルフの神官と~  作者: 八月森


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/18

11話 冒険者の心構え

「追い出した僕らを、恨んでいないのか?」



 ヴィルヘルムが投げてきたその問いかけに、あたしはわずかな間、口を閉ざす。けれど……



「別に、恨んだりとかはないよ。そりゃ、ちょっと、いや、かなり腹は立ったけどさ」



 ゴルドーに治癒術をかけながら、あたしは首だけをヴィルヘルムに向けた。



「でも、だからって助けない理由にはならないよ。能力は低くても、あたしだってこれでも神官なんだから」


「……」



 あたしの言葉に何か思うところがあったのか、彼は一度目を閉じ沈黙する。そうして再び開いた目の光は、あたしが知るそれより少しだけ柔らかいものになった気がする。



「……そうだな。君の心持ちは、間違いなく神官だ。エルフに対する偏見も、実力を見誤っていたことも認める。もっと総合的に見て判断すべきだったと、反省しているよ」



 だが――と、彼は前置く。



「だがそれでも、やはり僕のパーティーに君の居場所はない。僕には僕の理想がある。その水準に達していない者を、僕は仲間に迎えることはできない」



 わざわざそんなことを言うのは、正直というか頑固というか……種類は違うかもだけど、あたしがどうしても旅がしたかったように、彼にも譲れない強い想いがあるってことなんだろう。



「分かってるよ。あたしだって、今さらそっちに入ろうとか思ってないし。それに、今はあたしにも旅の仲間ができたから」



 そこで、ステラがこちらに近づいてくるのが見えた。



「ティアさん、こちらの作業は終わりました。そちらの方の治療は……?」


「とりあえずあたしにできることはやったし、傷も塞がったと思う。後は……」


「そうですね。馬車に乗せる許可は貰えましたので、高位の神官がいる場所まで運んでもらいましょう」



 あたしが頷くのを確かめた彼女は、次にヴィルヘルムに顔を向ける。



「貴方は先ほど、『魔族の女』がどうこうと言っていましたね。もしやそれは、金色の髪で赤いドレスを纏い、黄金の杯を持った女性ではありませんでしたか?」



 ステラの言葉に、あたしは反射的に彼女のほうを見る。それってもしかして――



「……ああ、その通りだ。……君は、知っているのか? あの女が、何者なのか」


「ええ。あれは、魔女です。私たちは彼女を追って旅をしているんです。――今度こそ、仕留めるために」


「魔女……おとぎ話の? いや、そうか……確かに、魔族にしては角がないのを疑問に思っていたんだ。なんらかの方法で隠しているのかとも思ったが、なるほど、魔女か……そして、あの傷を負わせたのが君たちだったということなんだな?」


「はい、ですから――」


「待ってよ!」



 そこであたしは声を上げ、彼女らの会話を遮った。だって、それじゃ……



「……つまり、あたしのせいで……ステラはすぐに追おうとしてたのに、あたしがステラを引き止めたせいで、ヴィルヘルムたちは襲われたってこと……?」



 ステラの身を案じるなら、夜に出歩くのを止めたのは正解だったと今でも思っている。だけど……あたしが止めていなかったら、ステラがあのまま現場に駆けつけていれば、ヴィルヘルムたちは襲われていなかった、ってことに――



「いえ、それはティアさんのせいじゃありません」


「いや、それは君のせいじゃない」



 ステラとヴィルヘルムの台詞が重なる。あたしはそれにキョトンとしていた。



「昨夜ティアさんに言った通り、あのまま夜闇の中で捜索を強行しても、あの魔女を見つけ出せる可能性は低かったでしょう。いえ、見つけ出せたとしても、ティアさんの言う通り返り討ちに遭っていたかもしれません。それに、私たち冒険者は――」


「冒険者は、自分の命は自分で護るのが鉄則だ。むしろ君たちがあれだけ弱らせた相手に容易く不意を突かれ、好き放題やられたのは、僕らの落ち度だよ。まったくもって不甲斐ない。君のせいでなどあるものか」


「……」



 二人の言葉は、あたしを慰めるためのものだろうか。それとも、本心からそう思って……それが、冒険者としての常識、心構えってことなのかな。……あたしも、そうなれるだろうか。一人前の冒険者に。



「話が逸れましたが、貴方は、あの魔女がどこに行ったのか、何かしらの情報をお持ちではありませんか?」


「すまない。僕は途中で意識を失っていたからね。伝えられるような情報は持っていないよ」


「そうですか……いえ、ありがとうございます。南に向かったのは分かっていますので、この先は自分たちで行方を探ってみます。――ティアさん。私たちは彼らを馬車に乗せておきますから、ティアさんは魔物の死体を浄化してきてもらえますか?」


「あ、うん。分かった」



 そうして立ち上がり、ステラたちが積み上げた死体の山に向かおうとしたところで……



「ティア」



 ヴィルヘルムが、あたしに呼びかけてきた。



「……君を追い出した僕がこんなことを頼むのは、厚かましいと自覚している。だから、できればで構わない。……クレアとセシリアを見つけたら、助けてやってくれないか。もうすでに殺されているのかもしれないが……もし、生きていたなら――」


「――助けるよ」



 あたしは即座に断言した。



「さっきも言ったでしょ? そんなのは助けない理由にはならないって。あたしは、神官なんだから」



 そして、あの人の背中を追っているんだから。困っている人を助けない、なんて選択肢はないんだ。



「……そうか。ああ、そうだな。任せたよ」


「うん。任された」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ