企業戦士 外伝 拳 ―岡田―第3話 鬼と鷹
いつも『企業戦士』をお読みいただき、ありがとうございます。
今回から新たな外伝、「拳 ―岡田―」をお届けします。
本編では豪快で頼れる営業部長として描かれている岡田ですが、その拳が何のために振るわれるようになったのか、そして東都建材(後の東都建設)に入社するまでの物語を描きます。
鬼の血を引く一人の男が、最強の武官として会社を背負うまでの軌跡。
本編では語られなかった岡田の過去を、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
東都建材。
入社から一か月。
岡田は毎日のように企業戦士との戦いへ駆り出されていた。
勝つ。
また勝つ。
また勝つ。
敵企業では、
「東都建材に鬼がいる。」
そんな噂まで流れ始めていた。
営業部。
社員たちは岡田を見るだけで道を開ける。
「部長候補らしいぞ。」
「いや、まだ平社員だ。」
「でも社長が連れてきた男だ。」
岡田は興味がない。
仕事が終われば筋トレ。
終われば酒。
それだけだった。
そんなある日。
鷹名が岡田を呼び出した。
「午後から同行してもらう。」
岡田。
「戦いですか。」
鷹名。
「商談だ。」
岡田。
露骨に嫌そうな顔をする。
「一番苦手だ。」
鷹名は笑う。
「だから連れて行く。」
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取引先。
会議室。
岡田は退屈そうに座っていた。
営業担当が必死に説明する。
だが。
相手企業の表情は暗い。
商談はまとまらない。
岡田。
「殴れば早い。」
営業担当が青ざめる。
「部長!?」
鷹名。
静かに首を振る。
「違う。」
岡田。
「何が。」
鷹名。
相手企業を見る。
「社長。」
「御社は昨日。」
「主力工場で事故がありましたね。」
社長。
驚く。
「なぜそれを。」
鷹名。
「社員の皆さんが疲れています。」
「今契約を急ぐより。」
「まず現場を立て直してください。」
沈黙。
相手社長。
深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
商談は成立しなかった。
だが。
帰り道。
岡田は不満だった。
「負けたじゃねぇか。」
鷹名。
「違う。」
「勝った。」
岡田。
「契約取れてねぇ。」
鷹名。
「今日契約していたら。」
「一年後には取引が終わっていた。」
「今日見送ったから。」
「十年付き合える。」
岡田。
黙る。
鷹名。
「企業は。」
「一日勝てばいい世界じゃない。」
「十年勝ち続ける世界だ。」
その言葉は。
岡田の胸に深く刺さった。
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翌週。
敵企業から襲撃。
五人。
全員企業戦士。
「鬼を潰せ!」
岡田。
笑う。
「まとめて来い。」
突っ込もうとした瞬間。
鷹名の声。
「止まれ。」
岡田。
足を止める。
「右へ二歩。」
従う。
次の瞬間。
鉄骨が落下した。
さっきまで岡田が立っていた場所へ。
岡田。
「……。」
鷹名。
「前へ三歩。」
「左を見るな。」
「今だ。」
岡田。
何も考えず走る。
敵。
「しまっ……!」
拳。
ドォォォォォン!!
一人。
撃破。
「振り向くな。」
二人目。
撃破。
「しゃがめ。」
銃弾。
頭上を通過。
「立て。」
拳。
三人目。
撃破。
わずか三十秒。
五人全員。
倒れていた。
岡田。
息を整える。
「社長。」
「何で全部分かった。」
鷹名。
静かに答える。
「見えているからだ。」
「勝つ道が。」
岡田。
苦笑する。
「反則だな。」
鷹名。
「違う。」
「最適解だ。」
岡田。
空を見上げる。
地下では。
力だけが正義だった。
だが。
この男は。
拳を一度も振るわず勝った。
岡田。
笑う。
「社長。」
「俺。」
「頭使うの苦手ですよ。」
鷹名。
珍しく笑った。
「知っている。」
「だから君がいる。」
「私にできないことを。」
「君はできる。」
岡田。
「社長には勝てねぇな。」
鷹名。
首を横に振る。
「違う。」
「私一人では勝てない。」
「君も一人では勝てない。」
「だから。」
「会社なんだ。」
岡田は初めて。
地下格闘技では味わえなかった感覚を知る。
一人で勝つ強さではない。
仲間と勝つ強さ。
鬼は少しずつ。
企業の武官になっていく。
その拳は。
誰かを倒すためではなく。
誰かを守るための拳へと変わり始めていた。
第4話 東都建材最強。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
中田翔子編が「文官」の物語なら、岡田編は「武官」の物語です。
拳しか信じなかった男が、鷹名との出会いを通して「仲間を守る強さ」を知っていきます。
また、この外伝では若き日の東都建材や、本編へと続く岡田の成長、そして時任明との出会いまでを描いていく予定です。
本編では見せなかった岡田の人間らしい一面も少しずつ描いていきますので、温かく見守っていただければ幸いです。




