企業戦士 外伝 拳 ―岡田―第2話 企業戦士
いつも『企業戦士』をお読みいただき、ありがとうございます。
今回から新たな外伝、「拳 ―岡田―」をお届けします。
本編では豪快で頼れる営業部長として描かれている岡田ですが、その拳が何のために振るわれるようになったのか、そして東都建材(後の東都建設)に入社するまでの物語を描きます。
鬼の血を引く一人の男が、最強の武官として会社を背負うまでの軌跡。
本編では語られなかった岡田の過去を、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
地下格闘技から数日。
岡田はスーツ姿で東都建材本社の前に立っていた。
高層ビル。
地下とは真逆の世界。
岡田。
「帰るか……。」
その時。
後ろから声がする。
「来たな。」
鷹名だった。
岡田。
「暇だっただけだ。」
鷹名。
「それで十分だ。」
二人はエレベーターへ乗る。
最上階。
社長室。
窓の外には東京中のビルが見える。
鷹名。
「あれをどう思う。」
岡田。
「高ぇな。」
鷹名。
「全部会社だ。」
「そして。」
「全部敵になる可能性がある。」
岡田。
「意味が分からねぇ。」
鷹名は机から一冊の資料を取り出す。
《企業戦士計画》
岡田。
「本当にあるのか。」
鷹名。
「東都建材は小さい。」
「だから正面から戦えば負ける。」
「なら。」
「一人ひとりが強くなるしかない。」
岡田。
腕を組む。
「俺に営業やれって?」
鷹名。
少し笑う。
「向いていない。」
「現場も向いていない。」
岡田。
「じゃあ何だ。」
鷹名。
「守れ。」
「会社を。」
「社員を。」
「利益を。」
岡田。
「会社なんて興味ねぇ。」
鷹名。
「そうだろう。」
「だから見せよう。」
その時。
社長室の電話が鳴る。
鷹名。
受話器を取る。
数秒。
静かに頷く。
「始まったか。」
岡田。
「何が。」
鷹名。
「企業戦争だ。」
---
営業部。
一人の営業社員が倒れていた。
相手企業の企業戦士。
能力。
《重圧》。
身体が鉛のように重くなる。
営業社員。
立てない。
敵は笑う。
「東都建材も終わりだ。」
その瞬間。
岡田が歩いてくる。
「おい。」
敵。
「誰だ。」
岡田。
「知らねぇ。」
「でも。」
営業社員を抱き起こす。
「うちの社員に手ぇ出したんだろ。」
敵は能力を強める。
重力。
倍。
三倍。
普通なら立てない。
だが。
岡田は笑った。
「軽いな。」
一歩。
踏み込む。
敵。
「馬鹿な!」
拳。
ドォォォォォン!!
敵は壁まで吹き飛ぶ。
一撃。
決着。
営業社員。
「助かりました……。」
岡田。
「次は自分で立て。」
そう言って歩き出す。
社長室。
鷹名はモニターで一部始終を見ていた。
「予想通りだ。」
秘書。
「社長。」
「岡田さんは強すぎます。」
鷹名。
首を横に振る。
「違う。」
「弱い。」
秘書。
「え?」
鷹名。
「今の勝ち方では。」
「必ず死ぬ。」
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夕方。
屋上。
岡田。
缶コーヒーを飲む。
そこへ鷹名が来る。
「勝ったな。」
岡田。
「ああ。」
鷹名。
「負けた。」
岡田。
眉をひそめる。
「は?」
鷹名。
「社員を守った。」
「それは正しい。」
「だが。」
「君は相手しか見ていなかった。」
岡田。
黙る。
鷹名。
「戦場には。」
「敵だけじゃない。」
「社員。」
「現場。」
「取引先。」
「株主。」
「全てを見て初めて企業戦士だ。」
岡田。
少し笑う。
「難しいな。」
鷹名。
「だから会社がある。」
「一人では勝てない。」
その言葉は。
地下で生きてきた岡田には。
初めて聞く強さだった。
岡田。
空を見上げる。
「企業戦士……か。」
その拳はまだ。
「守るための拳」を知らない。
だが。
鬼は少しずつ。
企業の武官へと変わり始めていた。
第3話 鬼と鷹。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
中田翔子編が「文官」の物語なら、岡田編は「武官」の物語です。
拳しか信じなかった男が、鷹名との出会いを通して「仲間を守る強さ」を知っていきます。
また、この外伝では若き日の東都建材や、本編へと続く岡田の成長、そして時任明との出会いまでを描いていく予定です。
本編では見せなかった岡田の人間らしい一面も少しずつ描いていきますので、温かく見守っていただければ幸いです。




