企業戦士 外伝 拳 ―岡田― 第4話 東都建材最強
いつも『企業戦士』をお読みいただき、ありがとうございます。
今回から新たな外伝、「拳 ―岡田―」をお届けします。
本編では豪快で頼れる営業部長として描かれている岡田ですが、その拳が何のために振るわれるようになったのか、そして東都建材(後の東都建設)に入社するまでの物語を描きます。
鬼の血を引く一人の男が、最強の武官として会社を背負うまでの軌跡。
本編では語られなかった岡田の過去を、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
東都建材。
岡田が入社して一年。
会社は少しずつ変わり始めていた。
以前なら取れなかった現場。
負け続けていた入札。
断られていた契約。
その全てが。
少しずつ東都建材へ戻ってくる。
業界では噂になっていた。
「東都建材には鬼がいる。」
「あの岡田には近付くな。」
「真正面から戦えば負ける。」
その噂は。
競合企業を動かした。
ある日。
営業部。
一本の電話が鳴る。
「社長。」
「四社連合です。」
鷹名。
「そうか。」
岡田。
「四社?」
営業社員。
「帝北建材。」
「関東資材。」
「大和工業。」
「山城開発。」
「四社が共同で案件を潰しに来ています。」
岡田。
笑う。
「やっと面白くなった。」
営業部は騒然となる。
「四社同時なんて……。」
「勝てるのか?」
鷹名だけは静かだった。
「岡田。」
「今回は会社を守る。」
岡田。
「いつも守ってる。」
鷹名。
「今回は。」
「社員全員で勝つ。」
翌日。
港の資材ヤード。
東都建材。
対。
四社連合。
敵企業戦士。
総勢十二名。
敵の隊長が笑う。
「鬼。」
「今日で東都建材は終わりだ。」
岡田。
首を鳴らす。
「言い終わったか?」
戦闘開始。
十二人が一斉に襲い掛かる。
岡田。
真正面から突っ込む。
拳。
一発。
二発。
三発。
敵が吹き飛ぶ。
しかし。
背後。
能力者。
《鉄鎖》
鋼鉄の鎖が岡田の両腕を拘束する。
敵。
「捕まえた!」
さらに。
炎。
風。
土。
三方向から同時攻撃。
営業社員。
「部長!」
その瞬間。
無線が鳴る。
鷹名。
「岡田。」
「動くな。」
岡田。
「……あ?」
「右を見るな。」
「三秒待て。」
敵は笑う。
「諦めたか!」
三。
二。
一。
鷹名。
「今だ。」
岡田。
鎖ごと腕を振り抜く。
能力者を引き寄せる。
その瞬間。
炎。
風。
土。
敵の攻撃が。
味方へ直撃した。
ドォォォォォン!!
敵陣が崩れる。
「しまった!」
岡田。
笑う。
「社長。」
「最高だ。」
拘束が解ける。
鬼の拳。
解放。
一人。
二人。
三人。
四人。
敵が次々と吹き飛ぶ。
十分後。
港には。
岡田だけが立っていた。
敵企業戦士。
全滅。
営業社員たちから歓声が上がる。
「勝った!」
「東都建材の勝ちだ!」
岡田。
肩で息をする。
「社長。」
「終わったぞ。」
無線。
鷹名。
「いや。」
「これからだ。」
翌日。
新聞。
『東都建材、四社連合を退け大型契約を獲得』
株価。
急上昇。
取引先。
増加。
営業部。
社員たちは喜び合う。
「やりました!」
「過去最高益です!」
岡田。
新聞を見ながら笑う。
「俺が勝ったからだな。」
その後ろで。
鷹名が静かに答える。
「違う。」
岡田。
「ん?」
鷹名。
「君は戦いに勝った。」
「会社が勝ったのは。」
「社員全員のおかげだ。」
営業。
経理。
総務。
現場。
資材。
全員が笑っている。
岡田。
その光景を見つめる。
地下格闘技では見たことのない景色だった。
一人で勝っても。
誰も笑わなかった。
会社が勝つと。
こんなにも多くの人が笑う。
岡田。
小さく笑う。
「悪くねぇな。」
鷹名。
窓の外を見つめる。
遠くには。
日本有数の建設会社の本社ビルが並んでいる。
「岡田。」
「東都建材はまだ小さい。」
「だが。」
「いつか。」
「建材だけでは届かない場所まで行く。」
岡田。
「また社長の夢か。」
鷹名。
静かに頷く。
「ああ。」
「会社の夢だ。」
岡田。
拳を握る。
「だったら。」
「その夢は俺が守る。」
鷹名。
少しだけ笑った。
「ああ。」
「頼んだ。」
その日から。
業界では。
こう囁かれるようになる。
「東都建材には鬼がいる。」
その噂は。
やがて業界全体を震わせる伝説の始まりだった。
第5話 会社の夢。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
中田翔子編が「文官」の物語なら、岡田編は「武官」の物語です。
拳しか信じなかった男が、鷹名との出会いを通して「仲間を守る強さ」を知っていきます。
また、この外伝では若き日の東都建材や、本編へと続く岡田の成長、そして時任明との出会いまでを描いていく予定です。
本編では見せなかった岡田の人間らしい一面も少しずつ描いていきますので、温かく見守っていただければ幸いです。




