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企業戦士戦線(コーポレート・ウォーフェア)  作者: 凡夫 成


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企業戦士 外伝 業火 ―炎城レオ― 第1話 火の男

今回は帝央最高火力、炎城レオの物語。

本編では「最高火力」と言われながら、なかなか全力を出せない炎城ですが、彼が弱いわけではありません。

企業戦争では、燃やしてはいけないものが多すぎる。

ならば、もし燃やしていい戦場だったらどうなるのか。

燃えすぎる男が、帝央という場所で自分の火の使い方を知っていく物語です。


炎城レオは、昔から火に好かれていた。


怒れば、熱が上がる。


笑えば、空気が揺れる。


拳を握れば、指先に火が灯る。


子どもの頃。


それは少し便利だった。


濡れた服を乾かせる。


寒い夜に暖を取れる。


焚き火に困らない。


だが。


成長するにつれて、その火は便利なものではなくなった。


喧嘩をすれば、相手だけでは済まない。


壁が焦げる。


床が燃える。


近くにいた人間が悲鳴を上げる。


炎城が勝つたびに、誰かが後始末をした。


「また炎城か」


「強いのは分かるが、危なすぎる」


「会社じゃ使えない」


どこへ行っても同じだった。


炎城は強かった。


だが、強すぎた。


ある日。


地方の小さな工場で、企業戦士同士の争いが起きた。


炎城は臨時で雇われた用心棒だった。


相手は三人。


能力者。


一人は鉄を操る。


一人は煙を操る。


一人は油を操る。


周囲には資材。


機械。


古い木材。


燃えるものばかり。


相手の企業戦士が笑う。


「火の能力者か」


「ここで暴れたら工場ごと燃えるぞ」


炎城は首を鳴らす。


「だったら」


「燃える前に終わらせる」


鉄の杭が飛ぶ。


炎城は拳を振るう。


火柱。


鉄が赤く溶ける。


煙が広がる。


油が床を走る。


一瞬で、工場全体が戦場になった。


炎城は強い。


圧倒的だった。


敵の攻撃を火で焼き払い。


鉄を溶かし。


煙を吹き飛ばし。


油を逆に燃料へ変えた。


三人の企業戦士は、あっという間に倒れた。


勝利。


だが。


工場の一角が燃えていた。


社員たちが慌てて消火に走る。


機械が焼ける。


資材が焦げる。


依頼主の社長が青ざめる。


「勝ったのはありがたい」


「だが、損害も大きい」


炎城は何も言わない。


いつものことだった。


戦えば勝つ。


けれど。


勝った後には、必ず燃え残りがある。


帰り道。


夜の高架下。


炎城は一人で缶コーヒーを飲んでいた。


指先に小さな火を灯し、缶を温める。


「便利だな」


声がした。


炎城が振り返る。


黒いスーツの男。


落ち着いた目。


無駄のない立ち姿。


男は名刺を差し出した。


帝央株式会社

時任三郎


炎城は名刺を見る。


「帝央?」


「大企業の社長が、焼け残りの火種に何の用ですか」


三郎は、工場の方角を見る。


「見ていた」


炎城。


「なら分かるでしょう」


「俺は使えない」


「勝っても壊す」


「倒しても燃やす」


「企業戦士には向いてない」


三郎は首を横に振る。


「君の火力は過剰だ」


炎城は笑う。


「不採用ですか」


三郎。


「逆だ」


「過剰だから欲しい」


炎城の表情が止まる。


三郎は続ける。


「弱い火なら、代わりはいくらでもいる」


「だが、戦場そのものを変える火は少ない」


「君は敵を倒すだけではない」


「敵の選択肢ごと燃やせる」


炎城。


「聞こえはいいですね」


「でも、周りも燃えますよ」


三郎。


「ああ」


「だから帝央で使う」


炎城。


「どう違うんです」


三郎。


「帝央には、君の火を必要な場所へ向ける人間がいる」


「君の火を止める人間もいる」


「君の火が燃やしていいものと、燃やしてはいけないものを判断する人間もいる」


炎城は小さく笑う。


「俺一人じゃ危険物扱いってことか」


三郎。


「そうだ」


「だが、危険物は管理すれば武器になる」


炎城。


「社長が言うことじゃないですね」


三郎。


「私は結果を見る」


「君は結果を変えられる」


沈黙。


高架の下を電車が走る。


炎城は名刺を見つめる。


帝央。


大企業。


自分とは縁のない場所だと思っていた。


炎城。


「俺の火で、帝央を燃やしたらどうします?」


三郎。


「その前に止める」


炎城。


「誰が」


三郎は少しだけ笑った。


「帝央には、君を止められる男もいる」


炎城の目が細くなる。


「面白いですね」


三郎。


「来るか」


炎城は缶コーヒーを飲み干した。


少し苦かった。


けれど。


悪くない苦さだった。


「いいですよ」


「ただし、俺は手加減が苦手です」


三郎。


「知っている」


「だから、最初に覚えろ」


炎城。


「何を」


三郎。


「全力を出すことが、常に勝利とは限らない」


炎城は笑った。


「難しいこと言いますね」


三郎。


「帝央では、それを仕事と呼ぶ」


その日。


炎城レオは、帝央へ入ることを決めた。


まだ仮面はない。


まだ炎帝とも呼ばれていない。


ただ。


燃えすぎる火を持て余した一人の男が。


初めて。


自分の火を置ける場所を見つけた。


帝央の最高火力。


その始まりは。


焼け跡の匂いが残る夜だった。


第2話 仮面。

お読みいただきありがとうございます。

炎城レオは、帝央の中でもかなり派手な能力を持つ人物です。

ただ、会社を守る戦いでは、強すぎる火力は時に扱いづらい武器でもあります。

今回はその始まりとして、炎城が時任三郎と出会い、帝央へ入るまでを書きました。

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