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企業戦士戦線(コーポレート・ウォーフェア)  作者: 凡夫 成


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企業戦士 外伝 業火 ―炎城レオ― 第7話 帝央の炎

今回は帝央最高火力、炎城レオの物語。

本編では「最高火力」と言われながら、なかなか全力を出せない炎城ですが、彼が弱いわけではありません。


帝央本社。


大会議室。


炎城レオは、仮面をつけたまま椅子に座っていた。


正面には時任三郎。


その横には安間司。


そして会議室には、帝央の若い企業戦士たちが集められていた。


水瀬アオイ。


静かな目をした、水を操る男。


土岐ルナ。


腕を組み、不機嫌そうに座る土の能力者。


風見カエデ。


長い髪を揺らし、窓際で風を遊ばせている。


そして。


雷堂ジン。


椅子に深く腰掛け、天井を見ていた。


机の上には作戦資料。


だが、雷堂の資料だけは開かれてすらいない。


炎城は雷堂を見る。


「読まないんですか」


雷堂。


「あ?」


「読む前に動いた方が早ぇだろ」


安間。


「読んでから動いてください」


雷堂。


「要点だけ言えよ」


「敵がいる」


「行く」


「殴る」


「終わり」


土岐。


「雑すぎ」


風見。


「でも雷っぽいね」


雷堂。


「褒めてんのか?」


風見。


「たぶん」


水瀬。


「たぶんでは困る」


炎城。


「帝央、濃いですね」


安間。


「あなたも含めてです」


三郎が資料を開く。


「今日集めた理由は一つだ」


「帝央は、部署ごとの単独戦闘から、複数部門による制圧戦へ移行する」


水瀬。


「連携戦ですか」


土岐。


「面倒くさそう」


風見。


「風向き次第だね」


雷堂。


「結局、ぶつかるんだろ?」


「なら先に行く」


安間。


「先に行かないでください」


雷堂。


「じゃあ早く説明しろよ」


炎城。


「せっかちですね」


雷堂。


「遅いよりマシだ」


三郎。


「今回の相手は、南央重工連合」


「巨大な資材生産拠点を持ち、帝央の再開発計画を妨害している」


資料に映るのは、広大な工業地帯。


鉄骨。


倉庫。


輸送路。


防衛設備。


敵企業戦士の数は多い。


正面から攻めれば、被害は大きい。


三郎。


「目的は敵拠点の制圧」


「資材生産ラインの確保」


「社員の救出」


「施設の破壊は最小限」


炎城。


「燃やせないやつですね」


三郎。


「燃やす場所を選べ」


炎城は仮面に触れる。


「了解」


作戦当日。


南央重工連合。


工業地帯。


夜。


敵拠点は巨大な要塞のようだった。


高い塀。


複数の監視塔。


自動防衛装置。


能力者による防壁。


内部には、拘束された帝央側の協力会社員もいる。


全焼はできない。


だが、正面突破しなければ仲間を救えない。


安間が通信で言う。


「全員、配置につきました」


「炎城さん」


「先陣をお願いします」


炎城。


「やっと分かりやすい役目ですね」


水瀬。


「火が先に行くと、消火が大変なんだが」


炎城。


「水の出番があっていいだろ」


土岐。


「足場は私が作る。変なところ燃やさないでよ」


風見。


「煙は流してあげる」


雷堂。


「俺は中に突っ込む」


安間。


「突っ込む前に、敵の防衛装置を確認してください」


雷堂。


「壊せば止まるだろ」


安間。


「壊す場所を間違えると、爆発します」


雷堂。


「じゃあ間違えねぇよ」


炎城。


「根拠は?」


雷堂。


「勘」


水瀬。


「不安しかない」


風見。


「でも速いよ、雷堂は」


土岐。


「雑だけどね」


雷堂。


「聞こえてんぞ」


炎城は少しだけ笑う。


「好き勝手言うなぁ」


安間。


「全員、あなたが道を開く前提です」


炎城。


「責任重大ですね」


敵の監視塔が帝央勢を捉える。


警報。


赤い照明。


敵企業戦士たちが一斉に動き出す。


正面ゲート。


厚さ数十センチの特殊合金。


能力防壁付き。


通常なら破れない。


炎城は一人で前へ出た。


敵の声が響く。


「止まれ!」


「ここから先は南央重工の領域だ!」


炎城。


「悪いな」


「帝央が通る」


敵が砲撃を放つ。


炎城は歩く。


仮面の第一制限を外す。


カチリ。


炎が拳に集まる。


砲撃は近づく前に焼け落ちた。


敵が続けて攻撃する。


鉄の杭。


圧縮空気。


電撃。


炎城は止まらない。


仮面の第二制限を外す。


カチリ。


炎が白くなる。


拳。


正面ゲートへ叩き込む。


音が遅れて響いた。


ゲートの中心が焼き抜かれる。


赤く溶けた穴。


その穴が一気に広がる。


巨大な門が、内側へ崩れ落ちた。


炎城。


「道は開けた」


次の瞬間。


水瀬が動く。


水が地面を走り、熱を冷ます。


炎で赤くなった通路を、一瞬で人が通れる温度へ下げる。


土岐が足場を固める。


溶けた地面を土で覆い、進軍路を作る。


風見が煙を空へ逃がす。


視界が開く。


そして。


雷堂が消えた。


いや。


走った。


速すぎて、消えたように見えただけだった。


「邪魔だ」


一瞬で監視塔の真下。


跳ぶ。


蹴る。


監視カメラが火花を散らして落ちる。


「次」


雷堂は壁を蹴り、内部へ滑り込む。


防衛装置。


通信端末。


制御盤。


雷堂は細かく解析しない。


壊せば止まる場所を、感覚で見つける。


「ここだろ」


蹴る。


電撃。


端末が火花を散らして沈黙する。


安間の通信が入る。


「雷堂さん」


「もう少し丁寧に」


雷堂。


「止まったろ」


安間。


「止まりましたが」


雷堂。


「なら正解だ」


炎城。


「便利ですね、あいつら」


安間。


「仲間です」


炎城。


「慣れない言葉だ」


安間。


「慣れてください」


敵企業戦士たちが内部から現れる。


十人。


二十人。


さらに奥から増える。


炎城は前へ出ようとする。


水瀬が横に並ぶ。


「一人で行くな」


炎城。


「俺が先陣だろ」


土岐が反対側に立つ。


「先陣と単独行動は違う」


風見が背後から風を吹かせる。


「炎って、風がないと綺麗に燃えないよ」


通信から雷堂の声が響く。


「右!」


炎城。


「説明が雑ですね」


雷堂。


「右に敵がいる!」


「燃やせ!」


炎城。


「分かりやすい」


炎城が右前方を焼く。


敵の盾が溶ける。


水瀬が水で退路を塞ぐ。


土岐が地面を隆起させ、敵を分断する。


風見が炎の熱を横へ流し、味方へ届かせない。


雷堂が敵の背後へ回り、通信機を破壊する。


「後ろも終わり!」


安間。


「報告が短すぎます」


雷堂。


「終わったって言ってんだろ!」


炎城の火が、ただの破壊ではなくなる。


仲間の動きを作る火。


敵の選択肢を奪う火。


進路を照らす火。


炎城。


「なるほど」


「燃やした後に、誰かが通るのか」


水瀬。


「今さらか」


土岐。


「本当に火力だけで生きてきたのね」


炎城。


「褒め言葉ですね」


土岐。


「褒めてない」


戦場は帝央側へ傾いていく。


だが、敵の奥から巨大な企業戦士が現れた。


能力。


《鋼鉄巨人》


周囲の鉄を取り込み、巨大な装甲体になる。


高さ十メートル。


身体は工場の鉄骨と装甲板。


その胸部には、拘束された帝央協力会社員がいた。


人質。


水瀬が舌打ちする。


「面倒だな」


土岐。


「壊したら中の人も巻き込む」


風見。


「風で引き抜くには重すぎるね」


雷堂。


「じゃあ俺が行く」


安間。


「待ってください」


雷堂。


「待ってたら潰されんぞ」


次の瞬間。


雷堂は走っていた。


鋼鉄巨人の足元。


腕。


肩。


胸部。


一瞬で駆け上がる。


敵の装甲が動き、雷堂を叩き落とそうとする。


雷堂。


「遅ぇ!」


雷が走る。


固定具。


接続部。


ロック機構。


雷堂は全部を見ていない。


だが、どこを壊せば外れるかは分かる。


「ここ!」


蹴る。


電撃。


人質を固定していた金具が一つ外れる。


「ここも!」


さらに蹴る。


二つ目が外れる。


水瀬。


「無茶だな」


土岐。


「ほんと雑」


風見。


「でも間に合う」


炎城は巨人を見上げる。


燃やせば早い。


全力なら一撃で焼ける。


だが、人質がいる。


施設も巻き込む。


炎城は仮面に手をかける。


そして止める。


「安間さん」


安間。


「はい」


「十秒だけ、胸部の人質を守れますか」


安間。


「距離があります」


炎城。


「俺が道を作る」


水瀬が頷く。


「冷却は任せろ」


土岐。


「足場を上げる」


風見。


「炎の流れはこっちで曲げる」


雷堂の声が飛ぶ。


「固定具、あと一つ!」


「早く燃やせ!」


炎城は一歩前に出た。


「本当に説明が雑ですね」


雷堂。


「いいから来い!」


黒い仮面の奥。


炎が細くなる。


全力ではない。


極限まで絞った火。


巨人が拳を振り下ろす。


土岐が地面を盛り上げ、足場を作る。


炎城が跳ぶ。


風見の風が背を押す。


水瀬の水が周囲を冷やす。


雷堂が最後の固定具を蹴り壊す。


安間の防衛領域が、胸部の人質を包む。


炎城の拳が。


巨人の胸部を避け。


肩。


肘。


膝。


関節だけを焼き抜いた。


巨大な体が崩れる。


だが、人質には火が届かない。


水瀬の水が熱を奪う。


土岐の土が崩落を受け止める。


風見の風が煙を逃がす。


雷堂が人質を抱えて離脱する。


「取った!」


鋼鉄巨人が地面へ崩れた。


炎城はその上に立つ。


敵企業戦士たちが動きを止める。


帝央の連携。


その中心に、炎城の火があった。


安間。


「人質、無事です」


炎城。


「なら勝ちですね」


水瀬。


「まだ敵は残っている」


炎城。


「じゃあ、道を開けますよ」


炎城は拳を鳴らす。


「俺が燃やした道なら」


「安心して進めるんだろ」


風見が笑う。


「自分で言う?」


土岐。


「まあ、今回はそうね」


水瀬。


「不本意だが、認める」


雷堂。


「細けぇことは知らねぇけど」


「お前が燃やした道、走りやすかったぜ」


炎城。


「それは褒めてます?」


雷堂。


「褒めてるに決まってんだろ」


「面倒くせぇな」


安間。


「おおむね褒めています」


炎城。


「帝央の褒め方、分かりにくいですね」


炎が広がる。


ただし、敵だけへ。


帝央の仲間たちは、その炎の後ろを進む。


火は壁ではない。


道になった。


その夜。


南央重工連合の拠点は制圧された。


資材生産ライン。


確保。


協力会社員。


全員救出。


施設損害。


最小限。


敵企業戦士。


全員撃破。


帝央勝利。


翌日。


帝央本社。


社長室。


三郎は報告書を読んでいた。


「よくやった」


炎城。


「今回は燃やしすぎてませんよ」


三郎。


「ああ」


「よく燃やした」


炎城。


「どっちですか」


三郎。


「必要な場所を燃やした」


「それが結果につながった」


安間。


「今回、炎城さんが先陣でなければ突破は不可能でした」


水瀬。


「火力だけは認める」


土岐。


「火力だけね」


風見。


「でも、道は綺麗だったよ」


雷堂。


「俺は走りやすかった」


「それで十分だろ」


炎城。


「素直でいいですね」


雷堂。


「回りくどいの嫌いなんだよ」


三郎は一枚の辞令を机に置いた。


「炎城レオ」


「本日付で、部長に任命する」


炎城は辞令を見る。


「俺が部長ですか」


三郎。


「不満か」


炎城。


「指示する側に向いてるとは思えませんけど」


三郎。


「君に全体指揮は求めていない」


「君に求めるのは、突破口だ」


「帝央が進むべき場所に火を入れろ」


「後ろは仲間が続く」


炎城は黙る。


部長。


責任。


部下。


守るものが増える。


仮面がまた少し重くなる気がした。


だが。


悪くなかった。


炎城。


「分かりました」


「帝央が進む道なら」


「俺が燃やします」


三郎。


「それでいい」


その日から。


炎城レオは、帝央の部長となった。


最高火力。


業火。


炎帝。


呼び名は増えていく。


だが、炎城自身が気に入った呼び名は一つだけだった。


帝央の炎。


燃やしてはいけないものを守り。


燃やすべきものを焼き。


仲間が進む道を照らす火。


帝央の戦場には、いつも黒い仮面の男がいた。


彼が先頭に立てば、敵は焼ける。


道は開く。


雷が走り。


風が流れ。


水が冷やし。


土が支える。


そして帝央は前へ進む。


第8話 最後の火。

お読みいただきありがとうございます。

炎城レオは、帝央の中でもかなり派手な能力を持つ人物です。

ただ、会社を守る戦いでは、強すぎる火力は時に扱いづらい武器でもあります。

今回はその始まりとして、炎城が時任三郎と出会い、帝央へ入るまでを書きました。

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